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"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第29話

義父はまだのせいにしている。

親戚がなのではない。

義父の関係が見栄とおだけで繋がっていただけなのだ。

を失い、財産を半分に減らし、もてなす余裕もなくなった。

義父にはもう親戚からの用はない。

浩司は義父の愚痴には瞥もせず、残りの箱を抱えげた。

くぞ、親父」

玄関をて、鍵を閉める。

その鍵をの担当者に渡した瞬、田の本を気取っていた1つの歴史が完全に幕をろした。

義父のしいまいは、駅からバスで20分ほどの所にある、築古の賃貸アパートだった。

取りは2DK。

1暮らしには分な広さだが、かつての戸建てに比べれば圧倒に狭く暗い。

浩司と緒にダンボールを部へ運び入れると、義父は古びた畳のにへたり込んだ。

「お茶もないが、まあ座れ」

浩司は玄関にったままたく言い放った。

「いいよ。レンタカーを返しにかなきゃならないから」

浩司は事実だけを告げる。

「親父の座にの売却代の半分が振り込まれてるはずだ。わせれば、贅沢しなければ1きていける」

義父はすがるような目で息子を見げた。

「お盆には帰ってくるんだろう」

それはかつてのとしての命令ではなく、孤独な老の懇願だった。

浩司はしだけ線を落とし、静かに答えた。

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「無理だ。俺もエミもまとまった休みは自分たちのために使うって決めてるから」

義父は力なく呟く。

「そうか」

浩司はそれ以言葉をかけず、私を促してドアを閉めた。

「じゃあな。体に気をつけて」

錆びた鉄のドアが閉まる鈍い音が、義父とのに引かれた最の決定な境界線だった。

軽トラックの助席に乗り込むと、私はさく息を吐いた。

「あんなにたく突き放して、これでいいんだね」

浩司はハンドルを握りながらを向いて答えた。

しでもけをかければ、親父はまた俺たちに依しようとする。俺はもう親父のサンドバッグにも、見栄のための財布にもならない」

その横顔には、かつてのような迷いや親へのな罪悪はなかった。

自分で決断し、自分のに責任を持つの男の顔だった。

翌週の

私たちは隣町にあるファミリーレストランで、姑の美代子と待ちわせをしていた。

財産分与と分割の続きが全て完し、その報告を受けるためだ。

に入ると、窓際の席で美代子がすでに待っていた。

美代子が軽くを挙げる。

「浩司さん、こっちよ」

その姿を見て、私はしだけ驚いた。

の美代子は親族の集まりの度に派なブラウスや価なアクセサリーをにつけ、隙のない装いをしていた。

しかし今の彼女はユニクロのシンプルなニットに化粧という、ごく自然なちだった。

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それでも顔は義実にいた頃よりもずっとるく、肌には気が満ちている。

私たちが向かいの席に座る。

「お待たせしました」

美代子はバッグから茶い封筒を取りし、テーブルに置いた。

「これ、続きの完のコピー。の売却代の半分、750万円も無事に私の座に入ったわ」

浩司が類に目を通し、堵の息をつく。

「そうか。これで段落だな」

私が尋ねる。

「そのお、どうするの?」

美代子は静かに微笑んだ。

をつけないわ。定期預に入れて、老のための最の砦にするの」

浩司が配そうに聞く。

活費は丈夫なのか?」

美代子は誇らしげに胸を張った。

「実はね、所のクリーニングでパートを始めたのよ」

私は驚いて声をげた。

「パートを?」

美代子は頷く。

「ええ。週に4、受付の仕事。いけど、1分の賃と費くらいは自分で稼げるわ」

私はわず目を見いた。

60歳を過ぎてずっと専業主婦だったが、全くしい環境で働き始める。

それは決して簡単なことではない。

美代子はし照れくさそうに笑った。

「最初はレジの打ち方も分からなくて、若いさんにられてばかりだったわ」

彼女はれやかな顔で言う。

「でもね、自分が働いて自分でお料をもらうって、すごく気持ちがいいの。誰の顔も伺わなくていいし、嘘をつかなくてもいい」

その言葉には確かな実がこもっていた。

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