"一度も抱かれなかった娘" 第4話
そして当直の助産師に対し、『妻は精神のバランスを崩している、子どもに何を quill するか分からないから絶対に寄らせるな』とく求されました。この申請を取りげ、ご自分ので拒否のサインをされたのです」
「ち、違う……」 否定しようとをいたが、まともな言葉にならない。 「私は……妻の体を配して……」
「その、奥様は姿を消されました」 望は私の弁解を拾おうともしなかった。 「私たちが病を見にった、ベッドのには奥様の私物がすべて残されていました。靴も、着も、おも持たずに、夜の通用からへられたのです。そして翌朝、病院に来られた相原様は、警察に対して何とおっしゃいましたか?」
望の線が、刃物のように私の胸を貫いた。
『妻は子どもに切のを示さず、抱くことも拒んで逃げた』 『母親としての自覚がまったくなかった』
「相原様、警察にはそう証言されましたね。私たちは当、族の事にくち入ることができませんでした。ですが、この申請が見つかった以、当院としてこれをただの屑として破棄することはできません」
望は封筒の底から、もうつのものを取りした。 のひらに収まるほどの、さな透なビニール袋だった。
袋のには、つ折りにされた枚のガーゼハンカチが入っていた。
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まれたばかりの赤ん坊の元を拭うための、くてい綿のハンカチ。 そのの隅に、揃いで拙い刺繍が施されていた。
ピンクの刺繍糸で、針針、縫い付けられた文字。
『さくら』
まだ名も正式に決まっていないはずの、産当の夜に。 茜がベッドので、痛む腹部をかばいながら、で針を運んだ跡だった。
「奥様が病の枕のに隠すように残していかれたものです」 望がその袋を、申請のにねて置いた。 「咲良ちゃんがまれたの夜、奥様はずっとこれを握りしめていらっしゃいました。『名はもう決めてあるんです、さくらって言うんです』と、嬉しそうに私たちに話してくださいました」
のが真っになっていた。 の奥で、キーンという鋭い属音が鳴り続けている。
「……もう、いいでしょう」 私は掠れた声で言った。 ちがり、机のの類とビニール袋を乱暴にひったくった。 「全部、分かりました。引き取ります。これでいいんですね」
「相原様」 ちろうとする私の背に、望の静かな声が投げかけられた。
「奥様は、本当にご自分のでお子さんを捨てたのでしょうか。それとも……そうい込まなければならない理由が、あなたにあったのですか」
私は振り返らなかった。 逃げるように相談のドアをけ、でエレベーターへと向かった。
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背に向けられた無言の線が、焼けつくようにかった。
病院のにると、夕暮れのたいが吹き抜けた。 にしたビジネスバッグのに、乱暴に押し込んだ類の触が、い鉛のように腕にのしかかっていた。
駅までのを、私は半ば記憶を失ったように歩いた。 のを、の景が激しい濁流となって駆け巡る。
違う。 私は違っていなかった。 あいつが悪いのだ。あいつが私を裏切ろうとしたからだ。 私を、私のを、あの活をすべて捨てて、子どもだけを奪って逃げようとしたからだ。
——「お願いだから、この子を連れてかせて」
病で、青い顔をして私に縋り付いてきた茜の顔。 必に懇願するその瞳に浮かんでいたのは、私へのなどではなく、確な『拒絶』と『恐怖』だった。 あの女は私から逃げようとしていた。 私のを、から綺麗さっぱり消しろうとしていた。
だから、奪ったのだ。 子どもを連れて逃げるというのなら、その子どもを絶対に渡さないこと。 それが、私を拒絶したあの女に対する、当然の報いだったはずだ。
「誰が……誰が悪いっていうんだ」 歩のでち止まり、すりをく握りしめた。 指の関節がくなるほど力を込めても、体の震えは止まらなかった。
、私は完璧な父親を演じてきた。 「母親に捨てられたな娘」
を育てる、「誠実で献な父親」。 その物語が、私というを支える唯の骨組みだった。
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