"退職金と三百万円の借金" 第6話
その角、運管理者用のデスクに、目当ての物がいた。
佐野涼太。歳。
、男が直属の輩として取り取り仕事を教え込んでいた、当の入社員だ。方の農で、領は悪かったが愚直なまでに真面目で、男は「昔の俺に似ている」と妹のようにがっていた。今では派に成し、この物流センターの運管理主任を任されている。
「……林さん?」
トラックの配表を睨んでいた佐野が、私に気づいて弾かれたようにちがった。
「どうされたんですか! 昨で定退職されたはずじゃ……束、総務から届いてましたよね? 僕、現をれられなくて、昨の送別会にけなくて本当にすみません」
佐野は申し訳なさそうにをげた。懐っこい丸顔と、焼けした肌。、夫の葬儀で誰よりも声をげて泣いてくれた青の面が、そこにはまだ濃く残っていた。
「いいのよ、佐野君。仕事が番事なんだから。……急に来てごめんなさいね。実は、佐野君にしか頼めないことがあって来たの」
「僕に、ですか?」
私は周囲を見回した。朝の点呼が終わり、事務所内には数の事務員しかいないが、ち話をするには都が悪かった。
「し、所を変えられるかしら。昔の文保管庫、今も空いている?」
佐野は訝しげに目をしばたたかせたが、私の真剣な表を察したのか、「あ、はい。
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鍵をけます」と頷いた。
物流センターのにある旧文保管庫は、以のの伝票や報がスチールラックに眠る、暗い部だった。カビと古の匂いがち込める、私はポケットからつ折りにした借用のコピーを取りし、佐野のに広げた。
「これを見てほしいの」
佐野は蛍灯の頼りないにかざすようにして、類に目を落とした。
「……従業員福祉緊急貸付? 百万円……え、借入が林さん?」
「昨、退職の続きの席で事から突きつけられたの。のに、私がこのおを借りたことになっている。でも、私はこんな類をいた覚えはないの」
「って……」
佐野の指が、ピクリと震えた。
「そう。男さんの、告別式のよ」
「……っ!」
佐野の喉から、さな息が漏れた。彼のので、の端がかすかに揺れている。
「林さん、これは……何かの違いじゃないですか? システムの誤作とか、同姓同名の……」
「印鑑は本物だったわ。私の引きしに入っていた私印よ。浦部は、当の類原本がある以、退職から百万円を差し引くと言っている。私はね、佐野君、おが惜しくてここに来たんじゃないの。男さんがくなったまさにそのに、私の名を使って誰かが会社からを引っ張りした。その汚名を着せられたまま、この会社をるわけにはいかないのよ」
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私は佐野の目をまっすぐに見つめた。
「お願い、佐野君。あなたなら、当の物流管理課のの納伝票や、特別経費の決裁台帳の保管所がわかるはずよ。この百万円が、当本当に現でいたのか、それともどこかの座に振り込まれたのか。納伝票の控えを探してほしいの」
佐野は線を泳がせた。
いつもなら「わかりました、すぐ探します!」と元気に引き受けてくれるはずの彼が、類を握りしめたまま、を真文字に結んでかない。
「……佐野君?」
「林さん。あの……これ、本当に調べなきゃ駄目ですか」
ぽつりと、掠れた声が返ってきた。
を疑った。
「え……?」
「男さんは、もうくなっても経つんですよ」
佐野は顔を伏せたまま、絞りすように言葉を継いだ。
「もしかしたら……僕のから言うのもなんですけど、男さんが、林さんに言えないような急な費を抱えていて、それで……会社に頼み込んで、奥さんの名を借りて面したんじゃないでしょうか。男さんの名誉のためにも、これ以蒸し返さない方がいいんじゃないかって、僕……」
「佐野君!」
私の鋭い声が、のコンクリート壁にね返った。
自分でも信じられないほど、全からりが噴きしていた。
「あなた、今なんとおっしゃったの? 男さんが、私に内緒で借を作って、自分のに妻の名義を偽造してを盗むようなだったと、本気でっているの!?」
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