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"社長夫人と平社員の妻" 第9話

会議のあちこちから、いざわめきが波のように広がっていく。

「ま……待ってください! それは、私の経営判断の裁量の範囲内だ!」 「では、この取引先の座から、社ご自の個座へ資が還流している記録については、どうご説なさいますか?」 弁護士が、追撃の取引細を掲げた。

邦彦のが半きになり、次の言葉がてこない。 ツーと顎を伝った粒の汗が、マホガニーの机のにポタリと音をてて落ちた。

「……に、社からの弁はございますか?」 議が促したが、邦彦はただ首を垂れ、震えるだけだった。

「弁がないようですので、採決に移ります。議案第号、代表取締役社藤崎邦彦の解任に賛成の株主は、挙を願います」

私は、迷うことなく、く真っ直ぐに挙げた。 議が壇からそのを見据え、厳粛に告げる。 「遥株主、保比率〇パーセント。……この点で、すでに過半数を満たしております」

続いて、般株主たちや社取締役たちのが、次々と迷いなくがっていった。 「賛成、議決権の割。よって、議案第号は圧倒数をもって決されました。本付をもちまして、藤崎邦彦氏の代表取締役社職を解任いたします」

ガタッと音をてて、邦彦が子の背もたれに崩れ落ちた。魂を抜かれたように、井を仰ぎ見る。

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その瞬、傍聴席から鳴のような声ががった。

「待って……! これ、本当に決まりなの!? ねえ、嘘でしょう!?」 麗華ががり、隣の席の役員夫の肩を掴もうとを伸ばした。 「うちの主が社よ!? こんなの、何かの違いに決まっているじゃないの!!」

だが――を伸ばされた夫は、嫌悪わにしてを引くと、抱えていたバッグを引き寄せ、麗華から骨に体を背けた。 誰として、彼女に同の目を向ける者はいなかった。

あの、あの宴会で笑いばされた「解任」という言葉。 それが今、この会議で、徹な法続きのもとに完遂されたのだ。

隣で、夫が静かに、く息を吐きした。 私は机のの伝票の束を見つめた。 父の遺したは守った。だが――消えたを取り戻す戦いは、まだ終わっていなかった。

「閉会いたします」 議の声が響き、総会は幕を閉じた。 私は夫と弁護士と共に席をち、会議い扉を押しけて廊へとた。

い廊の窓から差し込むの陽が、ワックスで磨きげられたく伸びている。 背で、会議の扉が乱暴にけ放たれる音が響いた。 タッタッタッと、狂乱した音が背から猛烈な勢いで迫ってくる。

「――待ち伏せなさいよッ!!」

麗華だった。 乱れた取りで私たちのへ回り込み、両を広げてを塞ぐ。

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肩で激しく息を切らし、顔の化粧は涙と汗でドロドロに崩れていた。

「こんなの、絶対に認めないわよ!!」 麗華は持っていたバッグを胸に抱え直し、私に向かって切り声を張りげた。 「たかが株をたくさん持っているからって、よそのの主を勝に引きずりろして……! こんな横暴なやり方が、世で通用するとっているの!?」

に声を張りげているが、語尾が細かく震え、っている膝がガクガクと揺れているのが見て取れた。 「主はね、まだ社内にも業界にも顔が利くのよ! あなたたち夫婦が、これから先どんな恥ずかしい顔をしてこの会社にいられるか……私にだって考えがあるんだから!!」

の空気が瞬張り詰めたが、それは本当に瞬のことだった。 私は静かに歩み寄り、取り乱す麗華の目を真っ直ぐに見つめ返した。

「その旦様が解任されたのを、あなたも同じ部で、ご自分のでお聞きになったはずですが」 「き、聞いていたわよ! でも、あんなの……!」 「本付で解任、と議が宣告なさいました。社の席は、もう彼のものではありません」

「株なんて、ただの切れじゃないの!!」 麗華は逆し、爪をてた差し指を私の先に突きつけてきた。 「そんな切れ枚で、庭の暮らしをめちゃくちゃにしていいと、体誰が決めたのよ!?」

「暮らしを壊したのは、株ではありません」 私の声は、どこまでもたく、静かだった。 「実態のない幽霊会社へ、会社の資産を私利私欲で流させたこと。

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