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"社長夫人と平社員の妻" 第10話

それは先ほど、かぬ記録と伝票によって、完全に証されました。ご自の夫の犯罪が、あなたの暮らしを壊したのです」

「主がそんなことするはずがないでしょ!! 誰かが罠に嵌めて押し付けたのよ!!」 麗華は激しく肩をさせ、息を喘がせた。 「面だって、取りげてちょうだいとあれほどげて頼んだのに……あなたが悪く聞き入れないから、こんなことになったんじゃないの!!」

「取りげる理由が、どこにありましたか? 横領を見逃せと?」 「にでも、主が役員たち全員に話をつけて覆すわ!!」 「社内に顔が利くと言っても、もう彼には、指図を聞いてくれる部も、座るべき子もありません。……今ここであなたが何を喚き散らしても、された決定は何も変わりませんよ」

「そんな……! 私は、私はまだ社よ……!」

麗華のから零れ落ちたその言葉。 言った瞬、彼女自が、自らの元を抑えて絶句した。 『もう、自分は社ではない』という酷な現実に、彼女自が、ようやく追いついた瞬だった。

「――もう、そうではありません」

私が告げたその、会議の扉がき、類を抱えた役員や株主たちがゾロゾロと廊てきた。 廊ち尽くす麗華の姿を界に捉えながらも――誰として、彼女に声をかける者はいなかった。 皆、線を逸らし、関わりいを避けるようにして、に彼女の脇を通り過ぎていく。

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「ま……待って! ねえ、待ちなさいよ! 専務! 常務!」 麗華がすがるようにを伸ばしたが、役員たちは見向きもせず、コツコツと乾いた靴音を響かせてっていく。

その、すれ違いざまに、誰かがさくを鳴らして笑いを噛み殺す息が聞こえた。 ――あのの婦会で、私が髪を掴まれてに膝をつかされた、麗華の取り巻きたちが元を抑えててたのと、まったく同じ嘲笑の音だった。

今度はそのたい嘲笑が、麗華の背へとり注いでいる。 あのに膝をついたのは私だった。 けれど今、っていることすらできずに崩れ落ちそうになっているのは、この女の方だった。

夫が私のバッグを持ち替え、半歩がってそっと寄り添ってくれた。 「……遥、帰ろう。で、娘が待っている」 「ええ」

歩きした私の背で、麗華が力なく壁にをついた気配がした。 追いかけてくる音は、もう度と聞こえなかった。

株主総会での解任劇から、数が経過した。 私は株主として、事処理と体制への移に関する説を受けるため、再び本社の役員会議へとを運んでいた。

取締役をとした体制の役員たちが、いテーブルに然と着席している。 そして、その末席に――返還請求の相方として、憔悴しきった藤崎邦彦が呼びされていた。

ほんの数まで、彼が取締役会の頂点としてふんぞり返り、現の社員たちを見ろしていたその同じ部で、今度は彼が、全員からの徹な追及の線をに浴びる側に回っていた。

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顧問弁護士が、総会のよりもさらに分くなったファイルを、ドンと机のに置いた。 「先代がおくなりになってから解任に至るまでの、約半余りの詳細な監査結果です」 弁護士の声が、静まり返った内に響く。 「実態のないペーパーカンパニーへの架空発注、増し請求によるキックバック……会社から正に流させられた資の全容が、すべて確定いたしました。その総額は――およそ千万円にのぼります」

邦彦の肩がビクッとがった。 「よ……千万円……!? 馬鹿な、回あたりの額は、そんなではなかったはずだ!」 「ええ、回ごとの決済は、社内の監査の目を潜り抜けるよう、巧妙に百万円に分割されていましたからね」弁護士が徹に告げた。「それが、半で計件に及んでいます」

机の縁を掴む邦彦の指先が、見る見るうちにくなっていく。 「すべて、の送記録と現の資材管理データで裏付けが取れております」 「そ、それは……将来の事業拡に向けた、正当な経営判断の範囲内だ……!」 「法登記もなく、事務所もしない幽霊会社へ、個な判断で千万円もの会社資を流させた。……裁判所で、その弁が通用すると本気でおいですか?」

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