"妻の手術翌朝、七通の解約通知" 第11話
その全てが、真由美というが毎この空を歩き回り、作業でリセットし続けていた痕跡だった。
「……実印は、どこだ」
傷を振り払うように呟き、私はリビングの隅にある真由美のワークスペースへと向かった。
キッチンの脇に設けられた、わずか畳ほどのさな事コーナー。そこには簡素な製の机と、段のスチール製キャビネットが置かれていた。結婚以来、私がこの机の引きしをけたことは度もなかった。「のことは全部任せる」という美名のもとに、ち入ることすらしてこなかった所だ。
段目の引きしをける。
文具が、仕切り板を使ってミリ単位で美しく理されていた。予備のボールペン、印鑑マット、朱肉、領収綴り。
段目をける。
ラベルライターで印字されたインデックス付きのクリアファイルが、隙なく並んでいた。 【・費領収(過分)】 【マンション管理組総会議事録】 【健太・学級便り及びPTA役員名簿】 【固定資産税・都計画税納税通】
背表の文字を見つめているだけで、目眩がしそうだった。
これだけの類を、彼女はで分類し、保管し、期限を管理していたのだ。私が会社で期経営計画のファイルをめくっているに、彼女はこのさな畳の空で、庭という組織のバックオフィスを完全にで統括していた。
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私は呼吸をし、最段の最もい引きしをけた。
そこには、耐仕様とおぼしきなプラスチックケースが収まっていた。ケースの蓋には、黒い油性ペンで【契約・覚】とかれたテプラが貼られていた。
留めをし、蓋をける。
には、私の実印と印、真由美の個印、そして族全員の帳とパスポートが、然と並んでいた。さらにその奥に、青い布張りのアコーディオンファイルが収まっていた。
「あった……これか」
私は検証の控えと、役所の封筒を探そうと、アコーディオンファイルの蛇腹を広げた。
区切られたポケットには、それぞれラベルが貼られている。 【宅ローン契約】 【災・震保険証券】 【命保険・医療保険】 【教育資・学資保険】
指先でインデックスを辿りながら、私はふと、番に挟まれていた、ラベルの貼られていない分い茶封筒に目を留めた。
封はされておらず、から数枚の類の端が覗いている。
何気なく、その類を引きした。
検証ではない。政の通でもない。
番にあったのは、見慣れたエンブレムが印刷された、枚の退部届だった。
【FC京U-15ジュニアユース・セレクションクラス 退部・退届】
私の呼吸が、ピタリと止まった。
息子の健太の名が、力い真由美の跡で記入されていた。
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付は、の。健太が学のだ。
理由の欄には、こう記されていた。
『庭経済の統籌、および保護者による征送迎・当番業務の継続が困難なため』
提者の署名押印欄には、「保護者・神真由美」の文字と、彼女の認印だけが鮮に押されていた。
私の名は、どこにもなかった。
「……は? なんだ、これ……」
乾いた声が、静かな部に漏れた。
健太は、学からサッカーを始め、域の選抜チームに選ばれるほどの実力を持っていた。ジュニアユースのセレクションに格した夜、族で焼肉をべにき、私が『将来はプロを目指せ』と息子の肩を叩いたの、健太の誇らしげな笑顔を鮮に覚えている。
だが、学の、健太は突然「サッカーをやめて、受験の勉に専したい」と言いしたはずだった。
あの、真由美も隣で頷いていた。
『健太が自分で決めたことよ。内申点を取るために、くから塾に通いたいんですって』
妻はそう言ったはずだ。私も『そうか、男が度決めたなら仕方ないな』と納得し、息子のスパイクが玄関から消えたことを、成の環として受け止めていた。
だが、この類は何だ。
『庭経済の統籌』? 『保護者の送迎・当番業務が困難』?
健太が自分の志で勉のためにやめたのではなかったのか。
真由美が、庭の都を理由に、方に退部届をしていたというのか。
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