みかん小説
本棚

"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第24話

彼女は続ける。

「自分の欄だけ記入してテーブルのに置いて、そのまま」

私は静かにお茶をんだ。

あの、姑が宣言した言葉は決してそのの脅しではなかったのだ。

浩司が聞く。

「今、母さんはどこにいるんだ?苗のところか?」

苗ちゃんは首を振る。

「ううん。最初はうちに来たんだけど、旦もいるし気を使うからって」

苗ちゃんはバッグから1枚のメモ用を取りし、テーブルに置いた。

「隣町の、具付きのマンスリーマンションを借りたみたい」

浩司はメモにかれた所を見て絶句した。

60歳を過ぎた専業主婦がたった1し、部を借りる。

それがいかにきな覚悟を伴うか、私たちには痛いほど分かった。

苗ちゃんは配そうに眉を潜めた。

「お母さん、パートの貯しだけあったから当面はそれで凌ぐって」

彼女は続ける。

分割の続きとか、財産分与のこととか。役所の無料相談窓に予約を入れたらしいの」

彼女は真剣に言う。

「本気で婚する気だよ」

本の法律では、婚姻期に築いた財産は原則として半分ずつ分けられる。

も同様だ。

義父は俺の稼いだと言っていたかもしれないが、法律は姑にも正当な権利がある。

姑はの見栄と従の代償として、ついに自分の権利を使する決を固めたのだ。

広告

浩司が尋ねる。

「親父はどうしてるんだ?」

苗ちゃんは皮肉っぽく笑った。

「それがね。最初はお母さんがすぐに泣きついて戻ってくるとって、がってたみたい」

浩司が聞き返す。

「みたいって」

苗ちゃんは信じられないものを見たという顔をした。

「今、様子を見に実ってきたの」

彼女は呆れて言う。

ゴミだらけ。流しには器が積みで、洗濯物もカゴから溢れてた」

彼女はため息をつく。

「お父さん、カップラーメンすすりながらテレビ見てたよ」

義父は事の切を姑に任せきりだった。

掃除の使い方も、洗濯の回し方もらない。

苗ちゃんが振り返る。

「私が片付けようとしたら、放っておけ。あいつがげて戻ってくるまででもこのままでいるって鳴るのよ」

義父の虚勢は、もはや滑稽なほどだった。

自分からは絶対に折れない。

妻が謝罪して戻ってくるというシナリオを、まだ信じて疑わないのだ。

苗ちゃんは浩司を見る。

「お兄ちゃん、お父さんから連絡あった?」

浩司は首を振る。

「いや、正以来1度も。分お兄ちゃんにもを張ってるんだとう」

苗ちゃんはく息を吐き、がった。

「本から見放されたに妻に逃げられたなんて、プライドがすぎるお父さんには耐えられない現実だから」

彼女は帰る準備をする。

広告

「お母さんの所、応伝えておくね。私はお母さんの決めたことを応援するつもり」

浩司はメモ用を見つめながら静かに頷いた。

「わかった」

苗ちゃんが帰り、リビングには私と浩司の2が残された。

浩司は信じられないというように呟いた。

「まさか、本当にるとはな」

私が言う。

「お義母さんも1だったってことよ」

浩司が顔をげた。

私は続ける。

「夫の顔をてるための便利な具じゃない。見栄のために使い捨てられるのは、もう限界だったのよ」

浩司は黙って私の言葉を受け止めた。

彼自もかつては、私を見栄のための財布として扱っていた。

だからこそ、義父の愚かさと姑の痛みが痛烈に理解できたのだろう。

それから3

事態は、義父の限界からした。

の準備をしていると、浩司のスマートフォンが鳴った。

画面には実の文字。

浩司は私と目をわせ、ボタンを押してスピーカーモードにした。

「もしもし。浩司か」

義父の声は以のような張りや威圧が完全に消せていた。

かすれ、ひどく老け込んだような々しい声だ。

探るような問いかけが来る。

「どうしたお?美代子の居所をっているか?」

浩司は瞬だけ沈黙した。

「ああ、ってるよ」

話の向こうで、義父がきく息を吐く音が聞こえた。

「そうか。迎えにってやってくれ」

私はを疑った。

義父が勝なことを言う。

「あいつ、もう2週を空けている。そろそろやした頃だろう。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: