"時給951円と捨てられた妻の正体" 第5話
透はに両をつき、額を絨毯に擦り付けて懇願した。 プライドも尊厳もかなぐり捨てた、れな命乞い。
しかし、黒田社の瞳には、切のけは宿っていなかった。
「園田君。君は勘違いをしている。……君が今までこの会社で課という子に座り、法な報酬を得ていられたのは、君の実力ではない」
「……え?」
「が社の株主であり、グループの最実力者である【あの方】の顔をてるため、私たちが君という無能なを、無理やり庇い続けていただけなのだよ」
「……株主……? 親父のことですか!?」
「違う」 黒田社はちがり、背の巨なスクリーンをリモコンで点灯させた。
画面に映しされたのは、アークシステムズの最の価証券報告――株主の状況を記したページだった。
【第位株主:神崎葉(保比率:62.4%)】
「か……んざき……かずは……?」
透はその名を、掠れた声で読みげた。 の片隅で、何かが激しい音をてて崩壊していく。
「神崎……? 葉……って……おい、まさか……」
「そうだ」 黒田社は、れな虫けらを見るような目で透を見ろした。
「君が昨夜、『百円の役たず』と罵ってから叩きした、君の元妻――神崎葉取締役のことだ」
「う、嘘だ……嘘だろ……!?」
会議のに突っ伏したまま、透は狂ったように首を横に振った。 血の気が完全に引いた顔は気に変し、唇がガタガタと震えている。
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「葉は……あいつはただの清掃員だぞ!? 毎ボロボロのを着て、荒れを気にしてハンドクリームを塗ってるような女だ! そんな奴が……商数百億のこの会社の、株主なわけがない!!」
「無とは、本当に恐ろしいものだな」
法務担当役員が、忌々しそうに類の束をめくった。
「神崎葉様は、国内最の環境ファシリティ企業『神崎グローバルサービス』の創業ご令嬢であり、現は同社の専務取締役を務めておられる。が社が、放漫経営によって倒産寸に陥った際、個資産を含めて数億円の増資を引き受け、救済してくださったのが神崎様だ」
役員の言葉が、言言、透の蓋骨に杭のように打ち込まれていく。
「葉様は、現の労働環境を肌で理解するために、自社の清掃現へ自ら研修に入られるほどの実務だ。それを君は……『清掃会社に勤めている』という言葉の辺だけを掬い取り、あろうことか制のパート清掃員だと決めつけて見していたのだよ」
「そ……そんな……」
透の脳裏に、過の記憶が馬灯のように駆け巡った。
結婚当初、葉が「活費は折半しましょう」と提案してきたこと。それを「俺の甲斐性を見せてやる」と見栄を張って断った自分。 葉が折、の経済ニュースを原語でチェックしていたこと。
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それを「読めもしないのにカッコつけるな」と嘲笑った自分。 そして、義実へ通い、両親の世話を甲斐甲斐しく焼きながら、修造から渡された数百円の遣いを切そうに財布にしまっていた葉の姿――。
すべては、夫のちっぽけなプライドを傷つけないための、葉の細やかな気遣いだったのだ。
「そして園田君」黒田社がトドメを刺すように宣告した。「君の処分が決定した。本付での【懲戒解雇】。退職は当然支。さらに、横領した千百万円については、来末までに括での返済を求める。返済がなされないは、直ちに刑事告訴に踏み切る」
「ま、待ってください社! 括返済なんて無理です! 俺にはそんな貯はありません!」
「ったことではない。君がと豪遊するために使い込んだ会社のだ。ぐるみを剥いででも返済したまえ」
「せ、せめて葉に……葉に度だけ添えをさせてください! 俺の妻なんです! 頼めば絶対に許してくれます!」
すがりつく透のを、警備員が無にねじりげた。
「君は本当に何も見えていないのだな」 黒田社はれむように目を伏せた。
「神崎様は今朝、区役所に婚届を提された。……もう、君を庇う神崎葉はこの世のどこにもしないのだよ」
警備員に両脇を抱えられ、引きずられるようにして会議から連されていく透。
その背で、な扉がバタンと音をてて閉ざされた。 それは、彼が数かけて築きげてきた虚飾の栄が、完全に断罪された瞬だった。
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