"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第5話
母が持ちした茶い封筒を、清もっていた。父に問い直すと、失踪の週から澄子は封筒を戸棚へ隠し、清がづくと話題を変えたという。父は浮気のだとい込み、で論していた。母が夜の呼びしに応じたときも、待ちわせをしているのだと疑った。
ところが母は、勤務簿に何枚もの片を挟んでいた。枝は枚ずつ付を並べた。切符ではなく、期にの集落へ運ぶ灯油の納入控えの複写だった。町はに備え、独り暮らしの齢者宅へ共同購入の灯油を届けていた。控えにある数量と、役が精算した数量がっていない。
差額は戸につき数リットル程度で、町全体でも事件とは言えないかもしれない。しかし分をすと、かなりの額になった。実際に運んだ量がないのに、役の帳簿では満量を納めたことになっている。片桐の親族が経営する燃料に、差額が支払われていた。
澄子は話交換の仕事で、のに灯油を待つ々から何度も苦を聞いていた。は遅れていると言い、役は配達済みと言い、のは缶の底を叩いていた。困っているの声がそれぞれ別々に届くことに耐えられず、澄子は控えを集め、区ごとに照していたのだ。
勤務簿の最の頁には、《清の名を使った受領印が件。
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本はその区へっていない》とある。枝は息を止めた。清は保線の仕事をしていたが、だけ燃料の配送を伝うことがあった。偽装のために父の名が使われたのか、それとも父がを受け取っていたのか。
その夕方、父は枝を台所へ呼び、押し入れから黄い灯油缶の古い蓋をした。裏に巻かれた布をほどくと、母の字でかれた領収控えが見えた。
「澄子が消えた翌朝、話線のそばに落ちていた。見なかったことにすれば、うちだけは無事でいられるとった」
蓋のには、父の偽の受領印よりさらに危険な記録があった。灯油を届けたはずの軒のうち、軒は配達より週に空きになっていた。そこへ毎、同じ量が届けられたことになっている。
しかも、その空きの所は、母が消えた夜に目撃されたバス待所の裏だった。
初の証言を聞いた翌、枝はに残るの轍が、どれほどく形を保つか戸田に尋ねた。戸田はその週の気を古い作業誌から調べてくれた。澄子が消えた夜のは細かく、夜けには止んでいた。昼にもう度ったため、初が朝に見た轍は、そのの午には確かに消えたはずだった。
片桐は当、町のが自分のを見たと言われても、燃料の配送業務だと説できた。
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枝は、のを母の失踪と直結させるのを避けた。だが運表の両番号と初が覚えていた荷台の覆いは致する。目を決めつけずに確認できることを増やすと、母がどう移したかを考える範囲は狭くなった。
空きの裏には、昔の納を壊した跡があった。枝は町内会の古い図に納が載っているのを見つけ、そこから待所までのを歩いた。なら分だが、夜のでは元が見えない。マフラーと靴をそこへ置いたは、吹ので流れ着いたのではなく、形をっていて、見つけてもらう所を選んだようにえた。
母が偽装したのだとすれば、自分の取りを隠し、族へ連絡しなかった理由を考えなければならない。片桐が置いたのだとすれば、なぜ濡れていない品を数にしたのか。枝はどちらもノートの端にき、証拠の欄には入れなかった。初にも、見たのはの跡であって物ではないと、録音を確認してもらった。
その夜、清は娘が持ち帰った町内会の図を見て、母のマフラーの柄を覚えているかと尋ねた。紺に細い赤の線が入っていた、と枝は答えた。父は「あれは母さんが自分で編んだ」と言った。編み目の部を失敗してほどき直した跡があり、似たマフラーと取り違えることはない。
なくとも待所に置かれた品は澄子自の物だった。
清はそこまで話して、当の自分が見つかったマフラーをどう扱ったかを初めてにした。
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