"義母の合鍵が入らない" 第5話
私はリビングを横切り、掃きし窓のカーテンを乱暴に引きました。
ガラス戸の向こう。 たいが容赦なく吹き付ける狭いベランダの隅に、と物干し竿の支柱のに無理やり押し込まれた私のウォールナットの机がありました。 いブルーシートが枚、申し訳程度にかぶせられていましたが、にあおられて半分めくれがり、が美しい目の板を無残に叩き、濃いシミを作っていました。
私の代の記憶が。 夜遅くまで資格の勉をし、健との婚姻届をき、辛いも嬉しいも向かいってきた、私の切な所が。 まるで粗ゴミのように、のに晒されていました。
の奥で、キーンという鋭い音が響きました。
胸ので張り詰めていた、最の細い糸が、音をてて千切れました。 けれど、議なことに、私のは爆発しませんでした。 りで鳴ることも、泣き喚いて義母に掴みかかることもしませんでした。
ただ、体の血液が、氷のようにたく澄み渡っていくのをじました。
私はゆっくりと振り返りました。 私の表を見て、の友は怯えたようにを縮め、バッグを抱え込みました。
「あの、佐藤さん……私たち、そろそろお暇するわね」
「そうね、急にお邪魔しちゃって悪かったわね」
ちがろうとするに、私は極めて丁寧な、けれど切のを排した声で言いました。
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「申し訳ありません、お客様方。お引き止めして。健さんの母親が、ご迷惑をおかけしました」
「ちょ、ちょっと由さん! 健さんの母親って何よ、お義母さんでしょう!」
義母が甲い声で叫びました。 私は義母を完全に無し、客のに向かって玄関のドアを指し示しました。
「このマンションは、私と夫の共同名義の自宅です。契約者である私の許なく、見らぬ方がち入られていること、そして私の私財が損壊されている現状について、これ以居されますと警察を呼ばざるを得なくなります。どうぞ、今すぐお帰りください」
の女性は顔を見わせ、鳴にい声をげてへ駆けしていきました。 靴を踵を踏んだまま履き、転げるようにドアのへと逃げていきました。
玄関のドアが閉まり、リビングには私と義母のだけが残されました。
義母の顔は、屈辱とりで真っ赤に染まっていました。
「な、なんて無礼な子なの! 私の友達ので、私に恥をかかせるなんて! 息子が稼いだで買ったに、母親の私が誰を呼ぼうと私の勝でしょう! ちょっと机をかしたくらいで、警察だなんて……がおかしいんじゃないの!?」
義母は激昂し、テーブルのにあった私の欧製のティーカップを、乱暴に掴んでシンクに放り投げました。
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ガシャン、と鈍い音がして、取っが欠けました。
「こんな狭量な女、健には勿体なさすぎるわ! 今夜、健に全部言ってやるから! あなたがどれだけ親孝で、どれだけ酷な女か、あの子にいらせてやるわ!」
義母は自分の荷物をひったくるように持ち、肩をらせて玄関へと向かいました。 ドアを叩きつけるように閉めてていくまで、私は言も発しませんでした。
静まり返った部ので、私はシンクへ歩み寄りました。 割れたティーカップの破片を拾いげ、ゴミ箱へ静かに落としました。
そして、ベランダへました。 たいが、私のスーツの肩を容赦なく濡らしました。 めくれたブルーシートを剥がすと、机の引きしの隙から、がポタポタと滴り落ちていました。 板を撫でると、たく、湿ったの触が指先に伝わってきました。
私は泣きませんでした。 ただ、その机を両でしっかりと掴み、で滑るを軋ませながら、でリビングのへと引きずり戻しました。 たくて、腰が砕けそうになりましたが、歯をいしばって引きずりました。 絨毯のに黒いの跡がつきましたが、もうどうでもいいことでした。
タオルを何枚も持ってきて、机の分を丁寧に拭き取りました。 引きしをけると、に入れていた私のパスポートと、帳、そして独代からの預通帳が入ったポーチが、かろうじて濡れずに残っていました。
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