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"締め出された新社長" 第15話

それはただの『遺棄』だ。無責任な職務放棄だ」

胸の奥に、言葉にならない激震がった。 父がに記していた、あの美しくも酷な「ショック療法」という義名分。 そのメッキを、目のの老は容赦なく剥ぎ取っていた。

「直君、君は親父の何が番の欠陥だったかっているか」

「……ワンマンで、社員に権限を譲らなかったことでしょうか」

「違う」

松井専務は首を横に振った。

「親父の最の欠陥はな、『絶対にNOと言えなかったこと』だ」

カン、と乾いた音がした。 松井専務が、空になった缶コーヒーをベンチの端に置いた音だった。

「うちの仕入れ担当が無茶な値引きを求しても、無謀な納期を押し付けても、親父は絶対に断らなかった。『俺が何とかしてやる、俺の腕を見ろ』と笑って引き受けた。そして夜通しに泊まり込み、社員を鳴りつけ、最は親父が自分でインキを練って刷りげた」

松井専務の目に、の歳への悔が滲んでいた。

「うちの編集者たちは甘えたよ。『柳の親父に頼めば、どんな無茶でも通る』とな。うちの連の怠を育てたのは親父だ。そして同に、親父は自分の社員たちからも『考える力』を奪った。難しい注文が来ても、採算を計算する必がない。程を夫する必もない。『親父に泣きつけば、親父が全部をかぶって解決してくれる』からだ」

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が吹き抜け、の枯葉を巻きげた。

「親父がやってきたのは、リーダーシップじゃない。『全能の父親ごっこ』だ。社員を子供のまま檻のに閉じ込め、自分がいなければ飯もえないように飼いならした。その檻の扉を、引き継ぎのになっていきなりけ放ち、『さあ今からおたちだけで荒野をきろ』だと? ……狂気の汰だよ」

が痛かった。 血を吐くようないだった。 父の背を追いかけ、父のようにく、父のように頼もしい社にならなければならないと焦っていた私のすら、根底から否定されたような気がした。

「……専務の仰る通りです」

私は震える声で認めた。

「ですが、起きてしまった現実は消えません。注をしたのは神の独断であり、械を止めたのは奥田の怠です。そして、それをから止めることができなかったのは……私の無能です。どんな処分でも受け入れます」

松井専務は私の顔をじっと見つめた。 その鋭利なに、値踏みをするような徹なが宿った。

「直君。君に選択肢をやろう」

「選択肢……ですか」

「そうだ」

松井専務は差し指をてた。

「選択肢Aだ。君は今すぐ、あのガラス扉を蹴破って社に入れ。坂井を脅してシステムを復旧させろ。そして、親父が残した業界内の裏脈と、柳印刷の内部留保をすべて吐きせ」

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「え……?」

「神保町と錦糸町、それに板の腕利きの印刷に私が今からを利いてやる。今から晩、都内のつのに版を分散させ、体制で刷り直させるんだ。はうちが特例で倉庫から最級のアートを融通してやる。の朝までに万部を無理やり揃えろ」

臓ががった。

「そ、そんなことが……能なのですか」

能だ。版の全社なバックアップと、柳印刷が数千万円の赤字を垂れ流す覚悟があればな。そうすれば、文芸フェアの穴はかない。うちの役員会も黙らせられる。君の初陣の傷は、最限で塞がる」

奇跡のような救済案だった。 会社の板は守られる。顧客への穴も塞がる。社員たちのクビもばない。 だが、松井専務の表酷そのものだった。

「ただし、直君。それをやれば、君は今この瞬から『代目の柳隆』だ。社員たちは胸を撫でろすだろう。『やっぱり社が何とかしてくれた、困ったは社が魔法を使ってくれる』とな。神の軽率さも、奥田の逃避も、坂井の止も、すべて君の流した血で綺麗に洗い流される。……そして、君が過労で倒れた、この会社は今度こそ跡形もなく消滅する」

喉がカラカラに渇いた。 甘い毒薬だった。目先の破滅から逃れるために、未来を永に売り渡す悪魔の取引。

「そして……選択肢Bだ」

松井専務は本目の指をてた。

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