"何番まで落ちたら離婚するの" 第3話
私はを抱えた。 どこで違えたのだろう。 翔太がまれた、私は勤めていた会社を辞め、この子の成を誰よりもくで見守ると誓った。 言葉を覚えるのがかった。絵本をでめくるのが好きだった。数字の規則性に気づいた、目を輝かせて笑っていた。 才能があるのだとった。この子の芽を摘んではいけない、私ので最の環境を与えてあげなければいけない。そうって、幼稚園の頃から幼児教に通わせ、学で学塾の選抜クラスに入れた。
翔太はいつだって、私の期待に応えてくれた。 「お母さん、テストで位だったよ」 満点の答案を誇らしげに掲げる息子の笑顔を見るのが、私ののすべてだった。 それなのに。 あの子は今夜、あの満点の答案を、自らので汚したのだ。 それも、わざと。
計の針は夜を回っていた。 私は洗面所でたいを顔に叩きつけ、階へと続く階段を静かにがった。
翔太の部のにつ。 ドアの隙からは漏れていない。ノブにをかけ、息を殺してゆっくりと押しけた。 規則な寝息が聞こえてくる。ベッドので丸くなっているさな背。子供用のシングルベッドが、いつのにかし狭に見えるほど、この子はきくなっていた。
机の脇に、放りされたリュックサックがあった。
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私は忍びでづき、リュックのから先ほどの答案用を抜き取った。 そのまま部をて、ドアを音をてずに閉める。
リビングのかりを落とし、ダイニングテーブルのスポットライトだけを点けた。 テーブルのに、枚の答案用を並べる。 先週の塾の週テスト。先々週の例テスト。そして学の算数の確認テスト。
改めて見返すと、その異常さは際っていた。 配点が点の漢字のき取り。 『豊かな自然』の「豊」の字。翔太がこんな基本な漢字をけないはずがない。の点で常用漢字のほとんどをマスターしていたのだ。 だが、その欄には図に横棒が本りない、恰好な文字がかれていた。 算数の図形問題。同な角形を見つけるだけの問題。正解は「アとエ」であるはずの所に、わざわざ「イとウ」といてある。
「……なんで?」 私は呟きながら、答案を裏返した。 計算用として使われた裏面には、計算のメモがびっしりとかれているはずだった。
裏を向けた瞬、私の呼吸が止まった。
そこには、計算式などかれていなかった。 い鉛の線で、極めてさく、幾にも数字がき連ねられていた。
『100 - 4(漢字1) = 96』 『96 - 6(計算問2) = 90』 『90 - 5(ことわざ) = 85』 『85 - 8(問2の1) = 77』
数字の横には、さな消しゴムの削りカスがくこびりついていた。何度も消しては、き直した跡がある。
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そして、その計算の最には、震えるような角で囲まれた数字が残されていた。
『目標:58点』 『結果:58点(達成)』
別の答案用も裏返した。 まったく同じだった。 『目標:52点』 『結果:52点(達成)』
『目標:61点』 『結果:61点(達成)』
これは、ケアレスミスでも、勉への反抗でもない。 翔太は、最初から「この点数を取る」とあらかじめ決め、配点表と照らしわせながら、問ごとに落とす問題を精緻に選び取っていたのだ。 難問を確実に解く能力を持ったで、あらかじめ設定した点数に着させる。それは、満点を取ることよりも遥かに度で、遥かに狂気じみた作業だった。
指先がたく震え、の端がカサカサと音をてた。 どうして? どうしてそこまでして、点数を落とさなければならなかったの? 位を取り続けてきた子が、なぜ自ら望んで、平均点以の沼にを投げなければならなかったのか。
『僕が位を取ったら、は婚するの?』
ファミレスでの翔太の問いが、ので警報のように鳴り響いた。 あの子は、何をっている? あの子ので、成績と私たちの夫婦関係は、どう結びついているというのか。
リビングの奥、寝のドアがギイと音をてていた。 喉が渇いたのか、雅が寝着姿でふらりとてきた。暗がりのでダイニングのかりに気づき、眉をひそめてこちらを見る。
「……綾子、おまだそんなもの見てるのか。いい加減にしろよ」
私はちがり、裏返した答案用を雅の目のに突きつけた。
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