"恩人弁護士の不可解な書類" 第8話
閲覧の空気がくじられ、私はファイルを閉じた。 がかすかに震えていた。
りよりも先に湧きがってきたのは、元がすっぽりと抜け落ちるような虚脱だった。 あの完璧な救済の裏に、別の図があった。 私は、ただ助けられたのではなかった。 彼にとって、私は「使える報を持った都のいい被害者」だったのだろうか。
私は記録を返却し、裁判所をた。
だが、まだだ。 まだ、榎本先がどういう図でそれを使ったのかはわからない。 梨郁恵というがどんな状態なのかも、私はらない。 堀を埋めるように、私は記録に記載されていた梨さんの現所を頼りに、都営鉄に乗った。
向かったのは、練馬区にある古い造アパートだった。 狭い階段をがり、階の角部のにつ。 表札には、きでさく「梨」とかれたが貼られていた。 郵便受けにはチラシが溢れ、カーテンは固く閉ざされている。 かつて、自宅に閉じこもっていた頃の私自の部と、あまりにも似ていた。
呼吸をつして、チャイムを押した。
ピンポーンと、乾いた子音が響く。 反応はない。 もう度押す。 しばらくして、ドアの向こうで微かにスリッパを引きずるような気配がした。
「……どなたですか」
ドアチェーンがかかったまま、扉がわずかにセンチだけいた。
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隙から覗いた顔は、驚くほど痩せこけていた。 髪は乱れ、目のには濃い隈が張り付いている。 代半ばのはずなのに、気を完全に失った表は、まるで抜け殻のようだった。
「あの……梨郁恵さんでしょうか」
「……誰ですか。聞ならりません」
「違います。私、矢野真と申します。以、あなたと同じ会社で……総務の派遣として働いていました」
その瞬、女性の瞳に烈な怯えと敵がった。
「会社……? 会社のなんですか? 帰ってください! もう何も話すことはありません!」
「待ってください! 会社のの者じゃありません! 私も、藤堂専務に追いされたんです!」
私は必でドアの隙に向かって声を絞りした。
「私も、あなたと同じように理尽な目に遭いました。の画の件で……っているかもしれません。私も被害者なんです」
梨さんのが止まった。 ドアの向こうで、荒い呼吸が聞こえる。 彼女は疑わしそうに、私をじっと見つめた。
「……矢野、さん? あの、ネットで騒がれていた……?」
「はい。私も、藤堂専務に陥れられました。あなたの裁判の記録を見て、居てもってもいられずにここへ来たんです。あなたを責めに来たんじゃありません」
梨さんはしばらくの、ドアの隙から私の顔を凝していた。 やがて、さくため息をつき、首を横に振った。
「……帰ってください。
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あなたと話すことなんて、何もありません」
「梨さん、お願いです。しだけでいいんです。あなたの代理について――」
「代理?」
梨さんの声が、微かに尖った。
「榎本さんのことですか? もし榎本さんの悪を言いに来たなら、絶対に許しません。あのは……拓兄ちゃんは、私を助けてくれようとしている唯のです。誰も信じてくれなかったに、警察すらいてくれなかったに、話を聞いてくれたのはあのだけだったんです」
拓兄ちゃん。 その親しげな呼び方に、私の胸が激しく波打った。
「あのたち……会社は、私を狂扱いしました。私が勝にい詰めて、薬をんだだけだって。全部、私の自己責任だって。証拠なんてどこにもないって、の弁護士には全員断られたんです。でも、榎本さんだけは諦めないでくれた……。私のために、必で戦ってくれているんです」
梨さんの瞳から、粒の涙がこぼれ落ちた。 そのは、ドアの縁をくなるほどく握りしめている。
「だから、お願いですから放っておいてください。私はもう、これ以誰とも関わりたくないんです……!」
バタン、と乱暴にドアが閉まり、内鍵がかけられる音が響いた。
静まり返ったアパートの通に、私だけが取り残された。
『拓兄ちゃんは、私を助けてくれようとしている唯のです』
梨さんの叫びが、にこびりついてれなかった。 は、単なる弁護士と依頼の関係ではない。 幼馴染か、あるいはそれにい、い個な繋がりがあるのだ。
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