"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第4話
相談員は燃料の配達に関する民の声を集めており、澄子は苦を伝えていた。の担当者はくなったが、所属した消費者団体の会報に、さな記事が残っていた。《話で灯油を訴えるが相次ぐ。発送側の説と致せず》という文だった。
枝は会報をコピーし、父へ渡した。清は何度も読み、「男じゃなかったのか」と呟いた。枝は母の交友相が男でも女でもよかったと返した。問題は、確かめていない噂を父が娘と弟へ事実のように話したことだ。清は言い返せず、会報を台所の机に置いた。
母は自分の署名を入れた苦文も用していた。裏庭の物置から見つかったきには、偽の受領印のある軒だけでなく、実際にを訴えた軒の名が並んでいる。清の仕事へ響が及ぶのを恐れていた澄子が、なぜ自分の名をす決をしたのか。枝は署名の横に付いたさな赤い点を見て、当の交換局の事務用ペンが同じだったことをいした。
そのきの最には、《子どもがをしたの声を聞いた》とある。澄子にとっては銭の正だけでなく、灯油が届かない夜を数字で消されるがいたことが、黙っていられない理由だった。枝は母の図を尊し、町のへ会うときはきを最初に見せず、自の言葉を聞くことにした。
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戸田は修理誌を机に広げ、線の損傷を記したに別の依頼も受けたことをいした。の集落で軒の話が斉につながりにくくなり、翌職員が線を調べている。で碍子が緩んだだけだったが、交換局の誰かはその障害を片桐が隠していた灯油の苦と結びつけ、故に線を切ったのではと疑っていた。
「澄子さんは、証拠のないことを噂にしなかった。だからこの件も、修理誌と自分の通話メモを並べてから話すつもりだったんだろう」
枝は帳に、疑いと確定した事実を別の頁へいた。の線は刃物で切られた。集落の軒はによる故障。どちらも声が届かなかったという点では同じだが、原因を混ぜれば母の仕事まで疑われる。毎話をつなぐだった澄子が事にしていたのは、その区別だったはずだ。
父へ会うに、枝は自宅の古い物置を見た。灯油缶が積まれ、側面には清が配送の伝いをしたの印が残っている。父は賃として受け取った額を計簿にいていた。澄子の勤務簿にも同じの活費が記録され、のいた数字はほぼっている。父が正に関わったなら、がへ流れた跡は見当たらない。
それでも清は受領印の話を隠した。潔を示せる資料がしでもあったのに沈黙したのは、職を失う恐怖だけか。
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枝は台所の鍋を見げた。母がいなくなったあと、父は魚を焼くことさえらず、最初のかは枝が弟へ飯を作った。子どもを守れないと自覚していたからこそ、父は仕事を失う能性にしがみついたのかもしれない。
枝はそこで父を許したわけではない。父の選択を理解することと、子どもに負わせたものをさくすることは違う。自分自が、父はたいだと決めて会話を諦めていたこともいし、今は質問を最まで続けようと決めた。
清の夜勤記録を確かめるため、枝は元同僚の吉岡に会った。国鉄がなくなってからも吉岡は元の線沿いに暮らし、になると作業員の事故をいすと言った。あの夜、清はにの保線詰所へ着き、翌朝に戻っている。何もの同僚が緒だったため、交換局の玄関へくことはできない。
「滑り止めの付いた靴は、清さんだけのものじゃない。現にるなら皆はいていた。ただ、当うちに夜勤で来ていた役職員がいる。害の連絡を取るためにな」
役から派遣されていたのは、防災担当の片桐だった。片桐は町の力者の息子で、のちに助役まで務め、にくなっている。枝は、母の通話記録にある役階の話を片桐が使った能性を考えた。
吉岡は片桐について、あの夜はに詰所をたと記憶していた。
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