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"社長夫人と平社員の妻" 第11話

邦彦は脂汗を垂らし、目を伏せたまま完全に押し黙った。 体制の代表理事が、々しく宣告をした。 「取締役会は本付をもちまして、為に基づき、流用された資全額の返還を、藤崎邦彦氏個に対して正式に請求することを決議いたしました。指定期までに括での返還に応じられないは、直ちに背任および業務横領の容疑で、刑事告訴の続きへと移します」

「そ……そんな……! 全額返せというのか!? 破産してしまう!!」 邦彦の痛な叫びに対し、私は静かに線を向けた。 「父が軒、げて回り、社員たちと汗を流して積みげてきた会社の切な資です。らずのまま、うやむやに済ませることなど、絶対にできません」

父が遺した会社から奪われた血税に、ようやく正当な回収の筋がついた。 邦彦の肩が、糸の切れた形のように力なく崩れ落ちた。 私の名で提したあの枚の招集請求は、空威張りでも脅しでもなく、この正義の結末へとまっすぐに辿り着いたのだ。

役員たちが退し、部には私と、崩れ落ちた邦彦、そして弁護士のだけが残された。 弁護士は元のブリーフケースから、もう通のい封筒を取りし、邦彦の側からも読める向きで机のにスッと滑らせた。

「……会社の件とは別に、もう通、通をお送りいたします。

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宛名は――藤崎麗華さんです」 邦彦が弾かれたように顔をげた。 「内は……内は会社の経営には切関係ありません! なぜ内にまで……!」 「ええ、ですからこれは、会社の決議とはまったく別個の、個の法続きです」

弁護士は通の控えをめくり、淡々と読みげた。 「先の婦会の席において、貴殿の妻である藤崎麗華氏が、遥氏の部の髪を力任せに掴んで引きげ、公衆の面で『奴隷』と呼んで侮辱した件についてです。な暴罪および名誉毀損に該当する為として、慰謝料万円の支払いを正式に請求いたします」

「そ、そんな……! 勢のでのちょっとした諍いじゃないか! 証拠だって……!」 私は静かに顔をげ、邦彦の瞳を射抜いた。 「あのには、を超える幹部社員の妻たちの目がありました。すでに弁護士を通じて、席者の方々から当の詳細な証言録取を順次めております。誰として、否定する方はいらっしゃいませんでしたよ」

「ご……万くらいなら、私が今すぐにでも用てます! ですから、内のところへそんな面を送るのだけは……どうかご容赦を……!」 「どなたが費用を肩代わりされようと、為の主体である麗華さん宛ての通であることに変わりはありません」弁護士がきっぱりと言い放った。

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「あのさんに直接げ、尊厳を踏みにじったのは、奥様ご自なのですから」

机のに置かれた控えの宛名には、『藤崎麗華』の文字がくっきりと並んでいた。 髪を掴み返すことでも、声で罵りうことでもなく。 私は法という厳格な順によって、あの屈辱のすべてを、寸分の狂いもなく相へと返したのだ。

会議て、階のいロビーを歩いていると、自ドアの脇に、所なげにち尽くす麗華の姿があった。 かつて彼女を取り囲んでいた取り巻きの姿は、としてない。 麗華の線が私を捉え、ピタリと止まった。

「あ……あなた……」

続く言葉は、声にならなかった。 『平社員の妻と同じ席に座るなんて気がまない』と豪語していた女は、今や、この会社のどの席にも招かれることはないのだ。

それから数週のうちに、藤崎が会社の社宅を引き払う期が決定した。 先代の代から続いていた古参の取引先たちも、正をるや否や、藤崎から潮が引くようにれていった。 慰謝料の万円は、期を待つことなく、藤崎麗華本の名義で私の指定座へと振り込まれた。

序列の頂点に君臨していると信じ込んでいた女の元から、その序列という名の砂の楼閣そのものが、跡形もなく崩れっていったのだ。

『悔しかったら、あんたの旦世しな』

あのの宴会で投げつけられた、あの呪いの言葉が、ふと脳裏に蘇った。

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