"恩人弁護士の不可解な書類" 第16話
対等なで、決着をつけるためだ。
の午、榎本法律事務所のドアをけると、内には昨と同じ苦しい空気が漂っていた。 デスクに向かっていた榎本が、勢いよく顔をげた。
「矢野さん……! 連絡がつかなくて、配しました」
榎本が駆け寄ってくる。 その顔には、晩寝ていないであろう濃い隈が張り付いていた。
私はカバンから、連の類を取りした。 藤堂からの脅迫SMSの画面を印刷したもの。 及川法務部から提示された『』のコピー。 そして――あの、青い複写文字が刻まれた管理簿のコピー。
それを、榎本のデスクのに、叩きつけるように置いた。
バサリ、と鋭い音が響いた。
榎本は目を見張り、置かれた類に線を落とした。 最初は及川のに眉をひそめ、そして……複写管理簿のページに目が留まった瞬、彼のきが完全に止まった。
「これは……」
榎本のが、震えながらそのを持ちげた。
「……藤堂本が、印鑑を持ちした記録……? しかも、藤堂の直サインがある……!」
榎本は顔をねげ、信じられないものを見る目で私を見つめた。
「矢野さん、これ、本物ですか!? 原本はどこに!?」
「原本は、全な所にあります」
私はパイプ子を引くこともせず、ったまま、榎本を真っ直ぐに見据えた。
「榎本先。及川法務部からは、百万円と完璧な推薦状を提示されました。
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断れば、横領で刑事告訴すると脅されています」
榎本が息を呑む。
「先。あなたにつ、はっきり言っておきます」
私の声は、く、しかし事務所の隅々まで響き渡るさを持っていた。
「私は、先の都のいい武器ではありません。梨さんを救うためのれな犠牲者になる気もありません。先が私の言葉を勝に使ったこと、守秘義務を破ったことに対するりは、今でも消えていません」
榎本は言葉を失い、類を持ったままち尽くしていた。
「でも……藤堂のやりに屈して、を受け取って沈黙することは、私自の尊厳を捨てることと同じです。私は、あの男を許さない。自分ので、あの男の嘘を暴きたい」
私は歩、榎本に歩み寄った。
「だから、提案します。先と私で、対等の同盟を結びましょう。先が私を操るのではなく、私がこの証拠を武器に、私の志で法廷にちます。その代わり……先は度と私に嘘をつかないでください。私の越しに、勝な判断をしないでください。もしそれが守れないなら、私は今すぐこの証拠を焼き捨て、弁護士会に先の懲戒請求をします」
沈黙が、事務所を満たした。
榎本は、元の複写記録と、私の目を交互に見つめていた。 やがて、彼の肩からふっと力が抜けた。 彼は類をデスクに置き、く、く息を吐きした。
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そして、私に向かって、これまでのどの瞬よりも真摯に、をげた。
「……参りました」
榎本の声には、微かな震えと、それ以のい敬が滲んでいた。
「矢野さん。あなたを甘く見ていました。守られるべきい被害者だと、勝に決めつけていたのは私の方です。本当に……申し訳ありませんでした」
榎本は顔をげ、私の目をまっすぐに見つめ返した。
「あなたの条件を全面に受け入れます。この戦いの主導権は、あなたにあります。私はあなたの代理として、あなたの尊厳を守るために、持てるすべての法続きを尽くします」
の線が、交差した。 依頼と弁護士という関係ではなく、沼ので背を預けう、対等な関係が結ばれた瞬だった。
それからの、私たちは猛烈な勢いで反撃の準備をめた。 裁の労働審判期は、目に迫っていた。 榎本は藤堂側の弁護団に対し、追加の証拠説を提。 私が証として廷し、証拠を提することを正式に通した。
藤堂側は激しく揺した。 及川からの執拗な話はピタリと止まり、代わりに藤堂側の代理弁護士から「期の緊急協議」の申し入れが入った。
期夜。 神保町の夜はく、事務所の窓のにはたいがり始めていた。
私はコンビニのバイトを終え、最終打ちわせのために事務所の階段をがっていた。
は、京裁の法廷で、藤堂と直接対決するだ。
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