"消された母親席" 第1話
ホテルのエントランスを抜けると、そこは祝福ので満ち溢れていた。
磨きげられた理のが、シャンデリアの幾千ものきらめきを反射している。
代は、まるでの川のを歩いているかのような錯覚に陥った。
壁面に飾られた純のバラと瑞々しい緑の葉が、甘く清らかなりを放っている。
き交う々は皆、質なシルクやツイードのにを包んでいた。
その表は様に、これからの儀式への期待とびに輝いている。
今この、最の息子である優太が庭を持つ。
そのれやかなのに、母親としてこのにてること。
沢代は、その事実に対してからの誇りを持っていた。
代は、隣を歩く夫の顔をそっと見げた。
夫の剛もまた、緊張のにも満げな笑みを浮かべて、周囲を見渡している。
剛は、嘆の息を漏らしながら妻に線を向けた。
「すごいな。まるで映画のセットみたいだ」
代は、夫の言葉にく同しながら、穏やかな笑みを返した。
「ええ、本当に。千さん、準備が変だったでしょうね」
代は、これから族となる嫁の顔をい浮かべながら、優しく目を細めた。
しばかり現代で、物事をはっきりと言う性格のようだが、それも若さゆえだろう。
息子が選んだなのだから、きっと素敵な庭を築いてくれるに違いない。
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そんな希望を胸に抱きながら、は連れって受付へと歩みをめた。
剛は、落ち着いた声で受付のスタッフに名を告げた。
「沢でございます。郎の父と母です」
にこやかな笑顔を浮かべた受付の女性スタッフが、くをげた。
「本は誠におめでとうございます。沢様、郎のご両親様ですね」
スタッフは、元の資料に目を落としながら丁寧な調で言葉を続けた。
「お席をご案内いたしますので、こちらで席次表を」
スタッフは、元に用された質なでできた席次表の束にを伸ばした。
しかし、その指が数枚めくられたところで、ぴたりと止まった。
彼女の完璧な笑顔に、わずかに揺がったのを、代は見逃さなかった。
スタッフは、独り言のようなつぶやきを漏らした。
「あれ、おかしいですね」
そのつぶやきは、周囲のざわめきので妙にクリアに代のに届いた。
代は、を覚えながらスタッフの顔を覗き込んだ。
「何か問題でも?」
代が問いかけようとした矢先、スタッフは慌てて笑顔を取り繕った。
そして、もう度名簿と席次表を必に見比べ始めた。
スタッフの指先が何度も同じ所を往復し、その度に彼女の眉のしわがくなっていく。
穏な空気が、代の臓をたく締め付けた。
スタッフは、困惑した表で顔をげ、代たちを見た。
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「申し訳ございません。郎のお父様、沢剛様のお名は確認できるのですが……」
そこでスタッフは言葉を切り、すがるような目で代を見つめた。
その線が何をするのか、代は瞬に悟ってしまった。
剛は、いぶかしげに眉をひそめて声をげた。
「どういうことだね?妻の名がないとでも言うのかね」
スタッフは、しどろもどろになりながら弁した。
「いえ、その、おそらくは何かの違いかとじます。すぐに確認してまいりますので、々お待ちいただけますでしょうか」
そう言うと、スタッフはに奥へと消えていった。
残された代の背を、たい汗が伝い落ちる。
胸騒ぎが止まらず、代の線は受付のテーブルを泳いだ。
そこに見本として置かれていた席次表が、代の目に入った。
代は、震えるでそれをそっとに取った。
自分の名がただの記載漏れであることを神に祈るような気持ちで、表をめくる。
郎側親族のページをき、代の線は番座へと向かった。
そこには、沢剛という文字がしっかりと記されている。
しかし、その隣にあるはずの自分の名、沢代の文字がどこにも見当たらない。
まるで初めからしなかったかのように、そこは自然な空になっていた。
代の顔から、さっと血の気が引いていくのが分かった。
指先が氷のようにたくなり、呼吸が極端に浅くなる。
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