"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第21話
美代子はさく頷いた。
美代子が息子の顔を見げた。
「浩司。お正、無理して顔をさなくていいからね」
彼女は優しく言う。
「あなたたちは、あなたたちのでゆっくり過ごしなさい」
それは彼女がとしての最のプライドを捨てて、息子夫婦の平穏を願った言葉だった。
浩司はしだけ驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな表に戻った。
「分かった。母さんたちもゆっくり休んでくれ」
をて、駐へ向かう。
たい12のが、コートの襟元をすり抜けていった。
のエンジンをかけながら、浩司がぽつりと呟いた。
「母さん、なんかさくなったな」
私が答える。
「そうね。お義父さんは相変わらずだけど」
浩司はを見つめる。
「母さんはもう、見栄を張る気力もないみたいだ」
浩司の言葉に、私は静かに頷いた。
見栄という鎧を取られた姑は、ただの孤独でい1の女性になっていた。
だがそれは決して悪いことではないと私はっている。
偽りの尊敬をで買うのをやめたから、本当の関係が始まるからだ。
浩司がを向いたまま、るい声で提案した。
「今はでカニでも鍋にしてべるか。俺の遣いからスーパーで買ってくるよ」
2万円のタラバガニではなく、数千円のズワイガニだろう。
でもその方がずっと美しいに違いない。
私が微笑む。
広告
「いいわね。私はおせちの具材をしだけ買ってくる。2でべきれる量だけ」
浩司は笑った。
「よし、決まりだ」
がりす。
田の暗くい歴史が1つ終わり、私たち夫婦のしく軽な越しがづいていた。
がけ、お正がやってきた。
結婚して12目で初めて、私たちは義実にも親戚の集まりにもかない3を過ごした。
晦の夜。
浩司がスーパーで買ってきたズワイガニを2で鍋にした。
浩司はポン酢の皿を持ちながら、底嬉しそうに笑っていた。
「あの2万円のタラバガニよりが詰まっててうまいな」
私が作ったしばかりのおせち料理をつまみ、テレビを見ながらお酒をむ。
誰の嫌も取らなくていい。
誰の財布の配もしなくていい。
ただの夫婦の、ごく普通の穏やかなお正だった。
しかしその平穏は、くは続かなかった。
12の午3。
リビングで録画していたお笑い番組を見ていると、浩司のスマートフォンがけたたましく鳴った。
画面には実の文字。
浩司はし顔をしかめ、テレビの音量をげて通話ボタンを押した。
「もしもし」
話の向こうから響いたのは、義父のしのぶの鳴り声だった。
「浩司か。今すぐエミさんを連れてこっちへ来い!」
スピーカーモードにしなくても、私のまではっきりと届くほどの音量だ。
広告
浩司が言い返す。
「急にどうしたんだよ。正は来なくていいって言ったのはそっちだろう」
義父がまくしてる。
「状況が変わったんだ。いいからすぐ来い」
義父はさらに求した。
「エミさんに10万円用させろ」
その言葉がた瞬、浩司の顔からすっと血の気が引いた。
「10万って何のおだよ」
義父は鳴る。
「本のおじさんのところへ謝罪にくためのだ」
義父の言葉に、私はわずため息をつきそうになった。
義父が理由を並べる。
「正の集まりに俺たちが顔をさなかったことで、本の連がり狂っているんだ」
彼はりをぶちまける。
「築祝いのことも含めて、俺の顔にを塗りやがって」
義父の論理は完全に破綻していた。
自分たちから来なくていいと言っておきながら、本から遇されるとそれを私たちのせいにしているのだ。
義父は傲に言い放つ。
「俺はこれから本にをげにく。おたちも来い」
そして、信じられないことをにした。
「エミさんが10万包んで、私が計を握ってし渋っていましたと謝れば、丸く収まる」
つまり義父は、自分のメンツを保つために私を悪者にしようとしているのだ。
