"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第10話
枝は謝したが、そのでの族が仲直りしたような言葉はかけなかった。の沈黙を、週の決断だけで軽くしたくなかった。
清はボタンの型を見て、当駅構内で貨物を扱っていた職員の制だと言った。保線員の作業着にはボタンがなく、父がらない男が澄子を迎えに来たことは確かだった。清は堵したように見え、すぐにその顔を恥じた。
当の駅には、貨物担当として町の青、片桐俊がいた。片桐の弟で、歳。兄の燃料の配送も休に伝い、空きへ運ばれた灯油の受領印を清の名で押していた。俊はその、貨物取扱いの縮に伴い仙台へ転勤し、平成元に病気でくなっていた。
俊の妻だった美鈴を訪ねると、彼女は夫の勤め先の写真を差しした。澄子が消えた直、俊はい休暇を取り、形へ何度も向いている。美鈴は夫の浮気を疑い、問い詰めたことがあったという。
「夫は、逃げている女性を助けていると言った。詳しく聞くと兄が困るから、らないほうがいいと。でもになって、兄の正を隠すために見張っていたんだと分かった」
俊は澄子が聞社へ送った資料を取り戻せと兄に命じられていた。しかし彼は、兄の正をっていながら署名まで偽造した自分にも責任があるとじ、澄子から資料を奪えなかった。
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代わりに、澄子へ本物の配達簿が保管されている所を教えたらしい。
美鈴は夫の遺品からさな鍵を取りした。駅の荷物預かり所の鍵で、属札に番号が刻まれている。預かり所はとうに廃止され、鍵は使えないはずだった。だが俊は最期まで捨てなかった。
枝は旧駅舎へき、駅に事を話した。荷物の保管記録は廃棄されたが、貨物の棚板の裏から、番号の刻まれた箱が見つかった。鍵はわず、業者にけてもらうと、には昭49の配達簿と数枚の領収控えが入っていた。
配達簿には、清の名で押された印が件ある。しかし圧と位置が揃いすぎている。俊は同じ印判を使って度に処理したのだ。さらに、空きを含む軒分の燃料が別の倉庫へ運ばれていた記録があり、片桐兄弟が町から受け取ったの流れまで追える。
枝は資料を警察へ渡した。古い正のくはもう刑事事件として扱えないと言われたが、澄子の失踪に関わる記録として保全してもらえた。それに町の広報誌と聞へ調査結果を示せば、母について流れた噂を訂正できる。
ただ、配達簿の巻末には、俊が別の跡でいたい文があった。《澄子さんはへ。戻るなら自分の志で》。そのには、のの列の発刻が記されている。
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母は方をくらませたのではなく、誰かに見送られ、町をれていた。
幸の兄がむ田へ向かう、枝は良太へ母の葉の写真を送った。弟は《歳になったら帰る》という文面を読み、誕に何をしていたかいした。父が仕事から戻るのを待ち、姉が作った焼きうどんをべた夜である。母が来るかもしれないとっていたら、で何も待っただろう。らなかったからこそ、弟はしずつ次のへめたのだとも言った。
枝はそれを母が来なかったことへの許しとは受け取らなかった。帰るつもりだった期があっても、来られなかった理由を告げずに何も過ごした責任は母自にある。母を探すほど昔の母へ親しみが戻る瞬もあるが、その親しみで弟の寂しさを測ってはいけない。
幸は、澄子が宿で過ごした最の朝、戻るべきを図へ丸で囲んだと話した。片桐が見つけてもすぐ入れないよう、列を本乗り継ぐ回りのを考えたのである。澄子は清に連絡したかった。しかし話線を切られたあとでは、どの呼びしも片桐にられるかもしれないと警戒していた。
それでも族へ無事をらせる別の方法はあったはずだ、と枝はった。幸へ尋ねると、澄子は度、名をかない葉を娘宛てにしかけた。
しかし文字を見た清が差を悟り、届けに来た片桐側のにも所をられるかもしれない、と考えて破いたという。
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