"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第13話
便箋をしまい、しばらく窓のを見た。くの病院を仕事に選び、子どもの名を文字にしても、所をいた封筒を投函する勇気がなかった。そのさをったことで、母が気にくなるわけでもなかった。
しかし母が澄子であることを疑う必はなくなった。便箋には、枝が苦な体操のび箱と、良太が何度も壊したとんぼの話があった。聞にも相談員の記録にも載っていない、族だけのだ。枝は良太へのことを伝え、読みたいかどうかを聞いた。弟は数考え、《今は姉さんが持っていて》と返した。
幸が残した葉を見せてもらうと、枝は消印の付を何度も確かめた。母が町へ戻るつもりだったなら、その直にきな来事があったはずだ。葉の末尾には《今はがない》とあり、で聞いた母の癖をいした。母はの量でを決め、が通れれば会いに来られると考えていたのだろう。
幸は、澄子から届いた葉を捨てずにいた理由を話した。最初は、自分が巻き込んだために澄子が族とれたと負い目をじたから。次第に、自分まで葉をなくせば澄子の帰りを示す物がつ消えるようにえたからだという。それでも所をっていたのに枝へらせなかったことを謝った。
枝は謝罪を急いで受け取らなかった。
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幸は母の居所をる唯のではなく、途から連絡も絶えていた。何もかもの作為に集めれば、父が話を切ったのことも、母がを破ったのことも曖昧になる。枝が欲しいのは責める相ではなく、なった選択の順番だった。
町の図館へ戻ると、良太から伝言があった。清が庭のを掘り返しているという。枝は胸騒ぎがしたが、ってみると父は母の古い郵便受けを取り付け直していた。加入権を放した、母からが来るかもしれないと枝が毎朝覗いた箱である。父は傷んだ蝶番を直しながら、「何か届いていたら、俺が先に見ない」と言った。
「今なら遅すぎるよ」
「そうだな」
清は取り繕わなかった。枝も、それ以父を追い詰めなかった。遅すぎると伝えることと、残りのにも黙るよう命じることは違う。父が今さら何を変えられるか、彼自に考えさせようとった。
田の消印の町には、澄子がほど働いた病院の洗濯があった。当の同僚だった女性は、澄子が夜勤の護婦たちの制を繕い、休みのには族へすはずのをいていたと語った。ただしは投函されず、引きしに溜まっていった。
「帰れば片桐さんがまた族を責める、と言っていたの。証拠が聞に載るまでは帰れないって。
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でも事件の記事はなかった。自分で告発すればいいのにと私はったけど、名をしたらお子さんたちに何が起こるか、彼女には分からなかった」
昭50の、澄子は町へ帰る決をした。ところが、故郷から届いた聞に《佐藤の子ら、母に捨てられて》というさな記事が載った。枝たちの写真はなくても、町の噂がそのまま文章になっていた。澄子は記事を読んで丸寝込み、族が自分をどうっているか確かめようと話をかけた。
その話を受けたのは清だった。話線はすでに直っており、庭の加入権を解約するだった。澄子が名乗ると、清は「いま帰られても子どもたちがまた傷つく」と言った。母は、枝が話したがっているか尋ねた。清は、娘は母の名もさないと答えた。
枝は話を受けた記憶がない。母の名をさなかったのは、父がるからだった。清の言葉は嘘とも言い切れず、それだけに残酷だった。澄子はを全部破り、に仕事を辞めて別の町へ移った。
「そのあとも、戻る会はあったはずです」
枝が言うと、同僚は頷いた。澄子自も、そう分かっていただろう。危険がるを待っているうちに、子どもへ会うことのほうが怖くなった。母としてどう説するか答えを持てないまま、が、になったのだ。
だが、澄子はずっと田にいたわけではない。
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