嫁が勝におを隠していたせいで、自分たちも被害者なのだと本にアピールし、私のおで親戚の嫌を買おうという魂胆だ。
浩司がスマートフォンに向かって声を荒げた。
「ふざけるな!」
彼は激する。
「エミを代わりにして、自分の顔をてようっていうのか」
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
顔合わせのすっぽかしと五通の裏切り
精密機械加工会社の令嬢・紗栄は、誠実に見えた恋人・弘樹と婚約を結ぶ。しかし両家顔合わせの直前から弘樹はモラハラを連発し横柄な態度へと急変。迎えた顔合わせの当日、高級料亭へ向かわず自室に留まる紗栄のもとへ、弘樹から「遅刻するな、調子に乗るな!」と激しい怒声が届く。 その瞬間、横にいた紗栄の父が電話を奪い取り一喝。「とぼけても無駄だ。お前の身辺調査は済んでいる」。 机の上に叩きつけられた興信所の分厚い茶封筒と、弘樹が抱える「5人の愛人」の証拠写真。怒り狂った弘樹が両親を連れて実家へ殴り込んできた時、彼らがひた隠しにしてきた信じがたい搾取の手口が暴かれ――。嫁姑|裡の顔2.7万字5 1 -
完結第19話
結婚翌朝の平手打ちと専務剥奪
「嫁のくせに初日から遅刻か」――結婚翌朝、老舗料亭グループ専務の夫・高志は、親族の前で私・美咲の頬を平手打ちした。私は管理栄養士として、持病を抱える義父・正一郎のために朝食を作り直し、配膳が5分遅れただけだった。しかも義母・かよが“嫁の腕試し”に使わせた古い調味料は、義父の薬と危険な組み合わせになるもの。誰も信じようとしない中、私は義父の御膳をひっくり返し、「命を粗末にするよりはマシです」と言い切る。すると駆け込んできた料理長・佐木が私を“白川先生”と呼び、封印されていた試作品の危険性を証言。父で食品衛生の専門家・白川敬吾からも緊急の電話が入り、食卓の空気は一変する。それでも母をかばい、私を嘘つき扱いする高志。だが義父が「彼女は私の命を救った」と頭を下げた瞬間、黒崎家が守ってきた序列は崩れ始める――。嫁姑2.8万字5 92 -
完結第25話
父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導
父の葬儀を終えて帰宅した私・水希を待っていたのは、夫・高志から突きつけられた離婚届だった。「底辺の血筋」「寄生虫」と亡き父まで侮辱した彼は、次期社長の座を手に入れるため、社長令嬢リナとの再婚を宣言し、10年間尽くした私を無一文同然で家から追い出す。絶望の中、私に残されたのは、父が最期に託した錆びたブリキ箱だけ。その届け先を頼りに東北へ向かうと、辿り着いたのは巨大企業・暁グループの総本部だった。しかも父の名を告げた瞬間、黒服の社員たちが一斉に頭を下げる。父は本当に貧しい町工場の職人だったのか――。やがて私は、父が残した“力”と、高志の会社を巡る不穏な事実を知る。もう泣いて耐えるだけの妻ではない。自分を捨てた男が次期社長の座を確信して総本部へ乗り込む日、私は静かに反撃の舞台を整え始める。嫁姑3.8万字5 237 -
完結第12話
午前五時の朝餉
母・加奈子を理不尽に追い出して七日目の朝。二重ロックで施錠されたはずの台所で、炊飯器のランプが黄色く灯っていた。「保温:28分」。蓋を開けると、湯気を立てる筍ご飯と、包丁立てから消えた一番重い三徳包丁。電源を抜いても、暗証番号を変えても、毎朝午前五時に届き続ける温かい米。やがて米の底から現れた“ある金属片”を境に、父と祖母の顔から血の気が引いていく。母はどこから入り、この家で何を見つめているのか。因果応報|嫁姑|真実|修羅場1.8万字5 857 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 12