"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第18話
苗ちゃん夫婦も、自分たちの分をきっちりと浩司へ渡す。
「はい、1万円」
そして浩司は苗ちゃんを見た。
「親父の分は、俺たち2で半分ずつだったよな」
苗ちゃんは頷く。
「うん。2250円ずつだね」
浩司が確認する。
「はい。サンキュー」
浩司が尋ねる。
「母さんは自分の分、あるか?」
美代子はハッとしたように瞬きをした。
「いえ、あ、あるわよ。私だってそれくらい」
美代子は慌てて自分のハンドバッグから財布を取りし、1000円札を5枚数えて浩司へ渡した。
誰も私へ伝票を回さない。
誰も私の財布を見つめない。
それぞれが自分のみいした分を、自分の責任で支払う。
ただそれだけのごく当たりの景が、そこにあった。
浩司がおと伝票を持って席をつ。
「よし、ちょうどだな。ちょっとレジってくる」
そのろ姿を見送りながら、義父のしのぶがぽつりと呟いた。
「ごちそうさん」
誰に向けたわけでもない、さな声だった。
だがその言葉には、今までのような奢られて当然という傲さはなかった。
浩司と苗ちゃんという自分たちの子供からのプレゼントとして、素直に受け取った証拠だった。
私はお茶をみ、息を吐いた。
そのに線をじて顔をげる。
向かいの席で、姑の美代子が私を見ていた。
目がう。
美代子のが微かにいた。
瞬彼女の目に、5染みついた以の癖が宿ったのが分かった。
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何かを言いかける。
エミさんがいつも。
その言葉が、喉までかかっているのが見えた。
無識の反射だ。
財布をいた嫁に対して、無慮な求や確認をしてしまう。
かつての支配者の顔。
しかし次の瞬、美代子は自分で自分にブレーキをかけるようにく唇を噛んだ。
そしてしだけ戸惑ったような、探るような声で言った。
「エミさん、自分の分は払ったのよね?」
私はく、静かに答えた。
「はい」
浩司に4500円を渡し、お釣りをもらうのを彼女自も見ていたはずだ。
それでも確認せずにはいられなかったのだろう。
私の返事を聞いて、美代子はふっと肩の力を抜いた。
「分かった」
それだけだった。
嫌みも追加の求もない。
ただの事実確認として、彼女はその言葉をみ込んだのだ。
私は元に残った500円玉を見つめた。
は急には完璧にはならない。
かけて培われた虚栄や依は、脳の奥くにこびりついている。
ふとした瞬に、古い習慣が顔をすこともあるだろう。
でもその度にこうして、自分で自分を止めることができればいい。
先に確認することが、の財布を勝に当てにしないことが。
しずつこの田ので、普通になっていく。
をると、はたいのが吹いていた。
義父がく言う。
「じゃあ、またな」
義父が美代子と共に歩きす。
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浩司はそれを見送りながら、私の隣できく背伸びをした。
「ああ。ったった」
彼は満げに笑う。
「なんか今の飯は、今までで番が分かった気がするよ」
私は笑いながら彼の腕に軽く触れた。
「そうね」
18万円の伝票が引き起こした嵐は、確かにくのものを壊した。
しかし焼け野原になったには、通しの良い対等な関係だけが残ったのだ。
私たちはもう、誰かの見栄のために怯える必はない。
自分のでち、自分のおで笑うことができる。
澄んだの夜空を見げながら、私は確かな堵と共にへの帰途に就いた。
12の半ば。
夕の鍋をつきながら、夫の浩司が唐突に言った。
「今は、本での正集まりにはかないから」
カレンダーはもうすぐ末を迎えようとしている。
例であればこの期は、田にとって最も慌ただしく、そして最も費の嵩む季節だった。
お正には叔父がを務める本へ、親族同が集まるのがならわしだ。
3万円の豪華なおせち、2万円のタラバガニ。
何箱ものビールと本酒。
それらを浩司たちからの差し入れとして配し、支払いをしてきたのは全て私だった。
さらに叔父の孫たちへのお玉までわせれば、正のたった1で10万円以が消えていた。
その支払いの全てがなくなった今、私たちの末は嘘のように静かだった。
私が尋ねる。
「かないって、あなたから断ったの?」
浩司は自嘲気にで笑った。
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