"席次表から消された姉" 第16話
漆塗りのきな座卓のには、すでに先付の鉢と、そして枚のい質が広げられていた。
『』と墨文字で印字されたその面が、私の目にび込んできた。 結婚、私の実や姉との関わりを切断ち、鈴のに全面に従うことを誓約させる、事実の絶縁状だった。
「まあ、美奈さん。通りにいらしてですわ。さあ、こちらへ……」
冴子さんが完璧にえられた笑みを浮かべて顔をげた。 だが、その言葉は途で無残に凍りついた。
私の背から、綾が静かに子を押し入れ、部の敷居をまたいだ瞬だった。
「……は?」
翔太が抜けな声を漏らし、座布団から腰を浮かせた。 冴子さんのから、持っていた扇子がバサリと畳のに落ちた。 ふたりの顔から、血の気が瞬にして引いていく。その窩が見かれ、瞳孔が激しく揺れいた。
「な……なんで、親父が……」
「お、お父様……!? それに、あなた……!」
冴子さんの甲い鳴が、静寂なの空気を切り裂いた。 彼女の指先が、子を押す綾を激しく指し示す。その指は、恐怖と屈辱で刻みに震えていた。
「な、何ですの、この無礼な真似は! 誰がその男をここへ連れてきてよいと言いましたの! それに、その女は何です! 仲居! 仲居はいらっしゃいませんの!? この卑しい介護士を今すぐ追いしなさい! 松籟亭の格式折角のお席が、汚物のように汚れてしまいますわ!!」
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狂乱したように喚き散らす冴子さんをに、綾は微だにしなかった。 ただ、怜悧な澄んだ瞳で、喚く女を静かに見つめ返していた。
翔太が顔を真っ赤にしてちがり、畳を激しく踏み鳴らしてこちらへ詰め寄ってきた。
「美奈! 貴様、何の真似だ! 親父を施設から勝に連れすなんて、誘拐と同じだぞ! それに、その女を連れてくるなとあれほど言っただろ! 僕の警告を無する気か!!」
翔太の振りげたが、私の肩を掴もうと伸びてきた。 その瞬。
「――控えんか、翔太ッ!!」
部の欄を震わせるほどの号が、座卓の向こうへ叩きつけられた。
翔太のが空で止まった。 子ので、克己さんが両で座卓の縁を力く掴み、震えるで、自らの力で畳のにちがったのだ。 麻痺の残るをで支え、仁王ちになって息子を睨みつける老のは、鬼気迫るものがあった。
「お……親父……ちがれるのか……?」
翔太の顎がれそうにがり、ずさりした。 克己さんは歩、また歩と、自由なを引きずりながら座卓へづいた。綾がそっとその腕にを添え、転倒しないよう最限の力で支える。
「冴子。……おが、誰を汚物と呼んでいるのだ」
克己さんの声はく、底から響くようにかった。
「この綾さんがいなければ……私はの、あの病院の個で、おたちのによって尊厳を殺され、衰していたのだぞ」
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「な、何を馬鹿なことを……!」
冴子さんがちがり、帯にを当てて声を震わせた。
「わたくしがどれほどあなたのために尽くしてきたか! 脳梗塞で倒れたあなたを、世様に恥ずかしくないよう最の個に入れて、名医を配して……それを、この女に吹き込まれて、恩を仇で返すおつもりですの!?」
「恩だと?」
克己さんは乾いたたい笑いを漏らした。 そして、綾がブリーフケースから取りした分い類の束を、座卓の真んに叩きつけるように置いた。 ドサリ、と鈍い音が響き、広げられていた『』が無残に押し潰される。
「京庭裁判所に、今朝、正式に受理された類の写しだ」
克己さんは、震える指先で類の表を指し示した。
「成見の選任申。そして……鈴冴子に対する、婚姻関係破綻を理由とする婚請求申だ」
「り……婚……!?」
冴子さんの顔が、気に変した。
「ふざけないでちょうだい! このわたくしが、鈴の正妻であるこのわたくしが、なぜ婚などされなければなりませんの! 財産分与はどうなりますの! あの世田のは、わたくしのものですわよ!」
「あのもも、すべて私の父の代からの相続財産だ。おの特財産など坪たりともせん」
克己さんは徹に言い放った。
「さらに、おたちが私の識が朦朧としているに、偽造した類を使って引きそうとした千万円の融資契約。
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