"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第3話
美代子の顔が、りで赤く染まる。
「じゃあこの勘定を、どうするの」
私は親族全員を見渡した。
「幹事は浩司でしょう。誰が負担する予定だったのか、皆さんで確認してください」
個のが、を打ったように静まり返った。
先ほどまで嫌でい本酒を頼んでいた親戚の叔父が、気まずそうに咳払いをする。
叔父は探るように浩司を見た。
「いや、俺たちは浩司に招待された側とってたぞ。還暦祝いをやるからって」
義妹の苗も、慌てて頷く。
「私も。お兄ちゃんが幹事だから、お兄ちゃんが仕切ってるんだとってた」
親族の線が、斉に浩司へ集まる。
浩司は助けを求めるように美代子を見た。
だが美代子もまた、困惑していた。
「私は浩司に任せたのよ」
浩司は裏返った声をした。
「そうしたらお」
美代子は親族の、自分に責任が及ぶのを避けるように声を張った。
「エミさんがいつも払うから、丈夫って言ったでしょう」
その瞬、私は夫をじっと見た。
浩司は私と目がうと、バツが悪そうに線をそらした。
苗が信じられないという顔で、夫を問い詰める。
「お兄ちゃん、それ本当?本当にお兄ちゃんが、エミさんが払うから丈夫って言ったの?」
浩司はしばらく沈黙した、蚊の鳴くような声で絞りした。
「言った」
そこで初めて、私は全てを理解した。
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舅や義母だけが勝に、嫁が払うものとい込んでいたわけではない。
夫自が、嫁が払うと自分の親に約束していたのだ。
だから誰も、誰が払うと聞かなかった。
会計について考える必すらないとっていたのだ。
私の稼いだおは、夫の見栄のために勝に、田からのもてなしとして使われるはずになっていた。
腹の底から、たいりが湧きがってくる。
だが私は鳴らない。
ここでになれば、私がこのを壊した悪者にされる。
私はあくまで事務に、夫へ告げた。
「じゃあ今は、浩司が責任を持って払って」
浩司は元の伝票を見つめ、青ざめた顔で呟く。
「18万は払えない」
私が首をかしげると、親族たちのややかな線が夫に突き刺さった。
ここで払えないと言えば、夫の面目は丸つぶれになる。
私は無表で夫を見た。
「払えるけど?じゃあには問題ないね」
私はそれ以、言葉を発しなかった。
浩司は震えるで自分の財布をき、クレジットカードを取りした。
員がすかさず端末を差しす。
暗証番号を打ち込む浩司の指先は、ひどく張っていた。
会計完。
誰もに迷惑はかけない。
そして私の財布からも、1円も当なおはていかない。
帰り際。
駐のたいので、親族たちはそそくさとに乗り込んでいった。
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誰も浩司へ、ご馳様とは言わなかった。
気まずさが充満する、美代子がに私にづいてきた。
その顔には、隠しきれない苛ちが浮かんでいる。
彼女は周囲を気にするように声を潜めながらも、私への非難をにする。
「還暦祝いなのに恥をかかされたわ」
私はのドアにをかけたまま、振り返った。
「お義母さん、何がですか?恥をかいた理由は、私が払わなかったからですか?」
美代子は即座に、のまま言い放った。
「そうよ。あなたがいつも通り払っていれば、あんな空気には」
そこまで言って、美代子は自分自の言葉の異常さに気づいたのか、ぴたりとをつぐんだ。
私は静かに、最のとどめを刺した。
「だったら最初から、私のおが祝いの提だったんですね」
私は義母の目を見据えた。
「それは私のおがないと成りたないお祝いなら、それは誰からの還暦祝いだったんでしょうか」
美代子は何も返せなかった。
りに震える唇を噛み締めながら、ただち尽くしている。
私はくをげて、助席に乗り込んだ。
運転席では、18万円の費に顔を青ざめさせた夫が、ハンドルを握りしめていた。
が発しても、夫婦のに会話はない。
ただ暗い内に、エンジン音だけが響いていた。
帰宅。
リビングのソファに倒れ込むように座った浩司が、ネクタイを乱暴に引き抜きながらをいた。
「今のやり方はないだろう」
その声には疲労、私に対するみがましさが混じっていた。
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