"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第19話
「いいや。おじさんの方から回しに来るなって言われたんだ」
浩司の話によれば、昨義妹の苗ちゃんから連絡があったという。
ことの発端は、叔父から義実の舅にかかってきた1本の話だった。
叔父は舅に対してこう言ったそうだ。
「浩司も遣いが厳しくて変みたいだな」
叔父はさらに続ける。
「の集まりに来るとなれば、産やお玉の負担もバカにならないだろう。エミさんも財布の紐がいようだし、今は無理せず入らずで過ごしなさい」
見事なまでの無礼な拒絶だった。
表向きはおがない甥夫婦への配慮を装っている。
しかしその実態は、をさないなら親戚の集まりに顔をす資格はないという酷な通告だ。
私は元の鳥肉に線を落とした。
私が尋ねる。
「お義母さん、なんて言ってたの?」
浩司は淡々と語った。
「泣いてたらしいよ。親戚に恥をかかされたって」
彼はため息をつく。
「親父も激だ。おがしょうもない見栄を張るから本からこんな嫌を言われるんだって、母さんに当たり散らしたらしい」
義父のしのぶも、結局は自分のメンツしか見えていない。
私が全額を負担していたは、よくできた嫁だと嫌でみいしていたくせに。
資源が断たれ本から遇された途端、全ての責任を姑1に押し付けているのだ。
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浩司は呆れたように言う。
「苗も呆れてたよ。誰も自分のことは棚にげて、のせいにしてるって」
浩司は鍋の肉をに運び、く息を吐いた。
「でもこれで良かったんだ」
彼は力く言う。
「10万円払って親戚の嫌を取るくらいなら、で寝てた方がマシだ」
その言葉にはがりではない、確かな実がこもっていた。
その週末。
私たちはお歳暮を届けるために、義実を訪れた。
持参したのは3000円のハムの詰めわせだ。
以のように見栄を張って1万円の級牛やメロンを持っていくことは、もうしない。
の丈にあった、計に無理のないごく般な贈り物。
それが私たちがしく引いた境界線だった。
玄関のドアをけると、のはひどく静まり返っていた。
の温度がいのか、それとも空気がいせいか、肌寒さすらじる。
リビングに入ると義父はこたつに入ったまま、無表でテレビを見ていた。
浩司がハムの箱をテーブルに置く。
「お邪魔します。これお歳暮です」
義父はチラリと見て答える。
「ああ」
とく唸っただけだ。
こちらを見ようともしない。
本から突き放され、親戚のでのを失ったりと屈辱をまだ引きずっているのがありありと分かった。
姑の美代子がキッチンから力ない声でてきた。
「いらっしゃい。お茶を入れるわね」
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その姿を見て、私はしだけ驚いた。
先レストランの誕会で会ったよりも、さらにさく老け込んだように見えたからだ。
肩は丸まり、歩く取りもい。
還暦祝いの席で、今は祝いなんだから慮しないでと親族を取り仕切っていたあの活力に満ちた姿は、どこにもなかった。
私がコートを脱いでキッチンへ向かう。
「お義母さん、私も伝います」
美代子は止めようとはしなかった。
「ありがとう」
さな声で呟き、湯呑みを戸棚からす。
キッチンの奥。
換気扇のい音が響く、私たちは並んでお茶の準備をした。
美代子はお湯を沸かしながら、ぽつりとをいた。
「おじさんから、お正の集まりは来なくていいって言われたのよ」
私に報告するというよりは、自分のの虚しさを吐きしているような響きだった。
私が静かに答える。
「伺っています。浩司から聞きました」
美代子は急須に茶葉を入れながら、自嘲するように笑った。
「私ね、ずっとってたのよ」
美代子のが止まる。
「兄や親戚の皆は、私のことを頼りにしてくれてるって」
彼女は呟く。
「気のいい妹だって、目置いてくれてるって」
彼女の線は虚空を彷徨っていた。
「でも、違ったのね」
私は黙って美代子の次の言葉を待った。
慰めることもしないし、否定もしない。
ただ彼女が自分自で見つけた答えを聞き届ける。
美代子は震えるで急須の蓋を閉めた。
「皆がちやほやしてくれたのは、私じゃなかった」
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