"レジ打ちの妻は恥ずかしい" 第7話
私は通帳を見せ、「をてから、奨学を返しながら懸命貯めて、ようやく百万円になったよ。いつかでを買うのにしようね」と笑って話したのだ。 翔平は「千は本当にしっかりしてるな。偉いよ」と私のを握りしめてくれた。
あのの言葉は、賞賛ではなかった。 値踏みだったのだ。
この女には百万円の現がある。 いざとなれば、自分の見栄で作った借も、分相応な結婚式の費用も、この女の通帳から吸いげれば帳尻がう。 そして、を吸いげたは、仕事を辞めさせて自分の支配に置き、親戚や司のでは「美しい専業主婦の妻」としてトロフィーのように侍らせておく。
スーパーでちっぱなしで働き、ひび割れたで銭を数えて貯めた百万円を、彼は自分の見栄の残飯処理に使うつもりだったのだ。
「……ふざけないで」
絞りすような呟きが、誰もいない寝に落ちた。 りで界が赤く染まりそうだった。 しみなど、とっくに蒸発していた。残っていたのは、自分のをで踏みにじろうとする者たちへの、氷のように透き通った激しいりだけだった。
私はすべての類を元の位置に寸分違わず戻し、装ケースの蓋を閉めた。 そして、自分のスマートフォンで撮した類の写真を、クラウドの専用フォルダへと保した。
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まだ、くではない。 今ここで翔平を問い詰めても、「で返すつもりだった」「夫婦になるんだから助けうのは当然だ」と言い逃れされるだけだ。 彼らが番逃げられない形で、その虚栄の仮面を剥ぎ取らなければならない。
その会は、いがけない形で、向こうから引に転がり込んできた。
曜の午過ぎ。 私が働くスーパー「マルエイ」は、夕飯の買いしに訪れる主婦や齢者で混雑し始めていた。
私は番レジにち、流れるようなつきで商品をスキャンしていた。 カゴからカゴへ、い調料やパック肉を際よく移し、バーコードを読み取る。
「いらっしゃいませ。ポイントカードはお持ちでしょうか」
「……随分と、のんきに銭を数えていらっしゃるのね」
く、けれど内の喧騒を切り裂くような甲い声が、レジの正面からってきた。
ハッとして顔をげると、そこにっていたのは悦子だった。
グレーの級そうなカシミヤコートを羽織り、首元には粒のスカーフ。には見せつけるようにイタリア製のブランドバッグを提げている。 その佇まいは、庶民なこのスーパーのレジにあって、あまりにも異様で、攻撃だった。
悦子のろには、夕方の買いしに並ぶ数の客が、審そうな顔で隔を空けて並んでいた。
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「……お義母様」
私がわず声を漏らすと、悦子は眉を釣りげ、周囲に聞こえるようなきな声でを鳴らした。
「お義母様だなんて気く呼ばないでくださる? まだの籍にも入っていない、ただのレジ打ちの娘さんにそう呼ばれる筋いはありませんわ」
レジ待ちの列から、ピリッとした緊張が広がっていくのが分かった。 ろに並んでいた主婦が、ぎょっとして悦子の背を見つめている。
私は息を吸い込み、表を消した。 を乱してはいけない。ここは私の仕事であり、私を守ってくれる仲とお客様がいる所だ。
「お客様、恐れ入りますが、お会計の商品をレジカウンターへお載せいただけますでしょうか」
あくまで員としてのトーンを崩さずに言うと、悦子は笑を浮かべ、自分が持っていたさな買い物カゴを、乱暴にベルトコンベアのに叩きつけた。
に入っていたのは、最級の黒毛牛のパックと、級な輸入チーズ、そして桐箱に入った贈答用のイチゴだった。 スーパーのでも最も単価のいものばかりを、わざわざ選んでカゴに入れていた。
「言われた通りに持ってきてあげましたよ。ほら、く計算なさい。あなたの取り柄は、をかすことくらいなのでしょう?」
私は何も言わず、イチゴの箱を傷つけないように慎に両で持ちげ、バーコードをスキャンした。
牛肉、チーズと順に読み込ませていく。
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