みかん小説
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"妻の手術翌朝、七通の解約通知" 第13話

私は、検証のコピーと民票を探すを止めた。

もはや、マンションの駐などどうでもよかった。

枚の類——息子の退部届、命保険の減額通、そして父の介護切り捨ての同を、荒々しく鞄のにねじ込んだ。

キャビネットの引きしをで蹴るようにして閉め、私は鍵を掴んで玄関をした。

向かう先は、再び、都医療センターだ。

もう、謝罪する夫として向かうのではない。

の「裏切り」の証拠を突きつけ、病で清純な被害者を気取る妻の仮面を、今度こそこので剥ぎ取ってやるために。

もできないまま迎えたの朝、京の空は鉛に覆われていた。

分。私は都医療センターのを滑り込ませた。昨、ビルのゲートで無様にち往した屈辱を避けるため、今はあらかじめ銭入れに千円札を何枚も崩して用してある。現で駐券を取るという、かつてなら考えもしなかった原始作のつひとつに、神経が擦り切れるような苛ちを覚えた。

エレベーターの鏡に映った自分の顔を見て、私はわず息を呑んだ。

目のには濃い青の隈がこびりつき、無精髭が顎の周りに伸びていた。証プライム企業の営業部として、だしなみには倍気を配ってきたはずの男の姿ではなかった。

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入れのき届いたスーツの肩には、昨夜のの染みがわずかに残っている。

昨夜、私は誰もいないタワーマンションの豪奢なリビングで、きりで朝を迎えた。

にコンビニのたい弁当を喉に流し込み、真由美のワークスペースから持ち帰った枚の類——息子の退部届、命保険の減額通、そして父の介護サービス削減の同を、テーブルのに並べて何も凝し続けた。

信じたくなかった。

私に何も告げず、裏で庭の命運を勝に裁断していた妻の徹な横顔。

の昼、介助窓払いをらったは、庭の維持にどれほどの労力がかかっていたのかをらされ、胸の奥に罪悪のようなものが芽えかけていたのだ。だが、あの枚の切れが、そのか細い反省を瞬で消しばした。

(あいつは、被害者なんかじゃない)

今朝、病院へ向かう内から、私は命保険会社の担当営業である同期の男に話をかけ、事実関係を確認した。

同期は申し訳なさそうに言った。

『ああ、直の契約変更のことか? 確かに奥様から相談を受けたよ。「主の役職当や交際費が増えるので、毎の固定費を見直したい」ってな。直向だと言われたから、疑いもしなかった。特約を削るのはリスクがいと引き止めたんだが、奥様が「私が責任を持ってやりくりしますから」

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って、実印を押されたんだ』

やはりそうだったのだ。

真由美は、私に相談することすらなく、私の万がの保障を半減させ、自分のガン保険を解約し、息子のを奪い、老いた義父の入浴介助を打ち切っていた。

胸ポケットに押し込んだクリアファイルの角が、歩くたびに私の肋骨をく突いた。

階の科病棟。廊に漂う消毒液の匂いは、昨よりも濃くじられた。

ナースステーションのを通り過ぎ、の入りつ。呼吸をつし、私は引き戸を静かに、しかし決然とした力でけた。

の最奥。窓際のベッド。

真由美は、ベッドのリクライニングを度ほど起こし、文庫本に目を落としていた。

まで腕に繋がれていた点滴の管はすでにされ、細い腕にはい医療用テープがさく貼られているだけだった。顔には昨ほどのはなく、しずつ気が戻りつつあるように見えた。

その落ち着いた佇まいを見た瞬、私の胸の奥で、くすぶり続けていたどす黒い種が気に燃えがった。

ガラリとカーテンを引き、界を遮る。

真由美は文庫本を閉じ、ゆっくりと線をげた。私のやつれ切った顔を見ても、眉かさない。

「……おはよう、直さん」

掠れた、しかし静かな声だった。

「体調はどう? 会社は丈夫なの」

その何事もなかったかのような挨拶が、私の神経を逆撫でした。

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