"レジ打ちの妻は恥ずかしい" 第8話
「お会計、計で万千百円になります」
「ちょっと、待ちなさいよ」
悦子がを乗りし、カウンターを指の爪でトントンと叩いた。
「あなた、今、そのイチゴをカゴに移す、箱の角を台にぶつけたでしょう?」
「……いえ、丁寧に扱わせていただいておりますが」
「いいえ、ぶつけたわ! 雑なのよ、つきが! そんな乱暴な扱いをされたら、が傷んでしまうじゃないの! これだから教養のない庭で育ったは困るのよ。物の価値も分からないくせに!」
悦子の切り声が、品売り全体に響き渡った。 隣の番レジの客も、通を歩いていた客も、斉にを止めてこちらを凝している。
「申し訳ございません。もしごであれば、すぐに売りからしいものとお取り替えいたしますが」
「取り替えれば済むとっているの!? その浅ましい根性が気に入らないって言っているのよ!」
悦子はバッグを抱え直し、列のろを振り返るようにして、さらに声を張りげた。
「皆さん、見なさいよ! この女、来うちの息子と結婚する予定の女なんですのよ! うちの息子は流企業でこれからのにつだというのに、こんな潔なエプロンをつけて、ので平然とをげるような底辺の仕事を恥ずかしげもなく続けているんです! 仕事を辞めなさいと丁寧に諭してあげたのに、恩を仇で返して息子を困らせて……本当に、親の顔が見てみたいわ!」
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底辺の仕事。 潔なエプロン。
その言葉が落ちた瞬、内の空気が凍りついた。 私の胸ので、たいが散った。 爪がのひらにい込むほど拳を握りしめたが、私は絶対に声を荒げなかった。ここで私が取り乱せば、彼女の「で教養のない女」という筋きに加担することになる。
「お客様」
私は悦子の目を、まっすぐに見据えた。 その瞳の揺らぎのなさに、悦子が瞬、怯んだように眉をかした。
「当の商品、ならびに私個の対応についてご満がおありでしたら、をお呼びいたします。ですが、のお客様のお買い物のご迷惑となる為、ならびに侮辱な言はお控えいただけますでしょうか」
「な、なんですって……!? 客に向かって説教する気!? この気な――」
悦子が逆し、カウンターのに置かれていたレシートの束を払いのけようとを振りげた、そのだった。
「そこまでにしていただこうか」
く、よく通る声が割り込んできた。 バックヤードの扉がき、ストアマネージャーの部と、チーフの島田さんがにてきたのだ。
部は代の温な男性だが、理尽なクレーマーに対しては毅然とした態度を取ることでスタッフからく信頼されていた。島田さんもまた、鋭い線で悦子を射抜いている。
「……」
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「千さん、代わりなさい」
島田さんが私の肩をそっと抱き、レジの内側から私をろへとがらせてくれた。 部が悦子のにち、丁寧だが切のを交えないビジネスの礼法でをげた。
「お客様。防犯カメラの映像とお声は、事務所の方でも確認させていただきました。当スタッフに対する名誉毀損に当たる発言、ならびに営業妨害と見なされる為がございました。これ以続けられるのであれば、警察へ通報せざるを得ませんが、いかがなさいますか」
「け、警察……!?」
悦子の顔から、さっと血の気が引いた。 まさか、たかがスーパーのごときが自分に対して警察という言葉を使うとはっていなかったのだろう。
「な、何よそれ! 私は客よ!? 息子の嫁になる女に、庭の教育指導をして何が悪いのよ!」
「ここは公の商業施設であり、千さんは当社の正規雇用社員です。就業の従業員の権を守ることは、当社の義務でございます。プライベートな問題であれば、営業に、しかるべき所でお話しいください。のお客様のご迷惑ですので、お引き取りを」
部の言葉は、静かだが鋼のようにかった。
周囲の客たちからも、たい線とヒソヒソ声が悦子に突き刺さっていた。 「何あの、みっともない……」 「スーパーの員さん捕まえて、何喚いてるのかしら」
「内自したいなら所でやればいいのに」
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