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"社長夫人と平社員の妻" 第8話

守るために黙っているのと、悪事を見て見ぬふりをするのは、まったく違うことだわ」

夫は力く頷き、私の目を真っ直ぐに見つめ返した。 「先代の会社を守るのは、俺たちの役目だ。は、俺もずっとおの隣にいる」 「ありがとう。あなたがあの伝票の控えを命がけで集めてくれていなければ、私はただ、理尽に耐えるだけの無力な妻で終わっていたわ」

窓ので、夜がサッと吹き抜け、ベランダの朝顔の葉が微かに擦れった。 守るべきものの輪郭は、もう迷いようのないほどに澄み切っていた。 、すべてを終わらせる。

翌朝、本社の会議。 カーテンがけ放たれた窓からは涼な朝のが差し込み、磨きげられたテーブルが「コ」の字型に配置されていた。

窓側には、招集通を受け取って集まった株主たちと取締役たちの席が連なり、その央の最奥に、社である藤崎邦彦の席が用されている。 私は、着慣れたグレーのカーディガンにを包んだまま、夫の健、そして顧問弁護士を伴って、入い株主席に静かに腰をろした。

会議方に設けられた傍聴席には、役員たちの族や関係者が固唾を呑んで座っていた。議の特別な許を得たとして、麗華もまた、見った役員夫の隣に、さくなってを寄せていた。

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定刻の午。 議事をする社取締役が、起してマイクを取った。 「定刻となりましたので、臨株主総会を会いたします。本席株主は、議決権のある株式総数に対し、分に達しており、本総会は適法に成しております」

張り詰めた沈黙の、議の声が響く。 「議案第号、代表取締役社藤崎邦彦解任の件。……本件は、株主からの適法な招集請求に基づくものです」

正面の席で、邦彦がのように張った顔のまま、じろぎつせずに座っていた。 私は背筋をピンと伸ばし、線を逸らさなかった。 父が遺したこのを、これ以、あの者たちので汚させるわけにはいかない。

私の隣で、顧問弁護士が静かにがった。 「招集を請求された株主・遥氏は、当社発済株式の議決権の割を単独で保しておられます。解任を求める理由は、現社による会社資の悪質な私流用です。……皆様、お元の資料のページ目をおきください」

バサリ、と斉にをめくる音が会議に響いた。 配られた資料には、夫が現で命がけで収集した、付入りの正伝票の写しが、系列順に番号を振られて然と並んでいた。

正面の邦彦が、震えるで資料を掴み、掠れた声を絞りした。 「そ……その資料は、体どこから持ちされたものですか!? 社内密の正持ちしではないのか!」

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「すべて社内の正規伝票の写しです」弁護士が徹に遮った。「原本はいずれも経理部に保管されており、改ざん能な監査ログとも致しております」

弁護士は元の類を指先でトントンと叩いた。 「先代社がおくなりになってからのわずか半で、実態のない特定のペーパーカンパニー社に対する支払いが、急激に膨れがっております。納品の記録もなければ、現での作業実態もしません」

邦彦は額に脂汗を滲ませ、必に抗弁を試みた。 「そ、それは……規事業のげに向けた、正当なコンサルティング費用だ! 密保持契約があるため、面に残せない事もある!」 「では、その社について伺います」弁護士は容赦なく追及した。「こので、それらの会社が具体にどのような業務をっているのか、代表者の氏名と所をご説いただけますか?」 「そ、それは……これから登記をう予定の準備会社であって……!」 「法登記もせず、事務所の実態もない相に対し、なぜ総額千万円もの会社資払いで支払われているのですか? これは正当な商取引ではなく、増し請求による横領です」

役員のが、資料に引かれた赤ペンのラインを指でなぞり、息を呑んだ。 帳簿の数字と現の入庫記録のい違い。

そのすべてに、夫の几帳面な跡で細い注釈が添えられていた。

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