"ゴミ箱の隣に座る学年一位" 第6話
は私の張り詰めた空気を敏に察したのか、わずかにを止めましたが、静かに言われた通りの席に腰をろしました。
「松井先から聞いたわ」 「……」 「あの隣の空いている机、撤されるはずだったのを、あなたが頼み込んで残してもらったんですってね? 番ろのゴミ箱の隣に自分から移して、委員まで辞めて……本当なの?」
正面から問い詰めると、は線を伏せました。 否定も肯定もしない。ただ、膝のでぎゅっと握りしめられたい指先だけが、微かに震えていました。
「どうしてそんな馬鹿なことをしたの! 誰の机なのよ、あれは!」 「……誰の机でもいいじゃない」 「よくないわよ! あなたのがかかっているのよ!?」
私はわずを乗りし、テーブルを叩きました。
「の学期が、どれだけ学受験の内申に直結するか分かっているの? 推薦入試の類には、担任からの所見欄があるのよ!『理由もなく自ら方の座席を希望し、委員を辞退した』なんてかれたら、評定がどれだけ傷つくか……! 相は誰なの? どうしてあなたがそこまでしなきゃいけないの!」
私の叫びのような声が、狭いリビングに響き渡りました。 しかし、はゆっくりと顔をげると、信じられないほどえ切った瞳で私を見つめ返しました。
「傷つくのは、私の評定でしょ」
広告
「な……何ですって?」 「困るのは私だよ。お母さんじゃない。どうしてそこまで取り乱すの? 私の席がどこにあろうと、テストの点数が落ちたわけじゃないよ」 「そういう問題じゃないでしょう! 周囲からの見え方があるの! さんのお母さんだって、の保護者のたちだって、みんなあなたが何か問題を起こしたんじゃないかって噂してるのよ! 恥ずかしいとわないの!?」
「恥ずかしい?」
の唇から、乾いた笑いが漏れました。
「お母さんは、結局そればっかりだね。私がどうっているかじゃなくて、さんのお母さんにどう見られるか。周りのが私をどう評価するか。そればっかり」 「、あなた、親に向かって……!」 「ご飯、いらない」
は乱暴に子を引き、ちがりました。
「もいから、もう寝るね」 「! 話しいはまだ終わっていません!」
私の制止を振り切り、はに廊へとて、自分の部のドアをピシャリと閉めました。 内側から、カチャリと鍵をかけるさな属音が聞こえました。
鍵をかけた。 あの従順だったが、私に対して部の鍵をかけたのです。 幼い頃から、隠し事などつもなかったはずの娘が、私を完全に締めしました。
全の血が逆流するようなりと、底れぬ恐怖が、胃の底からせりがってきました。 あの子は、狂ってしまった。
広告
誰かにそそのかされている。誰かがの真面目さに付け込んで、あの子の輝かしい未来を狂わせようとしている。
母親として、このまま見過ごすわけにはいきませんでした。 絶対に、あの空っぽの机の正体を暴いて、を正気配の位置……あの教の番に引き戻さなければならない。
その決は、翌週の曜に届いた通のプリントによって、さらに抜き差しならないものへと変わりました。
曜の夕方、郵便ポストにからの封が届いていました。 をけると、枚の受講辞退届の控えが入っていました。
『殿 難関国公突破・放課特別特講習 辞退届受理のご案内』
臓が凍りつくかといました。 あの特講習は、学で位名しか受講を許されない、京学や京都学を目指す徒のための特別な講座でした。はの頃から当たりのように参加し、週に、最終刻のまで残って猛勉していたはずでした。
それを、辞退した? 私に何の相談もなく、勝に類をしたというの?
りでの震えが止まりませんでした。 私は帰宅したを捕まえることも待てず、彼女が毎晩半から入る呂のを狙いました。
シャワーの音が浴から響き始めたのを確認し、私は忍びで階のの部へと向かいました。
ドアノブにをかけると、幸いにもは鍵がかかっていませんでした。
の部は、いつも通り完璧に理頓されていました。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
母の職場で死んでいた私
母の定年退職をサプライズで祝うため、私は東京から新幹線に乗り宴会場へ駆けつけた。お祝いの品を手にして扉を開けた瞬間、母の同僚は手にしたグラスを取り落とし、顔を青ざめて後ずさりした。毎年盆と正月には実家へ顔を出し、仕送りも続けていたはずの私は、母が二十八年勤めた職場では十五年前に事故で亡くなった娘として扱われていた。ステージを駆け下りてきた母は私の手首を強く掴み、そのまま非常階段へと力任せに引きずり出した。親不孝|親子関係|退職金|修羅場3.5万字5 0 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 0 -
完結第24話
妻の手術翌朝、七通の解約通知
妻が胆嚢ポリープの手術で入院した日、私は仕事を優先し「自分で処理しろ」と見舞いを断った。だが翌朝、私の携帯にマンションの駐車場、クレジットカード、父のデイサービスを含む七通の解約通知が立て続けに届く。カードは店頭で弾かれ、ビルのゲート前で立ち往生した私は、妻の報復を確信して病室のドアを乱暴に開けた。点滴に繋がれた妻は、今すぐ元に戻せと詰め寄る私の目の前で、スマートフォンの画面を静かに伏せた。怒り|夫婦|介護|修羅場3.7万字5 0 -
完結第23話
十八年ぶりの切符「次は三人で来い」
「二度と敷居を跨ぐな」――十八年前、父・源蔵の激しい怒声を背に村を飛び出した美雪。母の葬儀すら拒絶し、東京で夫の高一、息子の蒼太と平穏な家庭を築きながらも、心の奥に深い罪悪感を抱え続けていた。 ある秋の日、頑固一徹だった父が倒れたとの報せが届く。恐る恐る帰郷した美雪を迎えたのは、小さく老いさらばえた父の姿だった。互いに素直になれぬまま病室で交わしたわずかな言葉。だが、生家から持ち帰らされた重い桐箱と古いボストンバッグを開けた瞬間、美雪の息は止まる。 そこには、出金記録ゼロのまま膨れ上がった美雪名義の通帳と、十三年前の日付が記された「高一君へ」という父の手紙が眠っていた。父が十八年間隠し通してきた、想像を絶する真実とは――。真実|修羅場3.5万字5 0 -
完結第25話
義母の合鍵が入らない
結婚五年目、情緒不安定を理由に義母に家の合鍵を預けさせられた。夫は母を庇い、私に我慢を重ねるよう笑って求めた。義母の無断侵入は続き、私の大切な机まで雨のベランダへ放り出されたが、私は一度も怒鳴らなかった。一ヶ月後、いつものように合鍵で入ろうとした義母の前に現れたのは、鍵穴すら存在しない最新の電子錠だった。激怒して電話をかけてきた義母に対し、今まで母に逆らったことのなかった夫が「僕が鍵を変えた」と告げた。嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場3.8万字5 0