"一度も抱かれなかった娘" 第2話
淡々とした業務連絡のような置きだった。だが、続く言葉が私の喉を締めげた。
『その際、の相原茜さんの入院記録の束から、ご遺族……いえ、ご族にお渡しすべき保管物が式、未処理のまま残されているのが見つかりました。当の担当者が退職しており、引き継ぎが漏れていたようです』
「保管物……?」 「茜の荷物は、あのすべて警察と確認して持ち帰りました。何も残っていなかったはずです」
『当の私物袋とは別に、ナースステーションの保管庫に留め置かれていたものです。の類と、さな布類が組。破棄処分することも検討いたしましたが、類の性質、破棄するに必ずご本の配偶者である相原様に内容を確認していただく必があると判断いたしました』
「処分してください」 反射に言葉がた。臓がな速さで脈打っていた。 「のものです。今さら見せられても困ります。病院の方でそのままシュレッダーにかけてください」
話の向こうで、微かにが擦れる音がした。 望助産師の声は、先ほどよりもしく、いものに変わっていた。
『……お気持ちは察いたします。ですが相原様、これは当院の管理の責任にも関わる類です。内容をご確認いただいたで、受領または破棄同に署名をいただかなければ、規定により処分することができません。
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もしご来院が難しいようでしたら、ご自宅に郵送することも能ですが』
「待ってください」 自宅に送られては困る。咲良がいる。もし余計なものが届いて、娘の目に触れたらどうするのだ。
「……分かりました。今の夕方、そちらに伺います」 『ありがとうございます。産科病棟のナースステーションで、望をお呼びしください。お待ちしております』
通話が切れたも、私は受話器を握りしめたままけなかった。 オフィスのでは、パソコンのキーボードを叩く音と、誰かの話し声がくで響いていた。 。 の奥底に分いをして沈めたはずの記憶が、濁ったのようにじわりと浮してくる覚があった。
午の半休暇を取り、私はに揺られて隣町の総病院へと向かった。
見覚えのあるコンクリート造りの建物は、と何も変わっていなかった。 エントランスをくぐると、独特の消毒液の匂いと、先特のぬるい空気が腔をつく。エレベーターに乗り、産科のある階のボタンを押す。 扉がくと、くから赤ん坊の々しい泣き声が聞こえてきた。 その泣き声を聞いた瞬、胃のあたりがきゅっと縮みがるような吐き気を覚えた。
ナースステーションのカウンターに歩み寄り、受付の若い護師に声をかけた。
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「助産師の、望さんをお願いします。相原と申します。先ほどお話をいただきまして」
護師の表が瞬で改まった。 「相原様ですね。々お待ちください」
奥のスタッフルームの引き戸がき、髪交じりの髪をろできちんと束ねた、柄な女性がてきた。名札には「助産師 望」とある。 代半ばだろうか。細い縁の鏡の奥にある瞳は、どこまでも静かで、私を観察するようにじっと見据えていた。
「相原様、お忙しいお越しいただき、ありがとうございます。ち話も何ですから、こちらの面談へ」
案内されたのは、廊の突き当たりにあるさな相談だった。 パイプ子と目調のテーブルが置かれた殺景な部。壁には児の沐浴指導や授乳姿勢を説するポスターが貼られている。 部に入った途端、息苦しさが胸を満たした。
望助産師は私の向かいに腰をろすと、に持っていたい茶封筒を机のに置いた。 封筒の表には、ボールペンで「相原茜様 保管資料」と几帳面な字でかれていた。
「単刀直入に申しげます」 望は静かに切りした。 「のあの、私は夜勤のリーダーとしてこのフロアにおりました。当、警察の方にも事を説いたしましたが、相原様が奥様の捜索願いをされた際、院内の引き継ぎにな備がございました」
「備?」 「ええ。奥様が忽然と姿を消されたため、警察の聴取や院内の確認作業が混乱を極めておりました。
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