"薬を忘れて戻ると、「歩けない」夫が立っていた" 第9話
佐織は鞄から、成瀬から渡された調査報告のコピーを取りし、畳のに滑らせた。
「健太さんは、腰の痛みを偽って休職期を引き延ばし、そのに正な資の受け渡しに関与していました。その偽装作のために、私を『介護タクシー』として利用し、お義母さんもその嘘に加担していたのです」
「わ、私はらなかったのよ!」数枝が鳴をげた。「健太が歩けるのはってたけど、そんな危ないことに巻き込まれてるなんてらなかったの!」
「らなかったで済まされる話ではありません」
佐織の厳しい言葉が、数枝の言い訳を刀両断にした。
「あなたが『な息子』を無条件に甘やかし、嫁に苦労を押し付けることで現実から逃げ続けた結果が、この破滅です。夫を具のように使い、族を欺いたを、なぜ私が銭を切って救わなければならないのですか」
吉子が逆して畳を叩いた。
「気な! 嫁の分際で、親族の恥を晒す気なの!? 健太が倒れたら、あなただってに迷うのよ!」
「には迷いません」
佐織はちがり、バッグから枚の類を取りした。
すでに署名と捺印を済ませた、婚届だった。
「私は、健太さんの正の共犯者になるつもりはありません。宅ローンの私の持分は適正に清算し、財産分与と慰謝料の請求は弁護士を通じています。
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……健太、あなたの犯した罪の責任は、すべてあなた自ので背負いなさい」
婚届が畳のに置かれた瞬、健太がに額を擦り付けて泣き叫んだ。
「佐織! 頼む、見捨てないでくれ! 俺が悪かった! 全部おの言う通りにするから……!」
しかし、佐織はその背に度も線を戻すことなく、静かに座敷の襖をけた。
背から吉子の罵声と数枝の泣き声が追いかけてきたが、佐織の取りは、かつてないほどに軽やかで、力かった。
夜のたい気のへ踏みした佐織の瞳には、過への未練は片も残っていなかった。自らのを自らので歩きすための、本当の戦いがここから始まろうとしていた。
親族会議の座敷をにしてから、佐織は度も自宅へを踏み入れなかった。
着替えと当面の活用品は、成瀬と接触したあのの昼休みにあらかじめトランクルームへ預けてあった。現は会社のオフィスから駅れたウィークリーマンションに仮まいを構え、総務部と直属の司にのみ「庭の事による別居と連絡先の変更」を面で届けていた。社内での私活のトラブルを最限に抑えるための、経理畑で培った先のリスクヘッジだった。
曜の朝、佐織が契約した「央法律事務所」の応接には、張り詰めた緊張が漂っていた。
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机を挟んで向かいうのは、企業法務と民事信託、そして悪質な貞・法為事案に精通している弁護士の梶原だった。縁の鏡の奥で鋭いを放つその瞳は、佐織が提した膨な資料の束——の入細、ETCの通過履歴、健太が偽装休職に送ってきたメッセージのスクリーンショット、そして成瀬から提供された調査資料の控え——を丹に精査していた。
「……なるほど、見事なまでに証拠が揃っていますね」
梶原は類をえ、く落ち着いた声で告げた。
「形科クリニックでの理学療法士の証言記録、および主治医に対する虚偽申告の経緯。これらは単なる夫婦の信に留まらず、健太氏による『傷病当の正受』を構成する力な客観証拠です。さらに、奥様のや、財産を欺罔によって無償で利用し続けた点は、民法の法為に基づく慰謝料請求において、極めて力な悪質性の根拠となります」
「宅ローンの清算については、どうなるでしょうか」
佐織が番懸していたのはそこだった。に購入した郊のマンションは、ペアローンではなく健太の単独名義だったが、400万円のうち300万円は佐織の独代の個貯蓄から拠されていた。さらに、毎の管理費や固定資産税、繰りげ返済の資は、すべて佐織の与座から自引き落としで支払われていたのだ。
「ごください。
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