"義母の合鍵が入らない" 第12話
「……母さん」
非常階段の踊りで、健はもう度、その言葉を繰り返しました。
「鍵を、変えたのは……僕が、同したからだよ」
話の向こうで、ヒッというい息を吸い込む音が聞こえました。 、度として自分の言うことに逆らったことのなかった息から放たれた、信じがたい拒絶の言葉。 義母の脳が、その現実を処理しきれずにショートしたのが、受話器越しの沈黙から痛いほど伝わってきました。
『……健? あんた、今、なんて言ったの?』
義母の声は、りを通り越して、く震えていました。
『私が……母親の私が、あんたのためにすき焼きの肉を買って、わざわざに乗って来てあげたのよ? それを締めすっていうの!? あの女に何か吹き込まれたんでしょう!? そうに決まってるわ! あの子がキーキー喚いて、あんたを脅したのね!?』
「違うよ、母さん!」
健は階段のすりを激しく叩きました。 カン、と甲い属音が反響しました。
「由は何も言ってない! 僕が決めたんだ! 母さんがやってることは、親切じゃない! ただの嫌がらせだ! 由の机をのに放りして、の荷物を勝にけて……そんなの、誰だって耐えられるわけないだろ!」
『嫌がらせ!? 母親の親を、あんたは嫌がらせって言うの!?』
義母の絶叫が、受話器を突き破らんばかりに響きました。
『けない! あんな女の肩を持って、実の母親を犯罪者みたいに締めすなんて! あんたを学までして、派に育てげたのは誰だとってるの!? わかりましたよ! もうあんたたちの顔なんて度と見たくないわ! 親子の縁を切ってやるから、そういなさい!』
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ブツン、と激しい音をてて通話が切れました。
階段に、静寂が戻ってきました。 健はそのに崩れ落ち、コンクリートのに膝をつきました。 ののスマートフォンが、汗でぐっしょりと濡れていました。
やってしまった。 言ってしまった。 まれて初めて、母親のヒステリーを受け止め、真っ向から拒絶してしまった。 胸の奥を突きげる激しい鼓と、吐き気のような罪悪が、健の体を激しく揺さぶっていました。
けれど、悪はこれで終わりではありませんでした。 むしろ、本当の獄の幕ががったのは、ここからでした。
そのの夜、。
私が定で退社し、しいスマートロックに暗証番号を打ち込んで自宅に入ると、リビングのかりはついていませんでした。 暗の、ソファの端に、健がスーツ姿のまま膝を抱えて座り込んでいました。
ローテーブルので、彼のスマートフォンが、まるでき物のように激しく、刻みに振を繰り返していました。 ブーッ、ブーッ、ブーッ。 暗い部ので、液晶画面の青いが気に点滅しています。
「……健さん?」
私が声をかけると、健はびくっと肩をねげ、怯えたような目で私を見げました。 その顔は憔悴しきり、目のには黒い隈が張り付いていました。
「由……帰ってきたのか……」
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「気もつけないで、どうしたの?」
私が壁のスイッチを入れると、健は眩しそうに目を細め、テーブルののスマートフォンを指差しました。 彼のは、刻みに震えていました。
「止まらないんだ……さっきから、ずっと……」
私がテーブルに歩み寄ると、画面には健の叔母――義母の妹からの着信が表示されていました。 着信が切れると、髪をいれずに今度はLINEの通が画面を埋め尽くしました。
通の主は、親族数が参加している『佐藤族会議』というグループチャットでした。 画面を覗き込んだ瞬、私の背筋にたいものがりました。
義母から送信された、分を超える音声メッセージ。 そのには、義母が打ち込んだ文のメッセージが並んでいました。
『親戚の皆様、今までお世話になりました。私が塩にかけて育てた健は、お嫁さんの言いなりになって、実の母親を棒扱いし、の鍵を変えて締めしました。の、玄関でち尽くす私の姿を像してください。もうきているのが恥ずかしいです。あの子に渡した結納も、入学祝いも、すべてあのお嫁さんに奪われてしまいました。私はもう、きていく気力がありません』
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