みかん小説
本棚

"レジ打ちの妻は恥ずかしい" 第5話

正直に申しげて、変驚きましたし、失望いたしました。 は、代々堅実な柄です。親戚には公務員や教員もく、世体を何よりもんじる庭です。 これから課、部世していく翔平の妻が、所のスーパーでレジを打っているなど、親戚やご所に対してどのような顔をして説すればよいのでしょうか。 あなたはご自分のことしか考えていらっしゃらないようですが、結婚とはとの結びつきです。夫をて、から支えるのが妻の務めではありませんか? あなたの親御さんは、そのような当たりの教育もなさってくださらなかったのでしょうか。 これ以、翔平のを引っ張るような儘は許されません。 来週の、午にそちらのマンションへ伺います。 の嫁としての構えと、活のルールについて、私から直接きちんとお話しする必があるようです。 退職届は、それまでにきちんと提しておきなさい。 お返事はです。にお会いしましょう』

たいを放つ液晶画面を、私はまばたきもせずに見つめ続けた。

「私の親御さんは、そのような当たりの教育もなさってくださらなかったのでしょうか」

そのを読んだ瞬、私ので張り詰めていた最の糸が、音をてて断ち切られた。

広告

私を侮辱するのはいい。 私の仕事を世体という物差しで測り、見すのも勝にすればいい。 けれど、汗垂らして私を育て、私の仕事を「千が自分で選んだなら、誇りを持って働きなさい」といつも温かく送りしてくれた両親を、このたちに愚弄される筋いは微もない。

私はベッドのに領収の束を広げ、スマートフォンのカメラを起した。 枚ずつ、付と額と支払者の名がはっきりと写るように、静かにシャッターを切っていく。

パシャリ。パシャリ。

静まり返った寝に、たい子音だけが響く。

「来週の、ね」

私はスマートフォンの画面を伏せ、カレンダーの来週のの欄に、黒いペンでさく丸をつけた。

引きがるつもりは、微もなかった。 私の仕事も、私のも、私の族の尊厳も、誰かの見栄のために踏みにじらせたりはしない。

夜のの向こうで、る音がかすかに聞こえていた。

あの夜から、部の空気は完全に澱んでいた。

翔平は骨な無を決め込んでいた。 朝、私が「おはよう」と声をかけても、靴べらを乱暴に靴箱に叩きつける音だけで返す。夜、彼が帰宅しても私と目をわさず、無言でコンビニの弁当をべ、シャワーを浴びるとリビングのソファに背を向けて横たわった。

広告

かつては週末ごとにで笑いながら選んでいたインテリア雑誌も、引き物のカタログも、ローテーブルの隅で埃を被り始めていた。

彼が何を考えているのかは、痛いほどよく分かっていた。 沈黙による圧力。いわゆるモラルハラスメントだ。 男側からを利かず、嫌をまき散らし、居の悪い空を作りすことで、私から「ごめんなさい、私が悪かったわ」とげてくるのを待っているのだ。

『式まであと。招待状はもう全員に配り終えている』

彼が捨て台で残したその言葉が、彼にとっての絶対質だった。 世体を何よりも気にするのは翔平自のはずなのに、彼は「女の側こそ、直で婚約破棄されたら傷物として笑いものになる」と信じ切っている。だから、放っておけば私が恐怖と世体に負けて、泣きついて退職届にサインするとを括っているのだ。

だが、私のにあったのは、恐怖などではなかった。

え切った部の隅で、私は自分のスマートフォンを握りしめ、淡々と作業をめていた。 に流されて泣いたり、取り乱して問い詰めたりするは、あの夜で終わっていた。 必なのは、事実の確認だ。

翌週の、私はシフトの平の公休を利用して、の窓へと向かった。 元にあるのは、私の個座の通帳冊と、結婚準備のために作った共同名義の座の通帳、そして過分のクレジットカードの利用細だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: