"何番まで落ちたら離婚するの" 第13話
万引きとかしたらいい? 学で誰かを殴ったらいい? 僕がどうしようもない良になったら……お父さん、僕をるために、ずっとにいてくれるかな。お母さんも、お父さんに『助けて』って言えるよね?」
翔太の細いが伸びてきて、私の膝のに置かれた。 え切った、さなのひら。
「ねえ、お母さん。僕、何点取ればいい? どうすれば、お父さん、いなくならないの……?」
その瞬、私ので張り詰めていた最の何かが、音をてて完全に崩壊した。
「……ごめんね」
私の喉から溢れたのは、それだけだった。 絞りすような、掠れた、みっともない声だった。
「ごめんね、翔太。ごめんね……っ」
私は膝をついたまま、震える腕を伸ばし、目のでたく固まっていた息子を、力任せに胸のへと引き寄せた。 抱きしめた瞬、その体のあまりの軽さとささに、臓が握り潰されるような痛みがった。 毎見ているはずだった。 毎背にを当て、塾へと送りしていたはずだった。 それなのに、私の腕のにいる翔太は、こんなにもく、こんなにも頼りなく、骨の形がそのまま伝わってくるほどに張っていた。
「お母さん……?」 翔太の戸惑ったような声が、私の鎖骨のあたりに当たった。 息子のは、私を抱き返すこともできず、宙で彷徨っていた。 られるとったのだろう。 秘密を暴かれ、またあのヒステリックな切り声で問い詰められると、構えていたに違いない。
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「もういいの」 私は息子の濡れた髪に顔を埋め、涙と汗の匂いを吸い込みながら、何度も何度も首を振った。 「もう、いいのよ、翔太。点数なんて、どうでもいい。位なんて、度と取らなくていい。点でも、零点でもいい。あなたが、お父さんとお母さんのために、そんなことしなくていいの……」
「でも……」 翔太の声は、まだ理性の鎧を脱ぎ捨てられずにいた。 「僕がちゃんとしないと、お父さんが……」
「お父さんがいなくなるのは、あなたのせいじゃない!」 私は息子の細い肩を抱きしめたまま、叫んでいた。 「違うの、翔太。全部、の問題なの。お父さんとお母さんが、くて、ずるくて、お互いに向きうのが怖かっただけなの。そのさを……全部、あなたに背負わせてたの。あなたが成績をげても、げても、私たちの問題は変わらなかったのに……あなたを代わりにして、ずっと逃げていただけなのよ」
翔太の体が、微かに震え始めた。 だが、あの子はまだ泣かなかった。 もの、を殺して数字を分析し続けてきたが、急には元の子供に戻れないのだと、その直した筋肉が痛々しいほどに物語っていた。
私は息子の背を、ゆっくりと、何度もさすった。 「今はもう寝なさい。何も考えなくていい。テキストも、ノートも、全部かなくていいから」
翔太は何も言わず、たださく頷いた。
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ベッドに横たわらせ、毛布を肩まで掛けてやると、翔太は井を見つめたまま、微だにしなかった。 私はその部の気を消し、元のクッキー缶と、冊の学ノートを抱えて、静かに部をた。
階段をりる取りは、鉛のようにかった。 だが、胸の奥には、これまで度もじたことのない奇妙な静けさがあった。 もう、誤魔化せない。 私たちが築いてきた『絵に描いたような幸福な庭』という名の張りぼては、今夜、完全に骨組みまで剥きしになったのだ。
*
リビングのかりを点け、私はダイニングテーブルの央に、あのセロハンテープで繋ぎわされた『婚届』を広げた。 その隣に、翔太の冊の『記録ノート』を並べる。 番しいノートは、あの子が導きした最の分析――『検証2:例テスト 目標52点。結果:ファミレスでが本気で鳴りって、お互いの顔を見た』のページをいたままにした。
それから、スマートフォンを取りした。 連絡先の『雅』をく。 指先は、もう震えていなかった。
『今、何に帰れる? 翔太のことで、今夜どうしてもで話さなければならないことがあります。 お願いだから、逃げないでく帰ってきてください。 の婚届のことも、翔太が隠していたノートのことも、全部テーブルのにあります』
送信ボタンを押す。
画面が切り替わり、リビングに再び静寂が戻った。
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