"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第10話
浩司は5かけて築いた虚栄のメッキが剥がれ落ちる痛みを、今まさにわっているのだ。
でも私はテーブル越しに、浩司の目をまっすぐに見つめた。
「私には、今のあなたの方がずっと頼りになるように見えるよ」
浩司がハッと顔をげた。
「ええ?」
私は優しく言葉をかけた。
「自分の非を認めて、親戚のでちゃんと見栄を捨てられた」
私は微笑みながら言う。
「私のおじゃなくて、自分のでとうとしてる」
私は品の腕計を丁寧に箱へしまいながら、彼に微笑みかけた。
「フリマの品、私が全部やってあげる」
私はパソコンの方を指差した。
「売は全部あなたの座に入るように設定するから」
浩司の目元が、しだけ赤くなったように見えた。
彼は何度も頷いた。
「ありがとう」
さな声で言った。
私はこの数週で、最の堵をじていた。
夫はただられて怯えているだけではない。
自分のおで責任を持つというとして当然のルールを、痛みを伴いながらも確実に受け入れ始めている。
親族からの評価はがったかもしれない。
しかし私からの評価は、結婚して以来番まともな方向へ向かっていた。
もちろんこれで、田の問題が全て解決したわけではない。
叔父から親戚に、浩司のところは嫁が財布の紐を固く締めたらしいという噂が広まるのは避けられないだろう。
広告
舅や姑にも、その話は必ずに入る。
だがもう恐れることはない。
私たち夫婦のにもう嘘はないのだから。
例え周囲からたい目だと言われようと、真実の境界線を引いたこのしい常を、私は何があっても守り抜くつもりだった。
夕の最、夫の浩司が箸を止めて苦しい声で切りした。
「お袋から、また連絡があったんだ」
先、叔父からの築の棟式で幹事をしてくれという依頼を断ってから、数が過ぎていた。
浩司の顔には、はっきりとした疲労が浮かんでいる。
私が尋ねる。
「また叔父さんの件?」
浩司は々しく頷いた。
「俺たちが棟式にかないなら、せめてお祝いとして5万円包めって」
私はし驚いて額を復唱した。
「5万円?」
従兄弟の築祝いとしては、相よりらかにい。
通常は1万円からくても3万円だ。
浩司は困惑した表で続ける。
「お袋、もうおじさんに浩司から5万包ませるからって、約束しちゃったらしいんだよ」
その言葉に私は、持っていた箸を静かに箸置きへ戻した。
お義母さんは先、喫茶で私に謝罪した。
嫁が払うものだとい込んでいた、悪かったと。
確かにその通り、彼女は私の個な財布を直接当てにすることはやめたようだ。
しかし彼女のにある見栄という病魔は、そう簡単に治るものではなかった。
広告
息子が幹事を断り、親戚のでケチになった、がないらしいと囁かれるのが耐えられないのだろう。
だから相よりい5万円という額を勝に約束して、息子の体面、つまりは自分の体面を保とうとしたのだ。
私の問いに、浩司は答える。
「それであなたはどう答えたの?」
浩司はしだけ胸を張って答えた。
「俺の遣いにはそんな余裕はないって、断った」
私は頷く。
「そう」
私は続きを促した。
「それで?」
浩司は気まずそうに言った。
「そうしたら、個の遣いじゃなくて夫婦の活費からしなさいって言われた」
彼はため息をつく。
「計からなら、5万円くらいせるでしょうって」
私はく息を吐いた。
お義母さんは相変わらず、境界線を越えてくる。
今度は私の個の財布ではなく、夫婦の共財産を自分の見栄のためにコントロールしようとしているのだ。
だが番なのはそこではない。
浩司がその理尽な求にどう対応するかだ。
私が試すように聞く。
「あなたはどうしたいの?」
浩司は腕を組んで悩む素振りを見せた。
「正直、5万円はいとう」
彼はを掻く。
「でもお袋が、もうおじさんに言っちゃってる。ここで5万円贈らないと、で何を言われるか」
私が指摘する。
「おじさんから、お義母さんは嘘つきだとわれるのが怖いのね」
浩司はバツが悪そうに線をそらした。
「まあ、そうだな」
私はちがり、器を片付けながら告げた。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 625 -
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 286 -
完結第11話
豪邸を奪う義母と一枚の公正証書
