みかん小説
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"三十二人目の卒業写真" 第1話

テーブルのに並べた封筒は、どう数え直しても通あった。

ダイニングの蛍灯の、私は鏡をし、目を指先でく押さえた。まぶたの裏に、数の居酒景が焼き付いてれない。

「藤田先本当にお疲れ様でした!」 「僕たちが先の最初の卒業で、本当に誇らしいです」

に送りした、教員活で最初の卒業たち。 当歳だった子供たちも、今や代半ばの分別あるになっている。髪にいものが混じった者、スーツの腹回りが窮屈そうになった者、目尻にい笑いじわを刻んだ母親たち。という歳は彼らの容貌をすっかり変えていたが、私を見つめる屈託のない差しだけは、あの頃の教のままだった。

幹事を務めてくれた当の学級委員藤が、宴の終わりに誇らしげに掲げた袋をす。

「先、これ、全員分です。あの、先が担任してくれた62組の、きっちり分。も欠けていませんよ」

周囲から温かい拍が湧き起こり、私は胸をくしながらそのみを受け取った。教職という仕事の最に、これ以の報酬はないとさえった。の教師を全うし、今、私は誇りを持って教壇をりたはずだった。

だが、自宅に戻り、静まり返った部を取りした私のは、途で止まった。

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通ずつ、丁寧に机のに並べていった。 列目に通。 列目に通。 列目に通。 そして列目に、通。

……通。

何かの違いだろうと、私は声をして数え直した。枚、指先でなりを確かめながら、机のからへ移させる。 ……。 そして、元にまだ通、残っていた。 通。

誰かがいたのだろうか。あるいは、とは別にメッセージカードでも添えてくれたのか。 そう自分に言い聞かせながら、私は最に残ったその封筒に線を落とした。

通とは、らかに異質だった。 徒たちのは、とりどりのであったり、文で選んだような季節の絵柄が入っていたり、あるいは勤め先の社名が入った清潔な封筒であったりした。どれも代になった彼らなりの活と、私への気遣いが滲みていた。裏面にはそれぞれの跡で、懐かしいフルネームが誇らしげに記されていた。

だが、元に残ったその通には、何の装飾もなかった。 コンビニや百円均で売られているような、何の変哲もない封筒。 表にも裏にも、宛名も差の名かれていない。封緘のシールすらなく、糊付けされた折り目だけが、妙に神経質にきっちりと圧着されていた。

私は喉の渇きを覚え、湯呑みのめた番茶をすすった。

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いペーパーナイフを封筒の端に差し込む。を裂く微かな音が、夜の台所にやけにきく響いた。

からてきたのは、縦罫線が入った便箋が枚だけだった。 そこには、みのあるブルーブラックのインクで、わずかだけが記されていた。

『先、あの、全員が卒業しました。私を残して。』

臓が、ドクンとたい音をててがった。

の空気が瞬にして凍りついたようにじられた。指先から急速に体温が奪われていく。 ブルーブラックの文字は、定規を当てたように然としていながら、どこかいた者の執のようなさ配していた。名はない。付もない。ただそのだけが、い便箋の真んに取り残されていた。

私は便箋を机のに落とした。 カサリ、と乾いた音がした。

「……まさか」

乾いた唇から、掠れた声が漏れた。 度としてしたことのなかった記憶が、脳裏の澱の底から猛烈な勢いで浮きがってくる。

タタミ畳ほどの、あの狭い職員の奥。 印刷のインクの匂い。 パイプ子に縮こまるように座っていた、さな背。 運から微かに聞こえてくる、卒業式の予練習のピアノの音。 そして、私が彼女のさなのひらに握らせた、緑の缶に入った物のハッカ飴。

胸の奥が激しく軋んだ。

悪戯や違いではない。このが指し示している相を、私は世界の誰よりも正確にっていた。

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