"結婚翌朝の平手打ちと専務剥奪" 第17話
義姉の弓は、自分にのがりかかるのを恐れ、こっそりと広から逃げそうとしていた。
しかし、そのきを義父が見逃すはずはなかった。
「弓、どこへく?」
弓はち止まる。
「え? あ、あの、私は関係ないし、そろそろ帰ろうかと……」
義父が鋭く問い詰める。
「関係ないだと?」
義父は弓も共犯だと見なしていた。
「おも美咲さんを嘲笑い、彼女の尊厳を踏みにじっただろうが」
弓の顔からさっと血の気が引いた。
「おも同罪だ」
義父は弓にも罰を与える。
「今、黒崎の敷居を跨ぐことは切許さない。おが料亭から受け取っていた役員報酬も、全て今限りで打ち切る」
弓が慌てて抗議する。
「そんな、お義父さん! それはあんまりです! 私はただ、お義母様の話にわせていただけなのに……」
義父はたく切り捨てる。
「の命を脅かす為に同調したのだ。言い訳無用だ」
弓はそのに座り込み、両で顔を覆って泣きした。
親族たちはその凄惨な景をにして、誰として志や母娘を助けようとはしなかった。
それどころか、親族の老である叔父がたく言い放った。
「正郎の言う通りだ」
叔父は志たちを見ろす。
「志、おたちはとんでもないことをしてくれたな」
叔父はさらに続ける。
「もし美咲さんが卓を止めていなければ、おは親殺しになっていたんだぞ。
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そんな恐ろしい男に黒崎の会社を任せるわけにはいかん」
志がすがるように叫ぶ。
「叔父さん! 昨までは俺のことを派な跡継ぎだと褒めてくれていたじゃないか!」
叔父はたく顔を背けた。
「それはおがまともなだとっていたからだ」
叔父は絶縁を宣言する。
「だが、自分が番偉いと勘違いし、嫁を殴るような男とは、々も縁を切りたいくらいだ。くぞ、皆」
叔父の言葉を図に、親族たちは斉にちがった。
に広からていく。
誰も志に声をかけない。
かよや弓に同する者もいない。
権力と体裁で繋がっていた関係など、いざとなればこれほどまでにもろいものなのだ。
に残されたのは、完全に全てを失っただけだった。
志は、畳のにこぼれたままのたい噌汁と、割れた茶碗の破片を見つめた。
今朝まで彼には美しい妻がいた。
輝かしい未来があった。
親族からの尊敬を集めていた。
しかし、その全ては彼自が振りげた平打ちによって、々に砕け散ったのだ。
志が嗚咽を漏らす。
「俺は……俺はただ、このを守りたかっただけなのに……」
志は両で顔を覆った。
だが、その涙は誰の胸にも響かなかった。
彼らが失ったのは、肩きや財産だけではない。
あの朝壊れたのは、器ではなくとしての命への敬だったのだから。
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あの朝から3ヶのが流れた。
「美咲さん、今のご飯もとっても美しかったわ」
入居者のさち子さんが、私のを握りながら満面の笑みで言ってくれた。
「あなたが見てくれるようになってから、体調もすごく良いのよ」
るい差しが差し込む介護施設の堂。
私はから微笑み返した。
「ありがとうございます」
私は空になった器を、丁寧にお盆へげた。
私は今、管理栄養士として齢者向けの事支援をう施設で働いている。
の持病や体調、噛む力にわせて献を作る。
には直接ベッドサイドへって、事の様子を確認する。
命に関わる責任のい仕事だが、そこには確かなやりがいと敬があった。
『事はの命を預かるもの』
幼い頃に祖母から教わったその言葉を胸に。
私は今、自分を尊してくれる所で、本当に必としてくれるたちのために力を使っている。
誰かに従するためではなく、誰かにきて笑顔になってもらうために。
方、私を放した黒崎の々は、かつての栄から完全に転げ落ちていた。
系列ホテルの暗い倉庫。
現の主任が志を鳴りつけている。
「おい志! いつまで休んでるんだ! 次の荷物をくこっちへ運べ!」
かつては級スーツを着こなし、専務としてふんぞり返っていた志。
彼は今、汗と埃にまみれた作業着姿で鳴られていた。
彼を鳴りつけているのは、志よりも10歳以も若い現の主任だ。
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