みかん小説
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"三十二人目の卒業写真" 第4話

呼びし音がく続いた。ないのではないか、そうい始めた回目、カチリと通話が繋がった。

「……はい、宮田です」

く、抑揚のない声だった。昨夜の喧騒のでも聞いた、記憶通りの声。

「あ、宮田君か。藤田だ」 「……先ですか」

宮田の声には、藤や鈴のような驚きも、華やいだ響きもなかった。まるで、私が話をかけてくることをあらかじめっていたかのような、い沈黙が横たわった。

「昨はご苦労様でした」 「ああ、来てくれて嬉しかったよ。……宮田君、休みのに本当にすまない。に済ませるから、つだけ教えてほしい」 「なんでしょうか」

私はく息を吸い、胸の奥の痛みを押し殺しながら言った。

の卒業アルバムを撮った。……君は、職員の奥の、印刷の裏の席に、誰が座っていたか覚えているか」

話の向こうで、呼吸の音が止まった。 受話器を通して伝わってくる、絶対な静寂。 藤のように笑いばすことも、鈴のように困惑することもしない。 宮田はただ、黙っていた。 秒、秒。沈黙が引き延ばされるにつれて、私の背筋を氷のような気ががってきた。

「……宮田君?」 私が呼びかけると、受話器の向こうで、微かに擦れの音がした。 そして、く、え切った声が私の膜を打った。

「先」 「あ、ああ」 「……ようやく、そのことを訊く気になったんですね」

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臓を鷲掴みにされたような衝撃だった。 界が激しく揺らめいた。

「宮田君、君は……!」 「度もにしなかったくせに。昨の今で、急にどうされたんですか」 「君があのいたのか? あの封筒を、私の袋に入れたのは君なのか!?」

私の問いかけに対し、宮田はすぐには答えなかった。 ただ、く、いため息をつく音が聞こえた。

「僕じゃありませんよ」 「じゃあ、誰が——」 「誰だっていいじゃないですか。そんなこと、今さら暴いてどうするんですか。先は昨派に定退職されたんでしょう? 派な徒たちに囲まれて、束をもらって、完璧な教師を終えた。それでいいじゃないですか」 「宮田君、頼む。教えてくれ。あの子は……あの子は今、どうしているんだ? あの子がいたのか?」 「さあね。僕がるわけないでしょう。……ただ、先

宮田の声が、段とくなった。

「みんなが忘れたふりをしているからって、本当に全員が忘れたとわないでくださいよ。僕たちは子供だった。でも、馬鹿じゃなかったんです」

ツーツー、という無質な切断音が受話器から流れた。 「宮田君! 宮田君!」 呼びかけても、当然返事はなかった。

私は受話器を握りしめたまま、ち尽くした。 全の筋肉が張り、指が受話器のプラスチックにい込んでくなっていた。

っていたのだ。

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宮田は、っていた。 あの、あの部に誰がいたのかを。そして、私が何を隠蔽したのかを。 そして宮田のぶりからすれば、っていたのは彼だけではない。

『僕たちは子供だった。でも、馬鹿じゃなかったんです。』

その言葉が、で何度も反響した。 私は子供たちを欺き通せたと信じ込んでいた。彼らを守るための、の優しい嘘を、子供たちは純粋に受け入れてくれたのだと、そうい込もうとしてきた。 だが、違った。 彼らはっていて、沈黙していたのだ。 私のために? それとも、自分たちの「完璧な卒業」のために?

になり、暗いり始めていた。 たいが、ガラス窓を規則に叩いている。 私は部かりもつけず、ダイニングの子に座り続けていた。机のには、あのい便箋。

『先、あの、全員が卒業しました。私を残して。』

青黒いインクの文字が、暗がりのでぼんやりと浮かびがっている。 事をとる気にもなれなかった。茶をむ気力も失せていた。 誰がいたのか。 あの子本なのか。それとも、宮田が言ったように、当の事る別の「誰か」なのか。

もしあの子がいたのだとしたら、なぜ今になって? 、どこで、どんなを送ってきたのか。 母子庭で、民票すら移できないまま、逃げるように町を転々としていたあの親子。

「藤田先、この子は事があってね。公にはできないんだが、席だけ置いてやってくれないか」

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