"締め出された新社長" 第9話
神は涙目になりながら、私の胸ぐらにすがりつくような勢いで叫んだ。
「葉版の松井専務は、うちの先代とは戦友みたいな柄です! だが、そのぶん約束にはぬほど厳しい! もし納期をでも遅らせたら、『柳も隆がいなくなったらただのクズだな』と切り捨てられるに決まっている! 先代の顔にを塗るわけにはいかないんですよ!」
「おが守ろうとしているのは先代の顔か? それとも自分の保か?」
神の顔から血の気が引いた。
その、通用のドアがき、総務経理の坂井が恐る恐る顔をした。 には支払伝票の束が握られている。
「……神部。速印刷から、先払いの特急加費の請求がFAXで届きました。万円です。これを今すぐ振り込まないと、トラックを発させられないと先方の経理が言っております」
「坂井さん! 今すぐ振り込んでください! ネットバンキングで即決済できるでしょう!」
神がすがるように叫んだが、坂井は頑なに首を横に振った。
「できません」
「なぜですか!? 万くらい、営業部の裁量枠の予算内でしょうが!」
「注の規取引先に対する万円以の支払いは、社内規定で『社の実印と承認印』が必と定められています。先代の印鑑はすでに庫に封印されており、社の印鑑は……」
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坂井の線が、私に向けられた。
「社は現、社内システムへのアクセス権限を止されております。承認ワークフローが回せません。経理として、規程違反の送は切認められません」
「坂井さん、あんたがおかしいんじゃないのか!?」
神が狂ったように叫んだ。
「今ここで万をケチって万部が届かなかったら、葉版から数千万円の損害賠償を請求されるんだぞ! 会社がぶんだぞ! 規則が何だ、柔に対応しろ!」
「規則を守るのが私の職務です。例を度でも認めれば、会社の庫は崩壊します。先代からも『どんな事態になろうと、直の正式な決済印がないは円たりとも通すな』と厳命されております」
「あのクソジジイ……! 引退したなら余計なしするな!」
神はを抱え、アスファルトのに蹲った。 そして、狂気配を帯びたつきで自らのビジネスバッグをあさり始めた。 取りされたのは、彼個の黒い財布だった。 震える指先で、のクレジットカードを引き抜く。
「神、何をする気だ」
私が制止するもなく、神はスマートフォンをに押し当て、速印刷の番号を鳴るように呼んだ。
「もしもし! さんですか!? 柳印刷の神です! ええ、請求の件です! 今から私がカード番号を言います! 個のカードで全額決済しますから、今すぐトラックをしてください! いいから切れ! 、……」
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「やめろ、神!」
私がを伸ばしたが、神は私を振り払い、背を向けてカード番号を読みげ続けた。
組織が、音をてて砕け散っていく。 規程を守るために考を止した経理。 責任の圧に耐えかねて、個の財布にまでを伸ばして暴する営業。 そして、のでそれを見つめることしかできない、無力な社。
父の仕掛けた「ショック療法」という名の劇薬は、会社の血管を焼き切ろうとしていた。
午分。 たいエンジン音とともに、幌をかけたトントラックがの搬入にバックで入してきた。 体には「速印刷」の擦れたロゴが入っている。
運転席からりてきたのは、無精髭をやし、作業着をだらけにしたのドライバーだった。 彼は受領伝票をに、面倒くさそうにあくびを噛み殺した。
「柳印刷さんねー。葉版さんの文芸フェア画集、初回分万冊、持ってきましたよ。どこにろせばいい?」
通用から、神が転がるようにびしてきた。 そのろから、事態を巻きに見守っていた営業の若数と、作業着姿の奥田が渋々といった取りで現れる。 私はパイプ子からちがり、トラックの荷台へと静かに歩み寄った。 通用をくぐっていない以、搬入のアスファルトのにつことは「敷内への侵入」
のグレーゾーンだったが、今はそんならないルールを気にしているではなかった。
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