「今日から同居ね。この一番大きな部屋でいいわよ」 庭付き一戸建てを購入した翌朝、引っ越し業者を引き連れた元義母が土足で新居に乗り込んできた。 中卒の元専業主婦と見下され、「不倫女」と理不尽に罵倒されるユイ。だが義母は知らなかった。その家はユイが自力で買い取ったもので、夫とは半年前に離婚済みだったことを。 「慰謝料代わりにこの家を寄越しなさい!」 逆上する義母の前に、ユイは一枚の「公正証書」を突きつける。 ある「不審なメモ」から暴かれた、夫と実の妹によるおぞましい裏切りとは――。 「この名前、誰だか分かりますか?」嫁姑|修羅場1.6万字5 229 -
完結第24話
銀2両で売られた盲目の花嫁
不作の年、盲目の竜児は、弟の嫁取り資金を欲しがる継母によって、恐ろしいと噂される山の猟師・陸炎山へ半ば売られるように嫁がされる。 ところが待っていたのは暴力ではなく、彼女を娘のように迎える姑と、「安心して暮らせるまで絶対に触れない」と約束する不器用で優しい夫だった。 薬屋で働いた経験を持つ竜児は、失明していても薬草を見分ける知識を生かし、炎山の狩りと力を合わせて貧しい一家の暮らしを立て直していく。 やがて名医から「治療できる可能性がある」と告げられ、失っていた視力にも希望が差し始める。 しかし陸家が豊かになるほど、金を狙う継母や炎山の過去に関わる女まで現れ、竜児の新しい家族と幸せを脅かし始める――。嫁姑|親子関係3.5万字5 369 -
完結第19話
私のカードを盗んだ義母が、夫の隠し口座で120万円使った
姑・幸子が私のバッグからカードを盗んだ――。3年間、都心のマンションを買うために食費まで切り詰めてきた絵里は、その瞬間をホームカメラで確認していた。 だが直後、夫・博之の書斎から1200万円もの秘密口座が発覚する。毎月「金がない」と言って生活費を5万円しか渡さなかった夫が、妻に隠れて巨額の財産を抱えていたのだ。 絵里は姑の盗癖を逆手に取り、彼女が再び持ち出すカードに夫の秘密を仕込む。何も知らない幸子は沖縄の免税店で85万円のバッグや高級品を買い込み、合計120万円を一括決済。 その通知を見た博之は凍りつく。妻を節約生活に縛りながら隠してきた財産と、母親の身勝手な浪費――。2人が互いを責め始めた時、絵里は静かに次の証拠を取り出す――。嫁姑2.9万字5 416 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3190 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 704 -
完結第15話
元義母の誤爆着信と暴かれた花婿の嘘
モラハラと不倫を重ねた夫・裕二と離婚し、独身としての平穏な生活を取り戻してちょうど一年が経ったある休日の朝。主人公・マナのスマートフォンに、元義母・文から突如「結婚式になぜ来ないの! 早く来ないと離婚させるわよ!」と怒鳴りつける狂気の電話が入る。 「私はもう独身ですが」と告げるも、来なければ自宅や職場に押しかけると脅され、指定された高級シティホテルの式場へ向かうマナ。黒留袖姿で激怒する文は、新郎となった息子の晴れ舞台を元嫁が邪魔しに来たとロビーで激しく罵倒し、白タキシード姿の元夫も腕力で追い出そうと詰め寄る。 だが、文のスマートフォンの発信履歴を確認させた瞬間、事態は暗転。人身事故で遅延していた本当の新婦「まみ」が泥だらけのパンプスで駆けつけた時、元夫が隠し続けていた致命的な大嘘が白日の下に晒される――。嫁姑|修羅場2.5万字5 364 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第20話
偽りの仕送りと緑の通帳
専業主婦の佐藤真美は、長年にわたり傲慢な義母・君代から「無収入の居候」と見下され続けてきた。夫の減給により進学を断念し、誇りを持って介護職に就いた二十歳の娘・奈々までも、義母は「高卒の無能な孫」と親戚の前で嘲笑する。さらに君代は「長男の嫁・恭子を見習い、毎月十五万円を仕送りしろ」と理不尽な要求を突きつけてきた。耐えかねた真美が恭子に相談すると、長男一家の仕送りに隠された信じがたい事実が判明する。義母の言う通り「見習う」ことを決意した真美は、夫の浩一を巻き込み、スマートフォンに収めたATMの振込画面の写真と、タンスの上の空の茶封筒を使ったある計画を仕掛ける。だが、疑念を深めた義母が「緑の銀行通帳」を差し出し、記帳を命じたことで事態は急転する――。嫁姑|真相3.0万字5 735