"顔合わせのすっぽかしと五通の裏切り" 第7話
そう自分に言い聞かせ、帯の結び目をえていた、まさにそのだった。
コンコン、と控えめなノックの音が部に響いた。 「……紗栄、ちょっといいか?」
ドアの隙から顔を覗かせたのは、スーツを着込んだ父だった。その表は、昨までのりは消え失せ、痛ましいほどの沈痛なに染まっていた。 私は帯留めに伸ばしていたを止め、気まずさを隠せないままさく返事をした。
「……うん。お父さん、どうしたの?」
父は部へ入ってくると、度喉を鳴らすようにさく咳払いをした。そして、私のにつと、くをげたのだ。
「このは、悪かったな。……おのことが配だったとはいえ、ごなしにキツい言い方をしてしまった」
威厳ある父が、娘に対して々とをげて謝罪してくれた。その誠実な姿に、私の頑なだったもほどけていった。
「ううん……私の方こそ、お父さんが配してくれてたのは分かってたのに、になってごめんなさい。……でも、お父さん。どうしてあの、あんなことを言ったの?」
ようやく、私は喉元につかえていた疑問をにすることができた。 父は顔をげ、苦渋に満ちた表で線を宙に彷徨わせた。
「……顔わせの取りが決まる、おが嬉しそうに、弘君の写真や画をスマートフォンで見せてくれたことがあっただろう」
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「ええ、覚えてるわ」
「実はな……正直に言うと、俺はあのから、彼に対して言葉にできない違と、いを覚えていたんだ」 父は眉にい皺を刻みながら、静かに語り始めた。 「あいつの目の奥に宿る軽さ、につけている装飾品の派さ、そして何より、おので見せる過剰なまでの甘ったるい笑顔。……、企業の経営者として無数のと対峙し、腹黒い詐欺師や背任者を見てきた俺の直が、あの男は危険だと警鐘を鳴らしていたんだ」
「え……?」
「おには本当に申し訳ないとったが……俺は独自の判断で、興信所に依頼して弘君の本格な辺調査をったんだ。……そうしたら、とんでもない事実が次々とるみにたんだよ」
「とんでもない事実……?」
私の臓が、嫌な音をてて激しく脈打ち始めた。 父は持参していた黒い革のブリーフケースのファスナーをけると、から分い茶封筒を取りし、私の目ののデスクのに置いた。 封筒からはみしていたのは、何枚にも及ぶ鮮な写真の束だった。
「これを見たら、俺の言っているがすべて分かるはずだ」
父に促され、私は震える指先でその写真の束をに取り、枚枚めくっていった。 そして――私の瞳にび込んできた景に、息が完全に止まった。
そこに写っていたのは、私がっている弘の姿ではなかった。
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級ホテルのラウンジで、見らぬ代半ばの女性の肩にを回し、蕩けるような笑顔を浮かべる弘。 タワーマンションのエントランスで、別の代とおぼしきキャリアウーマンの女性と腕を組み、親密そうに見つめってキスを交わしている弘。 級ブランドショップので、また別の女性に甘えるように寄り添い、価な腕計の包みを受け取って満面の笑みを浮かべる弘――。
写っている女性の顔は、やではなかった。 髪型も、齢も、雰囲気もまったく異なる、複数の女性たち。
「な……に、これ……? 嘘……嘘でしょ……!?」
指先から力が抜け、写真の束がパラパラとデスクのに散らばった。 あまりの衝撃と激痛に、私は両で元を激しく覆い、必に嗚咽を噛み殺した。そうしなければ、そので叫び声をげて泣き崩れてしまいそうだったからだ。
父は、震える私の肩にそっとを置き、痛切な声で語りかけた。
「調査結果によれば、弘君には、お以にの女性関係がある。しかも、ただの浮気ではない。彼は額の個な借を抱えており、の回りの良さそうな女性ばかりを狙って巧みに取り入り、価な品を貢がせたり、を無したりして、その返済に充てていたんだ」
を鈍器で殴られたような衝撃だった。 私に見せていたあの紳士な優しさも、誠実な差しも、すべては計算され尽くしたペテンの具に過ぎなかったのだ。
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