"正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番" 第13話
幸子の指先が、私のブーツの裾に触れようとする。 その顔には、かつて「げさねえ」と笑していた面は微もなく、する男を救いたいで理性を完全に喪失した怪物の狂気が張り付いていた。
「幸夫の初公判が決まったのよ! 検察官は実刑を求刑するって言ってるの! あの子が刑務所に入ったら、神の血筋はおしまいよ! あんた鬼か! 子供のちょっとした傷で、を滅ぼす気かい!!」
「してください!」 私が鋭く叫んだ瞬、事務所のドアが勢いよくいた。
「神幸子さん! 何をしている!」 びしてきた弁護士が、幸子の腕をがっしりと掴んで引きした。 同に、弁護士の事務員がスマートフォンをに当てて叫ぶ。 「警察ですか!? 接禁止命令がている相方が、事務所で当事者を待ち伏せし、銭をして暴れています! 至急パトカーをお願いします!」
「なっ……警察!? やめなさいよ! 私は母親として――」 幸子が暴れ回ろうとした、まさにその。
ビルの階段を駆けがってくる、規則正しいい音が響いた。 現れたのは、巡回だった名の警察官――そして、その背から姿を現したのは、コートの襟をてた兄・政治だった。
「お兄ちゃん……!」
政治は私の無事を確認するように度だけ頷くと、にへたり込む幸子のに徹に歩み寄った。
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警察署の階級章をつけた制姿ではない。私のコート姿だったが、そのから放たれる威圧は、幸子の喚き声を瞬で凍りつかせるに分だった。
「神幸子被疑者」 同してきた警察官が、帳を提示した。 「裁判所より発令された接禁止命令に対するな違反、ならびに示談・脅迫の疑いで、現犯逮捕します」
「た……逮捕……!? 私が……!? 息子のために頼みに来ただけじゃないの!!」 狂乱して叫ぶ幸子の首に、ガチャリとたい錠がかけられた。
政治は、連されていく元義母の背に向かって、静かに、だが氷のようにたい声で言い放った。
「子供の痛みを笑い、加害者を庇いてし、法を無して被害者を脅迫する。……あなたが息子に与え続けたその歪んだ甘やかしこそが、息子を犯罪者に仕てげた元凶だ。その罪を、留置ので骨の髄までいるがいい」
パトカーの赤灯が、ビルのガラス窓を赤く染めげ、幸子の絶叫と共に夜のへと消えていった。 すべての悪が、法の網によって網打尽に回収されていく。 たい夜ので、私はく、い息を吐きした。
、午。 方裁判所第〇号法廷。
廷のベルが鳴り響き、傍聴席の最列に私は座っていた。隣には弁護士。方の席には、私姿の兄・政治が静かに控えている。
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証言台の向こう、被告席に座らされた幸夫は、青い顔をして俯いていた。 拘置所でのヶで丸刈りにされ、かつての傲な肉付きは削ぎ落とされ、ただの柄な男へと成り果てていた。
「主文」 裁判が、静まり返った法廷に厳かに判決文を響かせた。
【被告・神幸夫を、懲役に処する】
「……っ!」 弁護席の国選弁護が、さく息を呑んだ。 執猶予は――つかなかった。実刑判決だった。
裁判は、鏡の奥の鋭いを被告へ向け、量刑の理由を厳しく読みげていった。
「被告は、わずか歳の女児が過失でグラスを割ったことに憤激し、元の温の汁物を図に浴びせかけた。その犯態様は極めて卑劣かつ残虐であり、被害児に全治ヶの篤な傷を負わせた結果はい」
幸夫の背が、ガタガタと震え始める。
「さらに特すべきは、犯直の被告、ならびに親族らの態度である。泣き叫ぶ被害児を救護することなく嘲笑し、証拠隠滅を画策するなど、反省の態度は皆無であった。公判廷において被告は『が滑った』と理な弁解に終始し、真摯な謝罪のは認められない。幼の被害児のに与えたトラウマは計りれず、実刑をもってその刑事責任を厳しく問うのが相当である」
「裁判! お願いします! 刑務所だけは……刑務所だけは勘弁してください!」
幸夫が証言台にしがみつき、見苦しく叫んだ。 しかし、両脇に控えていた刑務官名が即座にその腕を固め、容赦なく方の扉へと引きずっていった。
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