"一度も抱かれなかった娘" 第11話
『昨ね、緑町総病院から私のところにも連絡があったの。緊急連絡先の控えに、私の実の話番号が残っていたからって。茜の保管資料について、配偶者の方と連絡がついたかどうかの確認だったわ』
やはり、あの助産師だ。 私が類を受け取ってちった、あの女は千にまで連絡を入れたのだ。
「類なら私がすべて引き取った。適切に処分する。おが首を突っ込む筋いはない」 受話器を叩き切ろうとした。だが、続く千の言葉が、私の腕を縛りにした。
『俊さん。あなた、警察に「茜が産うつで突発に子どもを捨てて逃げた」って嘘をついたんでしょう?』
背の汗が、気にえ固まるような覚がした。
「……何の話だ」
『とぼけないでよ!』 千の声が、受話器の向こうで鋭く吊りがった。 『茜が産うつ? 子どもにがなかった? よくそんな恥らずな嘘がつけたわね! あの子がどれだけお腹の子を事にしていたか、あなたが番よくっているはずじゃない!』
「おは何もらんくせに……!」 私はキッチンの隅へ移し、咲良に聞こえないよう声を潜めて鳴った。 「あいつは産した翌に病院から勝に消えたんだ! 元も隠して、も持たずに! それが母親のすることか!? 残された咲良を、私がどれだけのいで育ててきたとっている!」
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『勝に消えたんじゃないわよ!』 千が激しい勢いで割り込んできた。 『あなたから逃げるためだったんでしょうが!!』
部の空気が、完全に止まった。 リビングのソファに座っていた咲良が、私のただならぬ気配に気づいたのか、そうにこちらを振り返ったのが見えた。 私は慌てて背を向け、受話器をくに押し当てた。
『あの子ね、産の週に、私のところに話してきたのよ』 千の声が、りと、分の抑えきれない悔しさに震えていた。 『「もう限界だ」って泣いてたわ。「俊さんとお義母さんに、まれてくる子を取りげられる。私の居所なんてこのにはない。産院から退院したら、そのまま実に連れてかれて、私は政婦みたいに扱われるだけだ」って』
「それは……あいつの被害妄だ! 母さんは伝おうとしていただけだ!」
『伝う? 赤ん坊の寝具もも名も、全部あなたのお母さんが決めて、茜が言でも見を言ったら「嫁の分際で」「誰のおかげで活できているとっている」って、して寄ってたかって罵倒したんでしょうが! 茜の通帳もキャッシュカードも全部あなたが取りげて、自由なおを円も持たせないようにして!』
千の言葉のつつが、私が必に記憶の底へ封印していた事実を、々しく掘り起こしていく。
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そうだ。 あの頃、母は初孫の誕に異常なほど執着していた。 そして私は、母の嫌を損ねたくなかった。 茜が自分の実を頼ろうとするのを禁じ、友との連絡を遮断し、私の管理に完全に置くことが、正しい「庭の統制」だと信じ込んでいた。
『茜はね、計画していたのよ』 千が、たい刃のような事実を告げた。 『子どもがまれたら、退院のの朝に、病院から直接シェルターへ逃げ込む計画をてていたの。私がをして迎えにくはずになっていたのよ。母子同になれば、赤ん坊を自分の元に置ける。だからあの子は、痛みを堪えて必で母子同の申請をしたのよ!』
界がぐらりと揺れた。 あの申請。 「できるだけく抱っこして、おっぱいを吸わせてあげたいです」 あの震える文字は、ただの母親のではなかった。 子どもを自分の腕のに抱き込み、私から奪いるための、最の命綱だったのだ。
「……あいつは、咲良を連れて逃げる気だったのか」 私のから、掠れた声が漏れた。
『そうよ! でも、あなたに勘づかれた。あなたがナースステーションに鳴り込んできて、申請を握りつぶしたんでしょう!? きを封じられて、警備員まで呼ばれて、赤ん坊の部にもづけなくされて……あの子がどれだけの絶望ので、あの夜の病院から逃げしたか、あなたに像できる!?』
千の呼吸が荒くなっていた。
受話器の向こうから、彼女の激しい憎悪が津波のように押し寄せてくる。
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