"顔合わせのすっぽかしと五通の裏切り" 第6話
だが、堪えきれずにさくため息をつくと、苦笑いを浮かべながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「……ちょっとね、弘の様子が、なんだかおかしくてね。両の顔わせの予定が決まってから、しずつ態度が変わっていったのよ」
私がそう打ちけると、父の眉の皺が層くなり、険しい表を浮かべた。 私は慌てて、自分自に言い聞かせるように言葉を継いだ。
「でも、きっと今だけだとうの。仕事で何かきなプレッシャーやストレスを抱えているのかもしれないし……。いつか結婚の続きが落ち着けば、きっと元の優しい弘に戻ってくれるとうから」
こう言えば、父もしはしてくれるだろう――そう願っていた。 だが、経験の豊富な経営者である父の目は、私の甘い見通しを許さなかった。
「……今からそんな調子で、本当に丈夫なのか?」 父は静かに、だがみのある声で尋ねた。 「態度が変わった原因は、何なんだ」
「それが……分からないのよ。弘に聞いても、何も教えてくれないし、私のせいじゃないって言うし……」 私は首を傾げながら、すがるようないで父に答えた。 「でも、もしかしたら……弘は私に対してを許して、したからこそ、取り繕わない素の自分をさらけせるようになったのかも……」
それは、そうあってほしいという私のしい願望に過ぎなかった。
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父は私のその言葉を聞き、らかに納得のいかない様子で、厳しい調で言葉をねた。
「弘君の素が分かったことで悩んでいるなら、そんな男と結婚するのはあまりに危険じゃないのか?」
父のからびした、確な結婚への反対発言。 私はわず息を呑み、目を見いた。 のどこかでは父の言う通りかもしれないと分かっていながらも、以育んできたと、「彼を信じたい」という執着が、私に素直に父の言葉を受け入れさせることを拒ませた。
「お父さんは、配しすぎよ! さっきも言ったけど、こんなのなものだとうから!」
私が声を尖らせて言い返しても、父は歩も引かなかった。むしろ、い危をわにして、普段は見せないような声を張りげた。
「紗栄、し静になって考えてみろ! おは――騙されてるぞ!」
『騙されてる』――。 その決定な言が、私の胸にく突き刺さった。 自分の選んだ最のを、そして彼を選んだ自分自の目を、真っ向から全否定されたようにじてしまったのだ。の箍がれ、私は激しいりに任せてちがった。
「騙されてるって、どういうことよ!? 弘のことを何もらないくせに、勝な言いがかりをつけないで!」
私は父の痛切な差しを振り切り、まだ何かを言い募ろうとする父を完全に無して、音を荒てながら階の自へと駆けがり、ドアを乱暴に閉めて鍵をかけた。
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ベッドに倒れ込み、シーツを握りしめる。 胸のは、りと、それ以にきなモヤモヤとしたでぐちゃぐちゃになっていた。 (お父さんは、いつも静沈着ななのに……どうしてあんなに取り乱して、酷いことを言ったんだろう……)
父がただの論でを否定するようなではないことは、娘である私が番よくっていた。 だとしたら、父には何か根拠があるのだろうか。 もう度、落ち着いて父と話をしなければならない――ではそう理解していた。 だが、父のから「弘の決定な欠点」を聞かされるのが怖くてたまらなかった。もし本当に弘が私を裏切っていたらどうしようという恐怖が先ち、結局、私は父と顔をわせることを避け続けた。
そして、何の解決もみないまま、運命の両顔わせの当の朝を迎えてしまったのである。
顔わせ当の朝。 部のカーテンをけると、空は皮肉なほどに青く澄み渡っていた。 私は鏡のに座り、淡い桜の訪問着に袖を通し、髪を丁寧に結いげていた。
父の言っていた穏な言葉が、絶えなくの片隅をよぎる。 けれど、今こので嫌な顔やな表を見せれば、弘や、はるばる来てくださる弘のご両親に対しても失礼に当たる。 (とにかく、今は今の顔わせを無事に成功させることが最優先よ……)
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