"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第17話
「親父はもう来るなって言ってたけど」
彼はし考えるように言う。
「苗が声をかけてきたってことは、親父も孫の顔は見たがってるんだろうな」
義父はプライドがい。
自分から来いとは言えないから、苗ちゃんを通して様子を伺ってきたに違いない。
私が問う。
「あなたはきたいの?」
浩司は私の目をまっすぐに見た。
「きたくないわけじゃない」
彼は真剣な顔で言う。
「でも、くなら条件がある」
浩司は決を込めて言った。
「うやむやにして、元の関係に戻るような真似は絶対にしない」
私はさく頷いた。
浩司は再びスマートフォンをに取り、文字を打ち始めた。
送信するに、その画面を私の方へ向ける。
「誕会やろう。はこっちで探す。14500円。父さんの分は俺と苗でします。参加できるだけ返信してください」
それは私が彼に求めた、これからのこと。
ルールそのものだった。
いつものようにという曖昧な言葉を排除し、事に額と負担を確にする。
私のおに依せず、自分と妹の財布で父親を祝うという宣言だ。
浩司が確認する。
「これでいいか?」
私が同する。
「うん。完璧だとう」
浩司は迷うことなく、送信ボタンを押した。
数分、リビングには奇妙な緊張が漂った。
参加できるだけ返信してくださいという突き放した文面に対し、義父が激する能性は分にある。
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親に向かって会費とは何事だと、再び話がかかってくるかもしれない。
だが15分。
最初に既読をつけ返信をしてきたのは、姑の美代子だった。
「解」
い言。
文句も条件への反発もない。
続いて苗ちゃんからも、解とスタンプが送られてきた。
私は自分のスマートフォンをに取り、キーボードを叩いた。
「参加します」
それだけ。
誰も義父の嫌を伺うようない文章はかなかった。
これで約束は成したのだ。
3週。
内のし落ち着いたファミリー向けのレストラン。
集まったのは義父、姑、浩司、私、そして苗ちゃん夫婦と2の子供。
計8。
5から続いていた親族数の宴会に比べれば、ずっと規模で静かな集まりだった。
私たちが席に着くと、義父はし気まずそうに咳払いをした。
「おお、来たか」
私が普段通りに挨拶する。
「お父さん、お誕おめでとうございます」
義父はく頷き、線をそらした。
「ああ」
姑の美代子も、私の顔をまともに見ようとはしなかった。
美代子は表面な言葉を交わす。
「エミさん寒かったでしょう」
あの決裂のから、空気にはまだはっきりとしたトゲとしこりが残っている。
しかし事が始まると、そのトゲはしずつ丸みを帯びていった。
苗ちゃんの子供たちが、無邪気にきの絵を渡す。
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「おじいちゃん、おめでとう」
義父の顔から険しさが消えた。
「おう、ありがとうな」
目尻をげて笑う義父の姿は、見栄を張る田のではなく、ただの普通のおじいちゃんだった。
テーブルには14500円の定が並ぶ。
以の還暦祝いのように、姑が慮しないでと勝に追加注文を連発するようなことはない。
子供たちがジュースをおかわりするも、苗ちゃんの夫が員にしっかりと伝えていた。
「すみません。こっちの伝票に追加でお願いします」
誰もの財布を自分のもののように扱うはいない。
それが本来の族の姿なのだ。
2が過ぎ、事が終わりにづいただった。
員が黒いバインダーに挟まれた伝票を持って、テーブルへやってきた。
かつてならここで、最も空気が淀んだ。
姑が員へ、嫁に渡してと顎で指示し、親族全員がそれを見て見ぬふりをする瞬だ。
今。
員は伝票を、幹事である浩司の横へそっと置いた。
緊張がる。
姑の美代子が無識に、伝票の方へ線を向けたのが分かった。
浩司は誰の顔も見ることなく、ごく自然な作で伝票をに取った。
「よし、じゃあ会計するぞ。は14500円」
浩司は自分の財布から、自分の分の現を取りした。
浩司は私に声をかける。
「エミ、4500円」
私が答える。
「はい」
私は用していた5000円札を浩司へ渡した。
「500円のお釣り頂戴」
苗ちゃんが言う。
「そっちはうち。子供の分と追加のジュースがあるから」
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