"薬を忘れて戻ると、「歩けない」夫が立っていた" 第10話
資比率の通帳記録と、活費の負担割がこれだけ確であれば、名義が夫側にあろうと、実質な財産形成への寄与度は奥様の方が遥かにいと判断されます。むしろ問題は、健太氏が背負い込んだ連帯保証債務と、会社側から請求されるであろう損害賠償です」
梶原は枚のメモ用にペンをらせた。
「成瀬氏の報告通り、健太氏が関与した密データの正流が刑事告訴に至った、健太氏の個資産は仮差し押さえの対象となる能性があります。そのに、奥様が拠された相当額と、法為に対する慰謝料債権を保全し、マンションの財産分与分を優先に確保しなければなりません。本付で、健太氏宛てに受任通と、財産処分禁止を求める警告を内容証郵便で発送します」
「よろしくお願いいたします」
佐織がくをげたその、マナーモードに設定していた仕事用のスマートフォンが卓でさく震えた。
画面に表示されたのは、健太の直属の司である営業部の苗字だった。度く呼吸をえ、梶原に目配せをしてから通話ボタンを押す。
『……あ、さんの奥様でしょうか。突然申し訳ありません、営業部の松本です』
話の声は、刻な疲労と困惑でひどく沈んでいた。
「お世話になっております、です。
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何かございましたでしょうか」
『実は……今朝番で、事部と法務部による健太君への査問委員会が招集されたのですが……彼が、途で激しましてね。「自分は被害者だ」「妻が会社の調査員に嘘を吹き込んで俺を陥れた」と叫びて、机を蹴りばしてそのまま会社からびしてしまったんです』
佐織はややかなのまま、その言葉を受け止めた。
追い詰められたが最に見せる、もっとも卑な責任転嫁だった。自分のでって歩いていた事実も、密保持違反の現にいた事実も、すべてのせいにしなければ自を保てないのだ。
『その、奥様のご実に鳴り込むような穏な連絡があったと、先ほど事から聞きまして……のため、奥様の全を確認したくご連絡した次第です』
「実に……?」
佐織の眉に、鋭い緊張がった。
「松本部、ご連絡ありがとうございます。私のの全は確保できております。夫の件で会社にご迷惑をおかけし、本当に申し訳ありません。以の夫に関する法対応は、すべて代理弁護士を通じていますので、よろしくお伝えください」
通話を切ると同に、佐織は実の母の携帯話へダイヤルした。
回目のコールの、し震えた母の声が聞こえてきた。
『……佐織? あなた、今どこにいるの?』
「お母さん、丈夫!? 健太から何か連絡があったの!?」
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『さっきね、健太さんからものすごい剣幕で話があったのよ。「佐織が男を作ってをてった」「俺の骨折を放りして浮気相と結託して会社にデマを流した」って……うちの所や親戚に言いふらしてやるって鳴り散らして……』
母の声の裏で、老いた父が「警察を呼べ」と鳴っている声がく響いていた。
腰の術を「骨折」と言い換え、自分が被害者であるという物語を捏造して、妻の実を脅迫する。かつて助席で痛みに顔を歪め、「すまないな、佐織」と殊勝な言葉をにしていたあの男のメッキは、完全に剥ぎ取られ、剥きしの毒を撒き散らす怪物と化していた。
「お母さん、落ち着いて聞いて。健太の言っていることは全部嘘よ。彼は会社のな背任事件に関わって首が回らなくなっているの。今すぐ警察の活全課に話して、脅迫話の相談を入れて。玄関の鍵もにして、絶対に彼をに入れないで」
佐織はちがり、梶原弁護士に向き直った。
「梶原先、予定を倒ししてください。夫は今、私の実を標にして暴を始めています。状酌量の余は切ありません。徹底に、法に追い詰めてください」
梶原は鏡を指で押しげ、徹な笑みを浮かべて頷いた。
「承いたしました。接禁止命令の申してと、緊急の仮差し押さえ続きを同にさせます。
彼がどれほど愚かな線を越えたのか、をもってらしめましょう」
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