"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第28話
「用が済んだなら、さっさと帰れ」
浩司は無言で類をクリアファイルにしまい、バッグに入れた。
浩司が私に言う。
「母さんの荷物を頼む」
私が頷く。
「うん」
私はリビングをて、2階にある姑の寝へと向かった。
寝は1階の惨状とは対照に、驚くほど綺麗に片付いていた。
ベッドのシーツはされ、化粧台のには何も残っていない。
クローゼットに残されていた数着のコートと、本棚の隅にあった数冊の古いアルバム。
姑はをるに、自分の痕跡をほとんど消していたのだ。
それが彼女の、このに対する未練のなさを示していた。
私は用してきたダンボールにコートとアルバムを詰め、ガムテープで封をした箱を持ちげて1階へりる。
リビングでは義父が相変わらず背を向けたまま、つけっぱなしのテレビをぼんやりと眺めていた。
浩司が私のからダンボールを受け取る。
浩司が背越しに声をかけた。
「じゃあな、親父」
義父は返事をしなかった。
私たちはそのまま玄関へ向かい、靴を履いた。
ドアをけると、たく澄んだ2の空気が顔に当たった。
のの淀んだ臭いが瞬で浄化されていくような気がした。
に乗り込み、ダンボールを部座席に置く。
浩司がエンジンをかけると、静かなモーター音が内に響いた。
浩司がフロントガラス越しに義実を見げながら呟いた。
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「終わったな」
私が答える。
「ええ」
浩司は物憂げに言う。
「親父、が売れるまであそこに1でむのか。ゴミ敷のまま」
私が静に答える。
「私たちがしすることじゃないわ。お義父さんが自分で蒔いた種」
浩司はさく頷いた。
「そうだな。俺たちが同してを貸せば、また元の関係に戻るだけだ」
がゆっくりとりす。
バックミラーに映る義実の姿が、しずつさくなっていく。
私は部座席に置かれた姑のダンボール箱を振り返った。
この箱をしい所へ送れば、姑の過の精算も完全に終わる。
苦しかった田の因習は、こうして物理にも法にもバラバラに解体されたのだ。
私がるい声で提案する。
「帰りに、美しいコーヒーでもんでいかない?」
浩司はし驚いた顔をして、それから柔らかく笑った。
「いいね。今は俺の遣いから奢るよ」
私が慮する。
「無理しなくていいわよ。自分の分は自分で払うから」
浩司は笑いながら言う。
「たまにはかっこつけさせてくれよ。見栄じゃなくて純粋な謝としてさ」
私たちは笑いいながら、のるい差しのをで駆け抜けていった。
肩の荷がりたという表現ではりない。
まるでい背負わされていたの借からようやく解放されたような、圧倒な自由をじていた。
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桜が葉桜へと変わる4の終わり。
築30になる義実のフェンスに、売約済みという産会社の板がくくりつけられていた。
は売りにしてから2ヶであっさりと買いがつき、取り壊されてしい建売り宅になることが決まった。
今はその引き渡しだ。
私と夫の浩司は、義父のしのぶが最に残した荷物を運びすため、レンタカーの軽トラックでやってきた。
すでに具やの半ばは処分業者に引き取られ、のはがらんどうになっている。
私たちが歩くたび、スリッパの音がフローリングに虚しく反響した。
浩司が空っぽになったリビングの真んで声をかけた。
「親父、忘れ物はないな」
窓際に置かれた2つのダンボール箱の横で、義父はぽつんとち尽くしていた。
として君臨していた男の姿はここになく、ただの背を丸めた老が1いるだけだった。
義父の声は暗い部に吸い込まれるようにさかった。
「ああ、全部まとめた」
自分のプライドの象徴だったを放す現実が、ようやく骨の髄まで染み込んできたのだろう。
義父はふと、壁にうっすらと残るカレンダーの跡を見つめた。
義父がみ言のように呟く。
「結局おじさんからは話1本なかったな」
彼は嘆く。
「俺がを売ってアパートに引っ越すってまでしたのに。
30も付きってきた親戚がなもんだ」
私は無言で元のダンボール箱を持ちげた。
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