みかん小説
本棚

"妻の手術翌朝、七通の解約通知" 第1話

首都速都環状線の渋滞を抜け、のオフィスへとを滑り込ませた計のデジタル表示は午分を指していた。

私、神歳)のは、常に分刻みのスケジュールと共にあった。証プライム宅設備器メーカーで営業部の部職に就いて。部を率い、常に社内トップの営業成績を維持し続けてきたという自負がある。

。企業の度末の最終だ。

各支の数字を最終確定させ、午からの役員会で来度の予算計画案をプレゼンする。私にとって、今度で最も神経を研ぎ澄まさなければならないだった。

(真由美の入院となったのは、単に巡りわせが悪かっただけだ)

フロントガラス越しに広がる曇り空を見げながら、私はでそう呟いた。

妻の真由美(歳)は昨から、区内にある都医療センターに入院している。健康診断で見つかった胆嚢ポリープの摘術を受けるためだ。事に医師からは、腹腔鏡を用いた侵襲の術であり、順調にいけばで退院できると説されていた。命に関わるような病ではない。

の朝、自宅の玄関でキャリーケースに荷物を詰めていた真由美の姿が脳裏をよぎる。

『直さん、今術の説があるの。

広告

から族も同席するようにって言われてるんだけど……午分だけでも、病院に来られない?』

そうに眉を寄せる妻に対し、私はネクタイを締め直しながら、苛ちを隠さずに言い放ったはずだ。

度末の決算直だって分かってるだろう。営業トップの私が仕事を放りして、たかが分の説のために病院にけるわけがない。腹腔鏡の簡単な術だって医者も言ってたじゃないか。子供じゃないんだから、入院の続きも自分のの回りのことも、でちゃんと処理してくれ』

真由美はそれ以何も言わなかった。ただうつむき、『ええ、そうね。仕事が事よね』とさく呟いただけだった。

文句を言わずに夫の仕事を最優先する。夫がで稼ぎ、妻が庭の雑務をに引き受ける。それがの結婚活で培われてきた、の揺るぎない秩序だったはずだった。

赤信号でを止め、ハンドルを握るを緩めた、そのだった。

ダッシュボードのホルダーに固定していたスマートフォンの画面が、く震えた。

メッセージアプリの通音ではない。システムからのアラートをらせる、質な子音だった。

ピコン。

普段なら、部からの朝の業務報告か、ニュースアプリの号程度にしかわなかっただろう。

広告

だが、その音はつで終わらなかった。

ピコン。ピコン。ピコン、ピコン、ピコン——。

髪を入れずに、障りな連続音が静かな内に鳴り響いた。

画面に目を落とした私は、わず眉をひそめた。

センターの領域が、黒い帯のようなメッセージで次々と埋め尽くされていく。スクロールするまでもなく、異常な数の「解約」と「止」の文字が目にび込んできた。

通目。 【〇〇タワーマンション管理組械式駐(区画B-14)利用資格終のおらせ

通目。 【ファミリーギガ回線主契約・シェアアカウント解除完

通目。 【〇〇健保組】被扶養者付加付特約解除および資格変更確認のおらせ

通目。 【メガロス・ウェルネス】ペア・ファミリー会員契約終および利用止について

通目。 【友カード】追加族カード・ご利用枠止および能解除通

通目。 【域包括支援センター/デイサービスひまわり】神清様(父)の度利用予約キャンセルおよび受入保留について

通目。 【区桜丘・学全連絡網】度「徒引き渡しカード」保護者登録解除のおらせ

通。

すべて、今朝の分から分までの、わずか分のに集して届いていた。

「……は? なんだこれ」

乾いた声がからこぼれた。

何かのシステムトラブルか。

あるいは、のフィッシング詐欺か。

ちょうど信号が青に変わり、私は背から軽くクラクションを鳴らされた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: