"診察室に入れなかった私" 第13話
「あっ……!」
激痛が、腹部を貫きました。 まるで内側から鋭利なナイフで抉られたような、経験したことのない鋭い痛み。
そして次の瞬。 太ももの内側を、温かい液体がドバドバと伝い落ちていくのが分かりました。
バシャ、と、フローリングのにたまりが広がります。
「ち、千……?」
保険証を握りしめたままの健が、青ざめてちすくみました。 元に広がる、無透の液体。 臭い潮のような匂いが、部のにち込めます。
破だ。 まだ週。予定までは、あとヶくもあるのに。
「……う、ああっ……!!」
激しい子宮の収縮が、波のように押し寄せてきました。 お腹が鉄板のようにカチコチにくなり、私はに膝をつき、両でお腹を抱え込んで倒れ込みました。
「千さん!? ちょっと、何なのこれ!?」
義母が切り声をげました。
「は……破……した……!」
私は脂汗を流しながら、激痛のに声を絞りしました。
「救急……! 健、く……救急を呼んで……!!」
「きゅ、救急……!?」
健は完全に腰を抜かし、そのにへたり込みました。 にしたスマートフォンを握りしめたまま、指が激しく震えて、画面のロックすら解除できません。
「ど、どうしよう、母さん! 俺のせいで破したんじゃないよな!? 俺が突きばしたからじゃないよな!? 俺は悪くないよな!?」
痛みにのたうち回りながら、私はその言葉を聞きました。
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目ので妻が破し、胎児が命の危に瀕しているその瞬ですら、この男のから最初にたのは「自分の無実の確認」でした。
底から、この男に対するがに絶えました。
「どいて……っ!」
私は痛みに震えるで、に落ちていた自分のスマートフォンを引き寄せました。 自力で『119』を押し、スピーカー通話にします。
『はい、消防庁です。事ですか、救急ですか』
「救急です……! 妊娠週……破しました……激しい腹痛があります……! かかりつけは、都総病院の産婦科です……!」
途切れ途切れに、しかし必に所と状況を伝えました。 受話器の向こうから「救急が向かいます、横になって静にしていてください」という力い声が聞こえてきました。
そこからの記憶は、激痛と恐怖のモザイクでした。
くから聞こえてくるサイレンの音。 で部に踏み込んできた救急隊員たちの緊迫した声。 タンカに乗せられ、エレベーターをり、救急の部座席に運び込まれるまでの振。
救急の、私の顔には酸素マスクが当てられていました。 付き添いとして乗り込んできた健は、私の元でさく丸まり、ただカタカタと歯を鳴らして震えていました。 救急隊員が「奥さん、痛いですね、病院まですぐですからね!」と励ましてくれる横で、健は度も私のを握ろうとはしませんでした。
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ピーポー、ピーポーと、サイレンがを切り裂いていきます。
やがて救急のバックドアがき、都総病院の救急救命センターのたい空気が流れ込んできました。
ストレッチャーが、凄まじいスピードで廊を疾します。 井の蛍灯が、目まぐるしくろへと流れていきました。
「佐藤千さん、週! 完全破、子宮収縮は分隔! 血量あり!」
救急隊員の声に応えて、診察の自ドアがき、神医師が駆け寄ってきました。
「佐藤さん! 聞こえますか!?」
「せ……んせ……い……」
酸素マスクので、私はかすれた声を漏らしました。
神医師はストレッチャーと並しながら、即座に携帯用の胎児拍計を私のお腹に当てました。 ドク……ドク……ドク……。 械から流れてくる拍の音が、ひどく遅く、々しいものに変わっていました。
「胎児拍、まで! 遷延過性徐脈です!」
神医師の表が、瞬で緊迫の極限へとねがりました。
「臍帯脱、あるいは常位胎盤期剥の疑いがあります! このままでは胎児が子宮内で窒息します! 直ちに緊急帝王切に切り替えます! オペに連絡、児科のドクターを今すぐ呼んで!」
「はい!!」
護師たちが斉にりしました。 ストレッチャーが術のへと滑り込み、急止します。
そのでした。
神医師が振り返り、廊の壁にへばりつくようにしてち尽くしていた健を鋭く見据えました。
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