"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第12話
彼女はに田の縫製へ移り、いまはさな直しのを営んでいた。枝が訪ねると、幸は澄子をっていた。「あのは私の代わりにを隠したの」と言った。
幸は燃料を配達する季節労働者の妹だった。兄は片桐の正をって賃を請求したあと、急に仕事を辞めさせられていた。幸は兄を助けるため、配達簿の写しを澄子へ渡した。そのことで片桐に目を付けられ、澄子が庄の宿で幸として泊まるあいだ、幸は別の町にを隠した。
「澄子さんは証拠を運べば、それで帰ると言っていた。子どもがいるから、くいられないって。でも帰るに、もうつ確かめたいことがあると」
幸が渡したのは、澄子がいたりきだった。《空きの軒だけじゃない。話を頼んだの声も記録する》。枝にはが分からなかった。幸によると、澄子は灯油のを訴える集落のが、役へ話しようとすると途で接続を切られたことを疑っていた。誰が、いつ、なぜ話を止めたのか。交換台の記録を照らせば、正の隠蔽が証できると考えた。
その記録は、母が失踪した夜に持ちした茶い封筒に入っていた。燃料の帳簿だけでなく、苦を届けられなかった々の伝言もあったはずだ。封筒はまだ見つかっていない。
幸は続けて、昭50の、澄子から通の葉を受け取ったと話した。
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所はかれず、消印は田のさな町だった。裏には《枝が歳になったらへ戻る》と記されていた。枝の歳の誕は、翌のだった。
母は町へ戻るつもりでいた。そのに何が起きたのか、枝は初めて、失踪が度ではなかったことをった。
清が母から話を受けたは、計簿の片隅に《距話》とだけかれていた。父はほどその頁をけず、やがて次のの支へ移った。枝は、母の声を聞いた父がで何をしていたかいそうとした。の夕に珍しく饅を買ってきたがあり、父はべずに炬燵の端へ置いたままにしていた。あれが同じかどうかはもう分からない。
枝は父へ、話で母の居所を聞いたか尋ねた。清は、聞かなかったと答えた。澄子が自分から名乗ったので驚き、子どもが元気かと問われたとき、素直に「会いたがっている」と言えなかった。自分がかけて母は族を捨てたと教えてきた、その言葉をひっくり返す勇気がなかったのだ。
「母さんが悪いと教えたままにしたかったの」
「おたちから、なぜ先に父さんが止めなかったのかと聞かれるのが怖かった」
枝は父が自分のさを認めても、すぐに楽にはならなかった。清に殴られたり事を与えられなかったりしたわけではない。
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夜勤けでも学事へ来て、良太の靴を直してくれた父だった。その父が、娘にいちばんりたかった母の消息を隠した。同じのに優しさと卑怯さがあるからこそ、単純な断罪で終わらせられなかった。
翌、良太にも父の告を伝えた。弟はく黙り、「父さんに話すのは俺が帰ってからでいい」と言った。姉が代わりにることも、父を慰めることも求めない。枝は話を切り、父と弟が自分たちの言葉で話すを待つことにした。
病院の元同僚に、母のいたが通も残っていないか尋ねると、事務の引きしに《発送せず》と記した封筒があったという。病院を移った際に澄子が忘れたもので、同僚は差の名を見て元で保管していた。封はいていない。枝は受け取ってもすぐにはかず、母が自分に届けなかった文章を読むべきか考えた。
部へ戻り、付だけ確かめると、封筒は母が清へ話をかけた週にかれていた。枝は封を切り、便箋を枚した。そこには母が見た灯油の正より先に、良太の靴がさくなったか、枝の級が決まったか、といった常がいてある。最に《お父さんはあなたたちを守ってくれる。でも、私が帰らない理由を代わりに説させてはいけない》とあった。
その文を読んだとき、枝は母に苛った。
説を父へ任せたくないなら、自分が直接話せばよかった。
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