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"社長夫人と平社員の妻" 第7話

取り巻きのが、気まずそうに目を伏せ、スーッとずさりをした。 「あ、あの……私、夕飯の支度がありますので……」 「えっ?」 麗華が目を見く。 続いて、もうの妻も、麗華と線をわせないようにしながら、ペコペコと私に向かってさくげ、に距を取った。 「失礼いたします……」

「ちょ……ちょっと、あなたたち!? どこへくのよ!?」 麗華の制止の声も虚しく、蜘蛛の子を散らすように、かつての取り巻きたちが彼女の背かられていく。 誰も麗華を庇おうとしない。誰として、彼女のを取ろうとはしない。

「聞こえているんでしょ!? 待ちなさいって言ってるのよ!!」 夕暮れので、麗華の叫び声だけが虚しく霊した。

この女がこれまで握りしめていたもの――それは本格や能力による望などではなく、単に夫の肩きという、剥がれ落ちれば何つ残らないっぺらなに過ぎなかったのだ。

カチャリとの鍵がき、ランドセルを背負った子供たちが元気にしてきた。 「あ、お母さん!」 私の娘が笑顔で駆け寄ってくる。 私は娘のさなを優しく包み込み、度も振り返ることなく、そのを静かににした。 背からは、取り残された麗華の、途切れ途切れの荒い息遣いだけが漂っていた。

株主総会をに控えた夜。 私はダイニングテーブルので、弁護士と打ちわせた順が記された類を、丁寧に折りたたんでいた。

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ベランダへ続く網戸の向こうでは、夫がジョウロを持ち、娘と緒に育ててきた朝顔の鉢に、静かにを注いでいた。サワサワとを吸い込む清涼な音が、夜の静けさに溶けていく。 やりを終えて戻ってきた夫は、私の向かいの席に腰をろすと、淹れたての温かい緑茶の湯呑みを、私のにそっと差ししてくれた。

「……のこと、緊張してるか?」 「いいえ」 私は湯呑みを両で包み込んだ。じんわりとした陶器の温もりが、のひらを通して胸の奥へと広がっていく。 「緊張はしていないわ。ただ……ずっと迷っていたの。本当に、このが来て良かったのかどうかって」

夫は正面を向いたまま、自分の湯呑みの縁を親指の腹でゆっくりとなぞった。 「この会社は、私の父が代で築きげたものよ」 私の線は、テーブルの目へと注がれた。 「何もないさな町から始まって、げて、をすすりながら取引先を軒ずつ拓して……そうやってきくした会社だった」

「……ああ」 「あなたと結婚する、父は病で私のを握って、こう言ったわ。『遥、いずれおが継ぐことになる株のことは、絶対に表にすな。財産目当てのハイエナのようなが寄ってくるだけだ。おは、おしてくれると、慎ましくをつけてきなさい』って」

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「それで、おはずっと黙っていたんだな」 「ええ。だから私は、現で働くあなたの妻として、ただの平社員の妻として、何自由なく幸せに暮らしてきたの」

夫は静かに息を吐いた。 「先代がくなった、あの藤崎が社に選ばれるのも、止めようとえば止められたはずだったな」 「父のく専務を務めていただったから。取締役会でも異論はなかったし、私があので株の権利を振りかざして騒ぎてれば、社内が混乱するとったの。……あの、私がしていれば、こんなことにはならなかったのかもしれないけれど」

「先代がくなってから、正が見えてきても、おはすぐにはかなかった」 「ええ。あなたが現審な伝票に気づいてくれてからも……父が残した会社ので、騒ぎを起こすのが怖かったの。証拠が完全に固まるのを待っていたというだけじゃない。私ののどこかで、波てずに済むならその方がいいと、逃げていたのね」

夫は何も言わず、私の言葉にを傾けていた。 「でもね……あの婦会で、髪を掴まれて、膝をつかされて……あまつさえ、あなたと娘のことまで『惨めだ』と侮辱された、私、目が覚めたのよ」 湯呑みのの茶柱が、微かに揺れた。 「父が守りたかった会社を、あんな劣なたちの私利私欲の玩具にしていいはずがない。

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